じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 岡山では10月8日まで、最低気温20℃以上、最高気温が30℃を超える日があるといった残暑が続いていたが(こちらの資料参照)、10月9日を境に、最高気温25℃以下、最低気温15℃以下という、本格的な秋らしい天気に切り替わってきた。写真は10月10日の岡大構内の紅葉名所。この時点ではまだ紅葉・黄葉はごくわずかとなっている。

2016年10月13日(木)



【思ったこと】
161013(木)2016年版「人はなぜ○○するか?」(4)人はなぜ集団で行動するのか?

 昨日の続き。

 今回は第三位、7票を集めた「人はなぜ集団で行動するのか?」について考えてみることにしたい。

 まず進化生物学的に言えば、人間は、群れの中で生き延びてきた動物であると言える。群れで生活するか、単独で生活するかというのはその動物の生息環境や繁殖形態に依存している。群れを作ったほうが食料が調達しやすく(縄張り確保、捕食など。人間の場合は狩猟や農耕など)、外敵から身を守りやすく、繁殖や子育てに有利であれば群れを作るであろうし【というか、正確には、「群れを作ったことで結果として生き残った」】、単独のほうが適応的であれば群れは作らない【じっさい、オランウータンのように群れを作らない霊長類もいる】。同じ種であっても生息環境によって、大きな群れを作る場合と、少数個体のみで群れたり、季節的に単独で行動したりというように多様な形態をとる場合もある。

 群れを作ることにはメリット、デメリットがある。上にも述べたように、食料確保、安全、子育てなどは群れを作ったほうが有利になる。反面、多数の個体が同じ場所に集まれば、食料不足、あるいは異常気象時に絶滅するリスクが高まる(群れを作らずに分散していればリスクは小さい)。さらに重要な点は、インセストをどう避けるかという問題がある。群れを形成する動物は、例えば、群れの中のオスが成体になるとその群れから離れるといった仕組みが備わっている。人間の場合はその仕組みが制度となるが、単一ではなく、多様な文化を形成する。

 いずれにせよ、現代社会ではさまざまな「群れ」が形成される。人は幼少時から様々な群れに加わったり、離脱しながら成長していく。けっきょく、メリットが大きい群れ(その群れに加わることで強化される機会が高まるような群れ)には長期間とどまり、メリットが少ない群れからは離脱していく。群れに加われば、その構成員の中で相互強化が行われる。また、より凝集性の高い集団であれば、群れから離脱することを罰するような仕組みが備わっている。このあたりは、ゲーム理論による理解が有用と思われる。このほか、デメリットが明らかに大きいにもかかわらず集団のために貢献するような行動では、「信義」や「信頼」、「忠誠」といった何らかの社会的好子が行動を強化している可能性がある。

 元の疑問「人はなぜ集団で行動するのか?」に戻るが、すべての人が、常に集団で行動しているわけではない。この疑問は、
  • 人はどういう場合に集団で行動するのか。どういう場合は単独で行動するのか。
  • 集団で行動しやすい人、単独で行動しやすい人はそれぞれ何によって強化されているのか。
という形に問題を置き換えて議論すべきであろう。一般的に、集団間で争いが起こったり、自然災害などで互助が求められる状況のもとでは集団で行動する傾向は高まる。そのほうが強化されやすくなるからである。比較的安全で物質に恵まれた社会では、個性重視の傾向が高まるが、特定の価値観のもとで新たな集団を創り相互強化されやすくなるという場合もある【同好会など】。

次回に続く。