じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] 大学構内の用水沿いで見つけた木の実。図鑑で調べたところ、トキリマメ(別名オオバタンキリマメ)ではないかと思われる。葉のもとのほうが広いのがトキリマメ、もとのほうがせまくなるのがタンキリマメということらしい。「痰きり」の効能に違いがあるのかどうかは分からなかった。追記]その後の検索により、この植物は、クサギ(臭木)であることが判明。



10月10日(水)

【ちょっと思ったこと】

機種依存文字を放置するのは政府・国会の怠慢?

 来年度シラバスの執筆依頼とフォームを、大学公用ページの中にアップした。そのさいに今回から新たに加えたのが、機種依存文字を使わないでくださいという部分。具体的には、ローマ数字やマル付き数字のことをいう。フロッピーディスクで提出されるシラバス原稿はそのままCD-ROMに焼き込んだり、Web上で公開する学部もあるため、これらの注意書きは重要である。

 しかし、よく考えてみれば、公式の事務文書でも使う必要があると言われるマルつき数字、あるいは、心理学演習I、IIというように授業科目の名称に使われるローマ数字がいまだに機種依存文字の状態で放置されているとは困ったことである。

 いったい何時になったら不便は解消されるのだろうか。

10/11追記]
いつもお世話になっているハワイのShiroさんから以下のような最新情報をいただきました。どうもありがとうございました。[改行箇所は長谷川のほうで変更させていただきました]。
実は丸付き数字、ローマ数字ともに既にJIS規格になっています。
JISX0213:2000と呼ばれるもので、1997年から3年がかりで
策定が進められ、2000年はじめに決定されました。

しかし、規格に定められたからといってすぐに使えるようになるわけではなく、各ソフトウェアが対応しなければなりません。
進歩の速いコンピュータの世界でも、常に最新版のソフトを使い続ける人ばかりではありません。従って、どうしても普及するのに時間がかかります。

さらに、多くのソフトウェアメーカーは現在、むしろ国際規格Unicode(ISO10464) の方に合わせることを望んでいるそうです。
JISX0213に含まれる文字の多くは既にISO10464に入っていますが、残りがISO10464にどう加えられるかはこれから議論されることで、それを待つとなるとさらに時間がかかる、ということのようです。

文字コードの問題は実に複雑で、私も全貌は理解できません。
次のURLは参考になるかもしれません。

http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/column/ogata/index.htm




当店は国内産牛肉を.....

 近くのベーカリーレストランから時々送られてくる案内葉書に、これまでに無かった文言が挿入されていた。

当店は国内産牛肉を使用してません。また代替の魚料理も用意できます

 狂牛病不安を解消するために付け加えられたものかと思うが、過敏な反応であるようにも思う。それと9/29の日記にも書いたように、「牛肉以外なら安全」という保証はない。また、この広告では外国の牛肉なら安全であるような印象を与えるが、こちらの記事にも書かれているように、食肉に残留した成長ホルモンは発ガン性があり、人体に影響を与える恐れも指摘されている。狂牛病そのものは検査が完了し、安全宣言が出された時点でまず心配ないが、ホルモンや抗生剤のほうは、じわじわと体をむしばむものであって、安全の保証は難しい。行政としても「絶対に有害であるとは言い切れない」レベルで検証することしかできない。

 9/23に行われた講演会で日本の代表が発言していたように、先進国における環境問題では、「すでに有害であると分かっているものをどう除去するか」よりも、「新しく作られた物質の未知の危険性にどう対処するか」のほうが重要な問題となっている。いちばんの安全性は、人類が昔から食べていたもの、使っていたものを安全であると仮定した上で、それで間に合う場合には、余計なものを付加しないこと。利便性やコストダウンのために、安易に未知の物質を使わないことではないかと思うのだが。
【思ったこと】
_11010(水)[心理]人間・植物関係学会設立総会(4)研究発表会(3)「育てる」ことの精神的効果

 少し間をあけてしまったが、9/30に行われた学会の報告の続き。

プランターでの植物栽培が脳波、心拍変動、感情に及ぼす影響

 大学生を2つのグループに分け、実験群はハツカダイコンの栽培、統制群は苗をみるだけという条件を繰り返し、その前後で、感情プロフィールテスト(POMS)や脳波、心拍変動係数を測定し、「育てる行為」によってどのような変化が生じたかを検討したものであった。結果として、実験群ではPOMSのいくつかの項目で負の感情が減り正の感情が増える傾向が認められ、また、α波の有意な増加も認められたという。

 被験者数が少ないこと(男女別の比較をした場合には各群6名となる)、「育てる」、「見る」ための時間が少ないこと、「育てる」作業のどの要素が有効であったのかが明白でないことなど、いくつかの問題点は残っているが、伝統的な実験的手法を忠実に守ったという点では、非のうちどころのない内容になっている。辛口の表現をするなら、論文になりやすい研究と言うことができる。

 むしろ、この種の実験研究では、
  1. 得られた成果をどこまで一般化できるのか。
  2. 平均値の差だけで有効性を判断できるのか。
ということのほうが問題ではないかと思う。

 このうち1.について言えば、仮にこの実験で、心理テストや各生理指標に顕著な有意差が現れたとしても、
  • その効果はハツカダイコンの栽培に限られたものなのか
  • 被験者が学生(それも、栽培が大好きと思われる某大学園芸学部の学生)であったために現れた効果なのか
  • 長期的な有効性はあるのか
  • 単に体を動かしたことによる効果ではないのか(同じ程度に体を動かすという条件のもとで、「育てる」作業と「育てない」作業の比較が行われていない)
といった疑問が残る。そして、もしそれらの要因を個別に取り出して検証しようとすると、一人の研究者が一生それにかかりきりになってもカバーしきれないほどの組合せができてしまう。この学会の基調講演でも指摘されたように、これでは「木を見て森を見ない」、あるいはもっと極端に、「葉っぱの細胞を見て森を見ない」悪癖に陥ってしまうだろう。

 もうひとつの2.は、1.とは別の視点からの批判である。この種の実験では「植物を育てる」作業がすべての人にポジティブな精神的効果をもたらすとの仮定から出発しているわけだが、もしかしたら、100人のうち5人の人だけにしか有効でないかもしれない。その場合、平均値の有意差によって万能な効果の有無を検討しても意味がないことになる。つまり、万能性よりも、多様性にどう対処するかという視点が求められるようになる。

 余談だが、この3番目の研究発表の座長は長谷川が引き受けさせていただいた。フロアからは少なくとも3人の方から挙手があったものの、制限時間オーバーにより座長権限で質疑をうち切らせていただいた。発言を希望された方々には、この場を借りてお詫びさせていただく。

]上記の問題点についての一般的な考察は、こちらにあります。】