じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 西モンゴルのシベート・ハイルハン山麓の岩絵。右向きの動物の絵も描かれていた。↓の記事参照。

2020年3月30日(月)



【連載】#チコちゃんに叱られる! 「 #魚の絵 はなぜ #左向き に描いてしまう?」その2

 昨日に続いて、3月27日に放送された、NHK チコちゃんに叱られる!の中の「魚の絵はなぜ左向きに描いてしまうのか」について考察する。

 昨日も述べたが、この疑問は、

●魚の絵だけ左向きなのか、それ以外の動物や乗り物(乗用車、バス、電車、飛行機など)も同じように左向きに描く傾向があるのか?

というように、より広い角度から検討する必要がある。

 私自身は、この問題には大学生の頃からずっと興味を持っており、このWeb日記でもいろいろな話題を取り上げたことがある。過去の連載の一部はこちらや、こちらにもまとめてある。いくつか例を挙げると、 などがあった。




 さて、私自身は、左向きか右向きかは3つの要因でほぼ説明できると考えている。重要な点は、どちらが正しいかという排他的な議論ではない。これら2要因がどれだけ強く働いているかは、個々人の経験やその国の文化によって異なる。
  1. 利き手要因:右利きの人は左から右に線を引いたほうが描きやすい。
  2. 習慣要因:横書きで文字を文字を書く時に左から右に書く。焼き魚の頭を左側に置くなど。
  3. 刷り込み要因:子どもの頃、よく見かけた絵に影響される。
 このうち、
  • 1.は右利きの人の比率に依存するが、ほぼ人類共通で、左向き傾向を高める要因となる。
  • 2.は、文字を右から左に書くアラビア語圏、ヘブライ語圏ではこの影響を受けるため、右向きの比率を高める要因となる。
  • 3.は、子どもの時によく見た図鑑や絵本などの影響。昨日も述べたように、魚の図鑑は、カレイを除いておしなべて左向きに描かれているので、左向きの絵を描く行動に最も大きな影響を与える。魚以外の動物(各種哺乳類など)の図鑑は必ずしも左向きではないので、その影響が及ばない分、左向きの比率は下がる(それでも1.の影響を受けるので、左向きが多いことに変わりはない。)
 なお、バスや電車などは、左側通行の日本では、乗車時に左方向に発車するので、当然、1.から3.の要因がすべて働いて左向きに描かれる比率が高いのではないかと推測される。送迎バスを右向きに描く幼稚園児がいたとしたらきっと特殊な才能を持っているに違いない。また、車が右側通行の国では、1.の要因により、やはり左向きに進むバスや電車が多く描かれるとは思うが、3.は逆方向に影響を与えるので、左に描かれる比率は低下するものと予想される。

 余談だが、中古車販売の写真では、車の向きは必ずしも左向きにはならないようである。車に乗るとき、運転者は車の右側(右向きの車を見ながら乗車)、それ以外の乗客は車の左側から乗ることが多いので、中古車の購入決定権が運転者自身にあるのか、運転せずに乗るだけの家族にあるのかによっても、車の左右の向きが与えるイメージ(乗ってみたさ)は違ってくる可能性があると考えられるが、影響はそれほどないのだろう。【1999年1月22日の日記参照】

 番組のもとの話題に戻るが、八田先生の2番目の「仮説」、

「だって左が好きなんだもん」説:左にあるものは右脳に入るので、左から右に動くほうが好まれる。スーパーマリオも左から右に動く。魚の絵の場合は、まず左に注目し、左に顔を描く。

というのは、私にはよく分からなかった。左から右に動くほうが好まれるのであれば、右向きに進む魚のほうが好まれるはずである。また、水族館の回遊型水槽でも、魚が右向きに泳ぐように水流をつけたほうが観客に好まれることになるはずだ。

 次回に続く。