じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] タイツリソウ(ケマンソウ)。4月19日の日記に一度掲載したが、その後白花も咲き始め、紅白が揃った。


5月1日(木)

【ちょっと思ったこと】

「大迷惑!町の落書き」

 夕食後たまたまNHK「難問解決!ご近所の威力」という番組を視た。この日のテーマは、商店街のシャッターや住宅の塀への執拗な落書きに悩まされる世田谷・下北沢の住民に対して、有効な解決策をアドバイスするというもの。下北沢は法治国家でこんなことが許されてよいものかと思うほどのヒドイ状況であった。

 出演した武蔵工大・助教授によれば、こうした落書きには
  • アートを気取った落書き:人目につきやすい場所を選ぶ。「上手な落書き」には敬意を表し、上書きしない。目立ちたがり屋であり、デザイナー志望者も。
  • 違法行為をすることでスリルを味わう便乗犯:10〜15秒程度で書き上げるいたずら。場所を選ばない。
という2つのタイプがあるという。この助教授の調査によれば、落書き犯の83%は罪悪感を感じているが、「境界値」をちょっと超えたあたりで落書き行為に及ぶらしい。




 下北沢の住民に対しては、全国から2つの成功体験が寄せられた。1つめは、一年ほど前まで、落書き日本一と呼ばれていた町からということで、いったい、そんな恥ずかしい町がどこにあるのかと思っていたら、なっなんとそれは地元、岡山市のことであった。確かに一年ほど前までは、国道53号線沿いでいくつか落書きを目撃したことはあったが、そんなヒドイ状況があったとは思いも寄らなかった。2002年6月2日の日記では、「福岡は落書きの名所?」などと、余所事のように受け止めていたほどである。

 もっともこれは、私自身の行動範囲が大学構内とその周辺の一部のエリアだけに限られていたためであろう。駅前や表町商店街などは年に4〜5回しか訪れたことがない。それも昼間だけなので、シャッターに落書きがあったとしても目に入る機会は無かった。

 番組では2002年6月2日の日記でも言及した「落書き調査隊」の隊長の岡崎久弥氏が直接登場された。岡崎氏らの調査の素晴らしいところは、
  • 1つのエリアでの落書きは、ポストのような公共物→商店街→個人住宅というように拡散していく。
  • 落書きが全く無いエリアでは起こりにくい。
といった法則性を、実証的に明らかにした点であった。岡崎氏らはその結果に基づいて、1つのエリアを一斉に消す(但し、「消した」という成果を示すために、元の壁とは少しだけ違う色のペンキを塗る)という対策をとった。また、そうした一斉消去作業は、地域コミュニティ活性化の役割も果たした。要するに「落書きを逆手にとって、楽しく消そう」としたのである。

 岡山ではその後落書き防止条例違反の逮捕者第1号などのニュースも伝えられたこともあり、少なくとも私が行動する範囲では落書きを見かけることは無くなった。




 続いてもう1つ、代官山地区での別の成功体験が紹介された。こちらは、コンクリートの壁などに最初から子供の絵を描いておくことで、新たな落書きを防止するというもの。かつて大規模な被害にあった時、小学校の壁画だけが落書きされなかったことにヒントを得たものであったという。

 上記の武蔵工大・助教授の話にもあったように、少なくとも、アートを気取った落書き犯は、他者の落書きには敬意を表するらしい。子供達が一生懸命に描いた壁画があれば、それを汚すことは無い。便乗犯による多少に被害はあったものの、代官山地区ではおおむね、「壁画をもって落書きを制す」が成功しており、下北沢でもこれに倣った対策がとられることになるようだ。




 以上が、私が記憶している範囲での番組のあらましであるが、私自身は、落書きはあくまで犯罪。徹底的に取り締まり、違反者は懲役十年、そのかわり、刑務所の塀に好きなだけ落書きをさせてやればよいと思っている。

 武蔵工大の某助教授は、岡山方式の「一斉消去」を下北沢で行うと若者のエネルギーのはけ口が無くなるというようなことを言っておられた(←あくまで私の記憶による)が、それはちょっと変だと思った。いくら落書きが多い地域とはいえ、犯人はごく一握りの集団に限られているに違いない。若者全体のエネルギー発散の象徴であるかのようなとらえ方があるとしたら錯覚ではないかと思う。

 余談だが、私が卒業した大学構内(特に教養部構内)は、やらた落書きが多いところだった。30年ぶりに訪れた教養構内の様子が3月16日の日記にある。あまり変わっていないように思えた。

5/2追記]
こちらに、番組専用サイトあり。