じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 文学部中庭花壇は東側と南側に建物があるため、冬至をはさんだ半年間は、一日中直射日光が当たらない場所ができる。写真は9月27日、10月2日、10月14日の昼休み前後に撮影した日照状況。10月2日頃には花壇の南縁に影がかかるようになり、14日には南側花壇がすっぽり「極夜」に入った。

 こうした微妙な差は、植物の開花や発芽、保水に大きな影響を与えている。

2016年10月14日(金)



【思ったこと】
161014(金)2016年版「人はなぜ○○するか?」(5)人はなぜ泣くのか?(1)

 昨日の続き。

 今回は第四位、6票を集めた「人はなぜ泣くのか?」について考えてみることにしたい。

 「泣く」という行動は、第一位タイとなった「人はなぜ笑うのか」と同様に感情表出行動であり、レスポンデント行動の一種である。

 『新明解』では「泣き笑い」には、
  1. 泣いている時におかしい事を言われ、機嫌を直し つい笑ってしまうこと。
  2. 泣くこともあれば笑うこともあること。
という2つの意味が記されているがそれらはいずれも重要な特徴を含んでいる。

 1.に記されているように、通常、人は、「泣く」という行動と「笑う」という行動を同時に表出できない。泣いている子どもをくすぐると、少なくともくすぐっている間は笑い出す。くすぐるのをやめるとまたまた泣き出すかもしれないが、泣きながら笑うということはできない。

 また2.は人間にとってこの2つの行動が主要な感情表出であることを示唆している。

 もっとも、「笑う」と「泣く」は必ずしも対称的ではないようだ。

 まず、10月12日の日記に記したように、「笑う」というのは人間にほぼ特有の行動であって、人間以外の動物はまず笑わない。いっぽう、泣くに類似した行動は、
  • ウミガメが涙を流す
  • 苦しんでいる動物がキーキーと悲痛な声をあげる
  • いじめられたり、怖い出来事に遭った子猿が母親に飛びついてすねている
というように、人間以外の動物でも観察できる。但し、それが人間と同一の感情表出であるかどうかは不明。

 もう1つ、今回のこの記事を書くにあたって気づいたことだが、ウィキペディアの日本語版では、「笑う」は「笑い」という名詞形の項目で説明記事が掲載されているのに対して、「泣く」は該当項目が存在しない。というか、「笑う」という動詞には「笑い」という名詞形があるのに対して、「泣く」という動詞に対応した「泣き」という名詞形は、「うそ泣き」「もらい泣き」というように別の言葉とくっつけて使うことはあるが、単独ではあまり使われていないようにも思われる。

 もっとも、ウィキペディアの英語版では「crying」という項目はちゃんとこちらに掲載されており、
Crying is the shedding of tears in response to an emotional state. The act of crying has been defined as "a complex secretomotor phenomenon characterized by the shedding of tears from the lacrimal apparatus, without any irritation of the ocular structures". 【以下略】
というようにちゃんと説明されている。英語版「crying」は中国語版では「哭」という項目に対応している。ロシア語版は「Плач」、そのほか、韓国語、スペイン語、アラビア語などでも該当項目があるが、日本語版に項目が無いというのはまことに興味深い。なお中国語版には「哭的文化」という見出しがあり、中国と日本についての記述があるが、よく分からなかった。

 ということで、「笑う」と「泣く」は、同じ感情表出行動でも非対称的な部分が多い。そのことをふまえた上で、「なぜ泣くのか」を説明していく必要がありそうだ。

次回に続く。