じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 2月3日07時10分頃に撮影した日の出。この日は旧暦の1月1日にあたるので、旧暦の「初日の出」ということになる。

 なお、旧暦の元日と立春の日は全く異なる。旧暦が月齢に基づくのに対して、立春は太陽が天球上の黄経315度の点を通過する瞬間を含む日で太陽暦起源である。今年はたまたま、旧暦の元日が、立春の前日(節分)であったため、その違いが鮮明となった。

2月2日(水)

【思ったこと】
_b0202(水)行動主義の再構成(8)「随伴性スパイラル」はトートロジーにならないのか

 昨日の日記で、「随伴性スパイラル」では「自然随伴性」が働いている場合が多いと述べた。もっとも、2007年5月21日の日記でも指摘したように、
「行動内在的」という表現は、『行動分析学入門』(杉山・島宗・佐藤・マロット・マロット、1998、産業図書)で採用されている呼び方であって、行動分析学の中でかならずしも定着した概念とは言い難い。マロット自身、旧版では「ビルトイン随伴性」と呼んでいたし、マロットの著作の別の場所、あるいはスキナーの著書の中では「自然随伴性」という言葉が使われており、「行動内在的」との違いは必ずしも明確ではない。
という曖昧さが残る。

 このことについて2007年5月21日の日記は、「毎日ジョギングをする」という行動が「随伴性スパイラル」で強化されていることについて、
  • 体を動かすこと自体に伴って生じる筋肉の変化や感覚刺激のフィードバック→「行動内在的随伴性」であり「自然随伴性」
  • ジョギングの最中に目に入ってくる風景→「行動内在的」ではない「自然随伴性」
というように区別した。そして、
...ここで重要な点は、「内在的」とか「自然」といえども、ある程度の制御や実験的検証ができるということだ。
例えば、足首にサポーターを巻いたり、筋トレ用の「重し」をつけたりすることで、「筋肉の動きがもたらす感覚刺激」の質や量をコントロールすることができる(←「重し」をつけること自体は、結果の付加ではない)。
「ジョギングの最中に目に入ってくる風景」がジョギングを強化しているかどうか、ということは、例えば、その風景が見えない夜間に走ったり、別のコースを走る行動が同じ程度に維持できるかどうかを実験することで確認が可能である。
 昨日の日記で挙げた5つの例:
  • 散歩をしながら景色を楽しむ。
  • ドライブを楽しむ。
  • 海で泳ぐ。
  • スキーを楽しむ。
  • ピアノで名曲を弾く。
のいずれにおいても、随伴性スパイラルを構成する環境変化(但し、行動主体の視点からみた変化)は、行動観察や、環境条件の差違による影響を比較することで独立して把握することができる。よって、
  • なぜテーマパークに行くのですか? 面白いからです。
  • なぜ授業に出ないのですか? つまらないからです。
というようなトートロジーに陥る危険は少ない。

 具体的に言えば、まず、「散歩をしながら景色を楽しむ。」という状況(昨日の日記では「エンゲージメント」と呼んでみた)では、季節の変化、外の明るさ、動物との出会い(野鳥、地域猫など)、によって散歩行動の出現頻度や継続時間に違いがあるかどうかを調べれば、行動に影響を与えている真の要因を同定することができる。また、もし、雨の日も風の日もとにかく散歩を続けているという人がいれば、それはおそらく別の要因、例えば、筋肉の動き自体の快感とか、体重・体脂肪の増加阻止といった別の要因によって強化されているということになる。

 2番目の「ドライブを楽しむ」では、特定の景勝地でドライブするのか、とにかくスピード感を楽しんでいるのかを調べればよい。

 3番目の「海で泳ぐ。」は、天気の良い日にのんびりと浮かぶように泳ぐのか、波の荒い時でも泳ぐのか、遠泳の練習をしているのかなどで区別できる。

 4番目の「スキーを楽しむ。」は、同じゲレンデで技を磨いているのか、いろいろなスキー場に出かけて雪景色を楽しんでいるのかを調べれば区別できる。後者の雪景色の場合でも、単に雪があればいいのか、遠くの景色が見えるのか、樹氷がないと強化されないのかなどで細かく区別できる。

 最後の「ピアノで名曲を弾く。」は、同じ曲を弾くのか、発表会の練習をしているのか、家族が居る時に弾くのか、などで区別できる。

 いずれのケースでも、(行動主体の視点から見た)環境側において、どのような条件が整っている時に行動が強化されているのかを把握できる。そしてその際、強調しておきたいのは、必ずしも「直前→行動→直後」という単線的な行動随伴性ダイアグラムの同定は必須ではないという点である。もちろん、上記の5つの行動があまり出現せず、もっと増やしたいと考えた時には、行動随伴性ダイアグラムに基づく付加的な強化が必要となる。であるから、行動改善においては行動随伴性ダイアグラムに基づく分析はゼッタイに必要である。しかし、それは、上記5つの事例の行動を持続させるための原因ではない。1月31日の日記で述べたように、あくまでアクセレーターとして機能するのである。そして、いったん、随伴性スパイラルが確立した段階では、付加的な強化はもはや不要となる。特に、自然随伴性で維持されている場合は、第三者による介入はもはや必要ない。

 産業労働の場合や、コミュニティの中での協働の場合は、他者と関わるという点で、第三者からの付加的強化は必須となるが、この場合も、アクセレーターとして機能する付加的強化と、集団内で相互に与え合う付加的強化とでは、役割や性質が異なっているように思う。このことについては後述する予定。

次回に続く。