【連載】チコちゃんに叱られる! 唐辛子は汗が出るのにワサビは汗が出ない理由/大根の辛味は?
昨日の続き。3月13日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は、
- なぜ車酔いする?
- イルミネーションをするようになったのはなぜ?
- なぜ唐辛子を食べると汗が出るのにわさびだと汗がでない?
- 【ひだまりの縁側で・・・】自分が勘違いして覚えていたこと
という4つの話題のうち3.について考察する。
唐辛子を食べると汗が出るのにわさびだと汗がでない理由として、放送では、「唐辛子は痛みと熱、わさびは痛みだから」が正解であると説明された。わさびについて研究している山根京子さん&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
- 人間が汗をかく原因は、大きく分けて3つある。
- 温熱性発汗:運動で体温が上昇したり気温が暑い時。
- 精神性発汗:緊張・不安・興奮
- 味覚性発汗:辛いものを食べた時。
- 唐辛子の場合は、辛味成分『カプサイシン』が味覚を刺激し、味覚性発汗が生じる。
- 人間が味蕾で感じることのできる味は、甘味、酸味、うま味、塩味、苦味の5種類であり辛味は含まれていない。辛味は味ではなく痛みとして感じている。
- 唐辛子やわさびの刺激をキャッチする受容体は舌の味蕾の神経の末端にある。受容体自体は人間の体の中に数百種類以上ありさまざまな刺激をキャッチしている。網膜の受容体は光、鼻の受容体は匂いの分子をキャッチしている。
- 唐辛子を食べると、口の中の受容体『TRPV1』が『カプサイシン』をキャッチする。TRPV1は、痛みに加えて人間に危険をもたらす43℃以上の熱にも敏感。
- TRPV1は痛みと熱さを区別できないため、唐辛子を食べると交感神経が刺激され「体温が上がった」と錯覚。じっさいは暑いわけではないのに汗をかく。
- わさびの辛味成分は『アリルイソチオシアネート』。この刺激は『TRPV1』ではなく『TRPA1』によって感知される。TRPA1はTRPV1と異なり主に痛みを感知する【但し、トカゲ・トリ・ヘビなどでは高温にも反応する】。そのため、わさびを食べても汗はかかない。
- 唐辛子とわさびの辛味の違いは進化の結果。
- 唐辛子のカプサイシンは鳥のTRPV1では殆ど感知されない。鳥は唐辛子の種を丸呑みして遠くに運ぶので、結果的に唐辛子の繁殖域を拡大。
- 草食動物は唐辛子の種をかみ砕いてしまうため食べられると不利益になる。カプサイシンを多く持つ唐辛子は草食動物から食べられにくいため、結果的に子孫を増やしていった。
- わさびは種でも殖えるが主として根茎から株分けで増えるので、根茎を食べられないことが重要。そこで鳥も草食動物も苦手とするアリルイソチオシアネートを多く含む個体が生き残った。
- わさびのアリルイソチオシアネートは揮発性が高く揮発性が高く、温度が高いとすぐに発散してしまう。なので冷たいざるそばにはわさびを入れるが、温かい蕎麦には唐辛子を入れる。
ここからは私の感想・考察を述べる。
まず、味覚に関する話題としては、2021年7月に、
●ヒューマニエンス 「“舌” 変幻自在の開拓者」その3 おいしさの起源
取り上げたことがあった【放送は6月】。
またTRPA1(Transient Receptor Potential、トリップエイワン)については、
●チコちゃんに叱られる! 「なんで鼻に水が入ると痛いの?」
さらにセンブリ茶の話題は2025年12月に
●なぜ大人になると苦い物が好きになる?
で取り上げたことがあった。『TRPV1』についても詳しく取り上げた記憶があるのだが過去日記をザッと検索した限りでは見つからなかった。
ところで私自身は唐辛子もワサビも自分から進んで食べることはない。納豆に添付されている辛子などは勿体ないと思いつついつも捨てている。
いっぽう辛いものでよく口にするのは貝割れ大根や大根おろしである。ネットで検索したところ、辛味成分の正体は以下のようになっていた。
かいわれ大根の辛味は、主に以下の成分によるものです。
- イソチオシアネート: かいわれ大根の独特な辛味の元となる成分です。抗酸化作用や殺菌作用、消化促進作用が期待されています。
- シニグリン: イソチオシアネートと同様に辛味成分であり、抗酸化作用やがん細胞の活動抑制効果が期待されています。
ダイコンの辛味成分は、イソチオシアネートと呼ばれる硫黄化合物の一種です。この成分は、ダイコンの細胞が破壊されることで生成されます。
辛味成分の生成
ダイコンには、グルコシノレートとミロシナーゼという2つの物質が別々の場所に存在しています。ダイコンをすりおろしたり切ったりして細胞が壊れると、これらが出会い、酵素反応によってイソチオシアネートが生成され、辛味を感じるようになります。
辛味成分の種類
イソチオシアネートには100種類以上ありますが、ダイコンにはそのうちの数種類が含まれています。特に、4-メチルチオ-3-ブテニルイソチオシアネート(4MTB-ITC)が辛味の本体とされています
ということで、ChatGPTに、
【質問】貝割れ大根の辛味成分であるイソチオシアネートやシニグリン、大根おろしのの辛味成分であるイソチオシアネートは、人間の受容体TRPV1、TRPA1のどちらで受容されていますか?
