じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 岡大・本部棟の近くにある六高菊桜。この桜の植樹の経緯は右側看板の通りであるが、過去日記で何度か取り上げたように、かつての菊桜は旧・事務局棟移設に伴う移植に失敗して枯死してしまい、現在は確か三代目となっている。一代目は濃いピンク色であったが、三代目はなぜか白花になってしまった。

2019年4月20日(土)




【連載】2019年版:退職金を受け取った方へのアドバイス(3)

 昨日の続き。今回は、ネット証券の広告でよく見かける、

●日経平均レバレッジ・インデックスを対象とした仕組債券(最大で年利率11.50%、もしくは0.5%)

について、素人なりに考察してみたい。

 結論から先に言えば、退職金をまるごとこれに投資するのはあまりにもリスクが大きすぎて絶対にオススメできない。但し、タイミング【後述】を見計らって、退職金の1〜2割程度を時間型分散投資とすることはアリではないかと思う。

 まず、この商品に限らないが、こういうハイリターンの商品には同等のハイリスクがあり、何がリスクかという点をしっかり見極める必要がある。そもそも、発行体(銀行)は慈善団体でもヘリマネのバラマキ団体でもない。自分たちが儲かるという裏付けがあるからこういう高金利を設定できるのである。特段の経済発展が無い限り、この種の商品は、ゼロ和ゲームであって、発行体が得をするなら購入者はそのぶん損をすることになる。

 さて、この商品のリスクを理解する前に、いくつかおさえておきたい基本概念がある。
  1. 対象上場投信:NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(銘柄コード:1570、東証)
  2. 発行日:申込の締め切り日と同一だが、大概は締め切り日以前に完売となってしまう。
  3. 受渡日:発行日の翌営業日
  4. 利率決定価格:当初価格の85%。それを上回れば11.5%、下回れば(但しノックインにならない場合)0.5%
  5. 利率決定日:商品によって、利払い日が毎月の場合と年4回の場合あり。
  6. 当初価格:受渡日の対象上場投信終値
  7. 行使価格:当初価格の100%
  8. 早期償還日:満期償還日を除く各利払日
  9. 早期償還判定日:各早期償還日の5取引所営業日前
  10. ノックイン:対象上場投信終値が一度でもノックイン判定水準以下になった場合(早期償還と異なり、特定の判定日があるわけではない。「一度でも」という文言に注意)
  11. ノックイン判定基準:当初価格×65%

 それぞれの概念については取扱の証券会社のページで慎重にご確認いただきたい。

 さて、素人なりに私の感想を述べると、まず、誤解しやすいと思われるのは、「日経平均レバレッジ・インデックス」というのは日経平均そのものではないということ。「ノックイン判定基準」である「当初価格×65%」というのは日経平均であれば直近の22000円が14300円まだ下がるという意味なのでまず起こりえないと思われるが、「日経平均レバレッジ・インデックス」というのはそうではなくて、「インデックスの騰落率が、同期間の日経平均株価の騰落率の2倍となるよう計算される」インデックスであるゆえ、大ざっぱに言って、直近の22000円が18260円まで下がった時点でノックインに陥るリスクがあるということだ。米中貿易摩擦、北朝鮮、ブレグジット、新興諸国などにかかわる様々なリスクが想定されるなかで、満期償還までノックインに陥らないと考えるのはかなり楽観的な見方であるように思える。

 では、日経平均株価が大幅に下落した直後に買えばいいのかということになるが、そういうことを考える人は大勢おられるようであり、そういう局面では、発行日より10日以上前に完売となってしまう。

 早期償還判定水準やノックイン判定水準の基準となる「当初価格」が、受渡日、つまり「発行日の翌営業日の対象上場投信終値」となっている点にも留意する必要がある。つまり、仮に(完売とならずに)発行日14時のギリギリのところで株が暴落していたとしても、翌営業日に一挙に反騰したとすれば、「当初価格」はそのぶん高値で決まってしまい、ノックインに陥るリスクがそれだけ高くなってしまう。

 もう一点、これは、変動現象一般について言えることだが、株価、物価、気温、人口といった現象は、時間が経てばたつほど、上下の変動幅が大きくなる可能性が高い。これらは、すべて、前日の値と高い相関を持って変動していく(=1日ごとの独立事象ではなく、系列依存)。例えば、毎日の平均気温は前日の平均気温と高い相関がある。しかし、1ヶ月後、半年後との相関はきわめて低く、上下の変動幅が大きくなる。もちろん、気温の場合は季節による周期性があるので、1年後の気温との相関は再び高くなるかもしれないが、地球温暖化や氷河期到来などの長期トレンドの影響は免れない。ということで、この商品を購入してからしばらくの間は、「現在値÷当初価格」が85%から110%の範囲に収まる可能性が高く、年利換算11.5%の配当を得ることが多く、しめしめと思っているであろうが、いずれ長期トレンドや想定外のリスクに見舞われて、こんなはずじゃなかったと後悔する恐れがある。

 ということで、この商品がうまく使えるのは、
  • 株価が底値近辺にある時。
  • 今後しばらくのあいだ、安定局面、もしくはゆるやかな上昇局面にあると想定される時。
に限られるのではないかと思われる【但し、そのことが確実であったら、商品の発売は見送られるかもしれない】。実際のところ、昨年の11月から今年3月頃にこの商品を購入された方は、継続して11.0〜11.5%の配当を受け取り、一部は早期償還となっているはずである。早期償還になっても別に損をするわけではないのでめでたしめでたしであろう。いっぽう、この時期に退職金を受け取った方が新たに同種の商品を購入された場合にどうなるのかについては何とも言えない。しばらくは様子見とし、初回限定の優遇金利上乗せの定期預金(投信や外貨預金などとのセット販売でないもの)で預け回しをされたほうが無難かもしれない。