【連載】チコちゃんに叱られる! 関西の人が「お」や「さん」をつけるのはなぜ?/「お」をつけると不自然になる言葉
11月30日に続き。11月28日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。この日は、
- 二度寝が気持ちいいのはなぜ?
- 高速道路の案内標識が緑色なのはなぜ?
- 関西の人が「お」や「さん」をつけるのはなぜ?
という3つの話題が取り上げられた。本日は最後の3.について考察する。
ここでいう「お」や「さん」をつけるというのは、関西の人が例えば
●おいなりさん、お月さん、お豆さん
というように「お」や「さん」をつける習慣。放送では「女官が天皇に敬意を払ったから」が正解であると説明された。関西弁の調査・研究をしている中井精一さん」(同志社女子大学)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
- 関西ではサツマイモのことを「お芋さん」、油揚げのことを「おあげさん」、月のことを「お月さん」と呼ぶ。これは御所に仕えていた女官の言葉(女房詞、にょうぼうことば)に由来していると考えられている。
- 例えば平安時代には天皇の秘書的な役割を果たす『内侍司』(ないしのつかさ)、書籍などを扱う『書司』(ふみのつかさ)など多くの女性が働いていた。紫式部や清少納言も天皇家に仕える女官だった。
- いつの時代からか、天皇の食事に関わる女官が上品な言い方として言葉の頭に「お」をつけるようになった。女房詞をまとめた文献『女教訓千代の鶴』には「握り飯→おむすび」、「醤油→おしたじ」というように頭に「お」をつけて上品に呼ぶ様子が書かれている。
- 「お」がつく女房詞は江戸時代になると庶民も使うようになった。御所には職人、住職、役人などが出入りをしていたので、それらの人たちが耳にした「お」をつけた高貴な人の喋り方が一般に伝わり、上品な言葉づかいを真似するようになった。
- 「さん」は江戸時代後半からつけられるようになった。関西では昔から「さん」は丁寧な言葉遣いだった。
- 江戸時代の関西では天皇のことを「京都禁廷さん」(きんていさん)と呼ばれていた(『陣屋町大矢知かいわい』)。敬意を払う相手に「さん」をつける文化があった。
- 要するに、
- 御所に仕える女官の「お」がつく女房詞
- 江戸時代に庶民に広まりさらに丁寧な「さん」がつく
- 今でも関西の人は「お」や「さん」をつける
- 関西地方では敬意を払う信仰の対象にも「お」や「さん」をつける。
例;お宮さん、お伊勢さん、仏さん、えべつさん、大黒さん、閻魔さん【東京では全部「さま」をつけている】
- 関東は武家社会であり、格式を重んじる厳しい上下関係があり、「さま」をつけて呼んだ。関西の町人文化では「さま」をつけると堅苦しくなるので、敬う相手にも「さん」をつけた。
- 関西の人が「さん」をつけるのは食べることができる状態の食べ物。豆や大豆には「さん」はつけないが、口に入れる状態になった時には「お豆さん」、「おみそ」、「お醤油」というように「お」をつける。
ここからは私の感想・考察を述べる。
まずこのWeb日記に何度も書いているように、私は生まれてから高校を出るまでは東京、大学入学以降は、京都で15年、長崎で5年、岡山で35年を過ごしており、言葉遣いやイントネーションの違いを聞き分けることができる。といっても自分の喋る言葉はちゃんぽんになっていて、最近でも「クマが出没した」という時のクマは、「今」と「居間」のイントネーションのどちらに一致するかと言えば「今」の発音に近い。ニュースで「居間」と同じイントネーションで「クマ」と言われると少々違和感がある。
元の話題に関して言えば、私自身が「お」や「さん」をつけることはまずない。やはり生まれてから18年の間に刷り込まれた東京弁はそのあと55年を西日本で暮らしたからといってそう変わるものではなさそうだ。
もう1つ、名詞に「お」をつけることに関しては、11月7日の日記で考察した。どうやら複数の基準で「お」をつけたりつけなかったりするようだ。つけるかつけないかという区別自体は関東と関西で変わらないように思える。
|