じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真]
   このところ楽天版のほうに、龍ノ口グリーンシャワー公園で撮影したキノコの写真を多数掲載しているが、岡大構内でも珍しいキノコが多数出現している。写真は、本部棟前のタラコ型キノコ。イグチ科のキノコが密生しているものと思われるが正確な種名は分からない。



7月18日(水)

【ちょっと思ったこと】

香川県の渇水対策本部解散

 1日前の話題になるが、こちらのサイトによれば、
台風4号の影響により、早明浦ダムの貯水率が100%になり、香川県及び市町の渇水対策本部については、7月17日午後5時に解散しました。
ということになったという。

 あれほど心配されていた水不足が、一個の台風によってあっけなく解消されてしまうというところに、大自然の力の偉大さを感じる。

 新潟県中越沖地震を見れば分かるように、地震被害というのは人間には何1つ益をもたらさないが、台風の場合は、暴風、大雨、洪水、土砂災害をもたらす一方、水瓶として重要な役割を果たしているところもある。「来ないほうがいい」のではなく「来ることを前提として、いかにうまく付き合うか」という形で対処していくしかない。





セミの種類が分からなくなってしまった

 昨日記したように17日の朝からはクマゼミが鳴き始めた。それより以前の6月下旬頃から、「ジーーーッ」や「シュルシュルシュル」というような複数種類の鳴き声が聞こえているのだが、未だに正確な種名が分からない。

 私が子どもの頃は、セミと言えば、アブラゼミとツクツクホウシ、山に行けばミンミンゼミやヒグラシと決まっていたものだが、その後、西日本に移り住んでクマゼミの大合唱を聞くようになり、その後、ニイニイゼミ、ハルゼミなど何種類かの声を聞いているうちに、だんだんと区別がつかなくなってしまった。

【思ったこと】
_70718(水)[心理]「試しに止めてみる」ことの本当の理由(4)

 7月12日の日記の続き。

 7月11日に挙げた3つの事例のうち、今回は3番目:
体質改善のため、毎朝30分の散歩をすることに決めた。それを強化するために、「散歩をちゃんとした時に限って(その人の大好きな)コーヒーを1杯飲むという自己契約をした(散歩しなかった時はコーヒーは飲まない)。このセルフコントロールは有効と言えるか。
について考えてみることにしたい。

 単一事例研究法の入門書に書かれていることを素直にあてはめれば、上記の事例は
  • A1:第1ベースライン期。コーヒーを飲むという自己契約をしない段階では、毎朝の散歩はちっとも長続きしない、という安定状態にあることを確認する。
  • B1:実験期間。「散歩をする→コーヒーを飲む」という形で、散歩行動を強化する。
  • A2:第2ベースライン期。散歩をしてもコーヒーを飲まない、という条件のもとで散歩行動が維持できなくなることを確認する。
  • B2:第2実験期間。再び「散歩をする→コーヒーを飲む」という形で、散歩行動を維持する。
という実験計画により検討され、A1、B1、A2、B2という4期における散歩行動の出現頻度(達成率など)が、

A1<B1、B1>A2、A2<B2 (←「<」あるいは「>」は、達成率などの大きさを比較する不等号)

という不等号関係になるようなデータが得られれば、「コーヒーを飲む」ことは、散歩行動の強化にとって有効であったことが検証された、などと結論して、メデタシメデタシで終わる。




 しかし、こういう結論には果たしてどれだけの意味があるのだろうか。この形で検証されたのは「コーヒーが強化子として有効であった」というだけであって、裏を返せば、

●この人にとっての散歩行動は、コーヒーに頼らなければ、維持できない(つまり「コーヒー依存」)。

 を示したにすぎない。この人が、昼休みのウォーキングを始めようとした場合に、コーヒーが同じように有効な強化子として使えるであろうという知識は増えるかもしれないが、それだけのことである。

 また、上記において「A1<B1」ではなく「A1=B1」であった場合、つまり、この種の自己契約が成果を挙げなかった場合の結論としては、

●コーヒーは強化子として有効ではなかった。

あるいは、

●この人にとって、散歩行動は、維持が困難な、難易度レベルの高い行動であった。

というだけに終わってしまう。そこから何か、一般性のある情報が得られるとは思えない。




 もしこの人にとって、セルフコントロールの最終目的が「散歩行動の習慣化、それによって結果的に達成される体質改善」というところにあるとするならば、コーヒーが強化子として有効かどうかという問題は、ごくごく些細な関心事に過ぎないと言ってよいだろう。

 この場合重要なのは、「コーヒーを飲む」はあくまで暫定的、補助的、付加的な強化子であると位置づけ、散歩行動が文字通り「自走」できるように、散歩行動に自然に伴うような強化子の種類や頻度をできるだけ増やす工夫をすることにあるのではないかと思う。

 私自身もまさに実践している最中ではあるが、例えば小型のデジカメを持参して、散歩途中で見つけた珍しい花、キノコ、野鳥、ネコ、昆虫などの写真を撮ることはそれ自体きわめて強化的となる。7月18日の楽天版・じぶん更新日記にも写真を載せているように、山歩きをしていると珍しいキノコに出会うことがあり、それ自体が、散歩行動を強化してくれるようになる。そしてさらには、同じキノコが前日と比べてどう変化したかということも新たな強化子になっていくのである。そうなるともはや、「コーヒーを飲む」といった補助的、付加的な強化は要らない。特段の助けを借りなくても、散歩行動は自然に伴う強化子によって継続できるようになるのである。

 行動が自然随伴性によって強化されるようになった場合、上記の「実験計画」では、

A1<B1、B1=A2

となることが予想される。そしてその場合は、B2の導入はもはや不要と言ってよいだろう。




 「自然」随伴性による強化と言っても、何も手を加えず、成り行きに任せればよいというものではない。B1期間においては、暫定的、補助的、付加的な強化子に頼りつつ、常に、自然に伴う強化子の種類と頻度をできるだけ増やすために精一杯工夫をすることが肝要である。例えば、当初設定した散歩コースが、変わりばえのしない家並みで、しかも車の騒音が嫌悪的になるというのであれば、コースを変更することを第一に考えるべきであろう。また、自然風景は必ずしも強化的でないという人の場合には、別途、自然観察の入門書などを読んで関心を高める工夫(自然事物が習得性の強化子になるような工夫)をするか、もしくは、全く別の強化子、例えば、散歩道で出会う人々との会話が楽しみになるような工夫をしていく必要がある。

 次回に続く。