じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 子供の頃に読んだイソップ絵本。↓の本文参照。


3月1日(月)

【ちょっと思ったこと】

アカデミー賞にふさわしい助演男優は

 3月1日に発表された第76回アカデミー賞では、ピーター・ジャクソン監督の「ロード・オブ・ザリング/王の帰還」がノミネートされた11部門を完全制覇し、「ベン・ハー」、「タイタニック」と並ぶ史上最多タイ記録を達成した。その一方、渡辺謙さんの助演男優賞受賞はならなかったという。

 「ロード・オブ・ザリング/王の帰還」と言えばまさに昨日観に行ったばかりの映画である。日曜日午後にも関わらず客の入りは4割程度であったように見えたが、受賞をきっかけに大勢の人が来るようになるのだろうか。

 ところで、この映画、11部門も受賞したにも関わらず、その中に男優賞、女優賞が1つも含まれていないというのは興味深い。実際、フロドは主演男優というほど目立っていなかった。しかし、私は、助演男優としては欠かせないユニークなキャラをぜひ1人挙げたいと思う。ゴラムというツルツルの奇妙な化け物である。

3/2追記]
ゴラムの記事がいくつかのサイトに紹介されていた。

【思ったこと】
_40301(月)[心理]「一般的に言えること」と教訓

 2月27日の日記で、某大学の英語入試問題の「次の英文中に論じられている事例から一般的にどのようなことが言えるか。」という設問について考察した。

 このことに関して、その後、「次の英文から読み取れる教訓は何か」というような意味にもとれるのではないかという指摘があった。

 しかし、今回の英語問題はあくまで科学のジャンルに属するものであるし、行動指針を与えるような内容でもないので、これに限っては、教訓を述べることはできないように思う。では、教訓(モラル)というのはどういう時に使われるのだろう。このことで思い出されるのがイソップの寓話である。イソップが挙げた事例はいずれもフィクションであり、人間行動の法則を実証するものではない。にも関わらず、多くの知恵を授けてくれる。イソップ寓話を最大の愛読書に掲げた米国大統領も居たくらいだ。

 もっとも、「教訓」には必ずしも正解があるわけではない。子供の頃に読んだイソップ絵本(『トッパンの絵物語』、文:川端康成、え:村上松次郎、1956年。上の写真参照)には、それぞれの寓話の終わりに川端康成先生の文による「教訓」が記されていたが、私にはどうも納得できないものが多かった。以下、3話について、川端先生の解釈と私なりに考えた解釈を挙げてみたいと思う。
  • ねずみの相談(ネコの首に鈴をつける話)
    • 川端先生の解釈:実行できない考えは、何の役にもたちません。
    • 私の解釈:口先だけの提案なら誰でもできるが、実行に伴うリスクを請け負う犠牲的精神は別物である。

  • つるのしかえし(キツネがツルに平たいお皿でごちそうしたが、ツルはくちばしがつっかえて料理を食べることができなかった。後日、ツルは細長い瓶でキツネにご馳走したが、キツネは瓶の中の食べ物を取り出すことができなかった)
    • 川端先生の解釈:いじわるをするものは、しかえしをされてもしかたがありません。
    • 私の解釈:異なる生活習慣や価値観をもった他者を歓待するには相手の基準を尊重することが大切。

  • 北風と太陽(旅人のコートを剥がす有名な話)
    • 川端先生の解釈:おどかしも、暴力も、しんせつや、やさしいおこないには、とうていかないません。
    • 私の解釈:北風は、「コートをしっかり掴まないと寒さという嫌子が出現する」という「嫌子出現阻止」の随伴性により、コートを掴む行動を強化してしまった。太陽は、「コートを脱げば、暑さという嫌子が消失する」という「嫌子消失」随伴性により、コートを脱ぐ行動を強化した。どちらも旅人に行動を強制しているが、コートを脱ぐ行動のほうがより任意性が高いため、旅人が自分の意志でコートを脱いだと誤解されやすい。
 これに限らず、ある逸話から教訓を引き出す場合、2通り以上の解釈を併記させるようにするとクリシンの訓練になるかと思う。