じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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§§  前線が南岸に停滞し、雨が降ったり止んだりの天気が続いている。岡山では2月15日午前06時までの72時間積算雨量が18.5ミリというまとまった雨となった。写真は、雨が降り止んだ時に見つけた滴。写真上はナンテンの実(フラッシュ使用)、写真下はコブシの蕾。

2月15日(水)

【思ったこと】
_c0215(水)QOL評価・向上のための複合的多項随伴性アプローチ(14)中期的分析(1)中期的要因を加味した複合的な随伴性

 2月13日の続き。これまでの連載では、短期的分析長期的分析について取り上げてきたが、今回から中期的分析の話題に進むことにしたい。

 ここで取り上げる中期的分析とは、「中期的要因を加味した複合的な随伴性」に注目しましょうという意味である。「短期的分析」がオペラント行動の直前と直後の環境変化(好子や嫌子の出現や消失)に注目するのに対して、「中期的分析」では、
  • 目標設定と達成
  • 行動の入れ子構造(中期的な目標を達成するための手段としての義務的行動の役割)
  • 行動自体の質的向上(=スキルの向上)
  • 行動と環境とのスパイラル的な関係
  • 累積的結果の効果
  • 結果随伴の規則性・不規則性(=強化スケジュール)
などに注目する。

 これらの多くは、行動分析学の理論や実践ですでに取り入れられているものであり、マロットが間接効果的随伴性として体系化している内容とも重なるところが多い。但し、それに加えて、

●どういう条件が整えば、より生きがいや、やりがいのある生活が実現できるのか?

という問題にも踏み込み、体系化をめざす点で大きく異なっている。そしてこのことがメインテーマのQOL向上につながると考える次第である。

 行動分析学はもともと、スキナー箱の中でバーを押すネズミの行動の分析から始まった。それゆえ、1938年に刊行された最初の著書のタイトルThe Behavior of Organismsの「Organisms」は、実は「a rat」ではないかと揶揄されることもある。条件反射の理論(行動分析学で言えばレスポンデント行動とレスポンデント条件づけの理論)で知られるパヴロフの研究も、もともとは1匹のイヌのヨダレの量的分析から始まっている。このような実験的分析がもたらした成果は計り知れないものではあるが、それをそっくり人間行動に当てはめることにはやはり限界がある。オペラント行動に関して言えば、それが直後の結果で強化されたり弱化されたりするという範囲で言えば、スキナー箱での成果はそのまま適用できるかもしれない。しかし、日常行動のすべてはもっと複合的であって、かつ中期的なスパンで想定される間接効果的な随伴性を加味して強化・弱化されると考えるべきである。

次回に続く。