と質問したところ、以下のような回答をいただいた。
結論から言うと、**大根や貝割れ大根の辛味(主にイソチオシアネート類)は、主としてTRPA1で受容され、TRPV1は補助的・間接的に関与する程度**です。
- 主経路:TRPA1(本命)
イソチオシアネート(例:アリルイソチオシアネート、シニグリン由来分解産物)は、
* **TRPA1(Transient Receptor Potential Ankyrin 1)**
* 刺激性化学物質(マスタードオイル、ワサビ、玉ねぎ成分など)の受容体
* 求電子性分子と共有結合的に相互作用(システイン残基修飾)して活性化
という特徴があり、**典型的なTRPA1アゴニスト**です。
したがって、
* 貝割れ大根(シニグリン → イソチオシアネート)
* 大根おろし(ミロシナーゼ反応で生成するイソチオシアネート)
いずれも **TRPA1が主要な受容体**になります。
- TRPV1の関与(副次的)
一方で、
* **TRPV1(カプサイシン受容体)**
* 主にカプサイシン(唐辛子)や熱刺激(>43℃)に応答
イソチオシアネートはTRPV1に対して:
* 直接的な強いアゴニストではない
* ただし高濃度では弱い活性化や感作(sensitization)を起こす報告あり
つまり、
* **主役ではないが、刺激感の増強に多少寄与する可能性はある**
- 感覚の質の違い(機能的観点)
この受容体の違いは、辛味の質の違いとして明確に現れます:
|刺激物 |主受容体|感覚 |
|ーーーーーーーーーーーーーーーーー|ーーーー|ーーーーーーーーーーーーーーーー|
|唐辛子(カプサイシン) |TRPV1 |持続的な「熱い」辛さ |
|ワサビ・大根(イソチオシアネート)|TRPA1 |鼻に抜ける揮発性のツンとした刺激|
- シニグリンについて補足
***シニグリン自体**は配糖体であり辛味は弱い
* ミロシナーゼにより分解されて
* **アリルイソチオシアネート**などが生成 → TRPA1活性化
- ## まとめ
* イソチオシアネート類 → **主にTRPA1で受容**
* TRPV1 → **補助的・弱い関与のみ**
* 辛味の「ツンとした揮発性刺激」はTRPA1特有の応答様式
さらに、
【質問】大根を食べた時にも唐辛子のように体が熱く感じることはありますか?
と質問したところ以下のような回答をいただいた。
結論として、**大根でも「少し体が熱く感じる」ことはあり得ますが、唐辛子のような持続的で強い熱感には通常なりません。**
- 感覚のメカニズムの違い
前提として受容体の違いが重要です:
* 大根(イソチオシアネート)
→ **TRPA1主体(刺激・痛覚系)**
* 唐辛子(カプサイシン)
→ **TRPV1主体(温度受容=「熱」そのもの)**
このため、
* **唐辛子**:実際に「熱い」と錯覚する(温度受容体が直接作動)
* **大根**:刺激・痛覚として感じる(鼻に抜けるツンとした感じ)
- それでも「少し熱く感じる」理由
大根でも軽い熱感が出ることがあるのは、以下の要因です:
- ① 神経のクロストーク
* TRPA1が強く刺激されると、
* 同じ三叉神経系の中で**TRPV1系も間接的に活性化**
→ 軽い熱感として知覚されることがある
- ② 炎症性メディエーター
* 刺激により局所で
* 血流増加
* 神経ペプチド(サブスタンスPなど)放出
→ **軽い「ほてり感」**
- ③ 高濃度・強刺激条件
* おろしたての大根(特に先端部)
* 貝割れ大根の強い個体では刺激が強く、**熱っぽい感覚に近づくこともある**
- ただし質は明確に異なる
両者の違いを整理すると:
|特徴 |大根 |唐辛子 |
|――――|―――――――――――|――――――|
|主受容体|TRPA1 |TRPV1 |
|感覚 |ツンとした刺激、揮発性|持続的な熱感|
|持続時間|短い |長い |
|体温感覚|弱い・間接的 |強い・直接的|
- 実際の体温上昇は?
* 唐辛子:代謝亢進 → **わずかな体温上昇あり**
* 大根:その効果は**非常に弱いかほぼ無視できる**
- ## まとめ
* 大根でも**軽い熱感を感じることはある**
* しかしそれはTRPA1由来の刺激+神経クロストークによる副次的現象
* **唐辛子のような本格的な「熱さ」とは別物**
次回に続く。
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