じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 文学部周辺の植栽でメスのカマキリを見つけた。羽根が傷んでおり、動きは緩慢。余命はあまり長く無いように見えた。お腹が大きいので、このあと産卵という大仕事に取り組むことになるのだろう。定年退職まで残り1年半となった私も、このカマキリと同じ立場にあるのかもしれない。

2016年10月12日(水)



【思ったこと】
161012(水)2016年版「人はなぜ○○するか?」(3)人はなぜ笑うのか?

 昨日の続き。

 今回は「人はなぜ嘘をつくのか?」と同じ8票を集めた「人はなぜ笑うのか?」について考えてみることにしたい。

 「笑い」についてはウィキペディアの該当項目に興味深い説明がある。そこにも記されているが、笑いを定義することは結構難しい。
笑いを定義するのは案外難しい。ごく一般的には陽性の感情に伴って表情が特有の緊張をすること(笑顔)、同時に特有の発声(笑い声)を伴うこと、ぐらいであろう。普通は何か自分以外の対象があって、それから受ける印象に基づいて、それが好意的であれば表情に笑いがでることがあり、特に刺激的な場合には発声が伴う。さらに程度がひどくなると全身に引きつけるような動作が伴い、涙なども出る。

しかし、人間はこのような表現をかなり意図的に使い分けることができ、微細な感情を表現するので、なかなかややこしい。たとえば表情を変えずに笑い声だけをあげた場合、冷やかしや威嚇などの表現となり得る。意図的なものの中には笑いの種類のように否定的意味合いを持つものもある。

また自己を笑いの対象にするものの中には、自嘲のように複雑な感情を伴うものもあり、自虐などとの区別は難しい。
 「笑う」を行動として捉えた場合、
  1. 「笑う」という行動の系統発生的分析:進化生物学的にみて、動物の中でなぜ人間だけがよく笑うのか?
  2. 「笑う」という行動の個体発生的分析:発達心理学的分析
  3. 「笑う」という行動の神経生理学的分析。笑いが起こる生理的メカニズム。あるいは笑うことによる生理学的効用。
  4. 「笑う」という行動を引き起こす環境的、文脈的要因の分析。
  5. 「笑う」という行動が集団内で果たす機能。あるいは文化的な差違。
といった多面的な分析が可能であろう。行動分析学的なアプローチは、このうちの4.、部分的には5.の解明に貢献するものと思われる。

 もっとも、私の知る限りでは、「笑いの行動分析」の研究はあまり見当たらない。笑いをもたらすための技術は、学問として追究するよりもむしろ、落語家やお笑い芸人の方たちの経験の蓄積に委ねるべきかもしれない。

 健康心理学的に見た笑いの効用についてはかなりの研究があり、笑いを重視したセラピーもあると聞いている。

 ということで、「人はなぜ笑うのか?」という疑問はなかなか奥が深く、多面的なアプローチがありうるという指摘をするにとどめておきたい。

次回に続く。