じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] 農学部農場のハナズオウ。新緑の半田山との補色関係が引き立つ。



4月15日(日)

【思ったこと】
_10415(日)[心理]象牙の塔と現場心理学(10)「乗り換え案内」、「時刻表」、「旅行ガイドブック」は、なぜ学術書ではないのか?

 今回の連載では、心理学の研究の情報的価値(意外性と確実性)や実用的価値の問題を取り上げてきた。じつは、研究に限らず、コミュニケーションの中で行き交う諸々の情報は、何某かそれらの価値を有するものである。そこで、日常社会からいろいろな事例を拾い上げてくることによって、それらの意味がより明確になってくるのではないかと考えた。

乗り換え案内

 新幹線に乗っていると、それぞれの駅で停車する直前に「次の○○線は××時××分発、△△番線から...」というような乗り換え案内の放送がある。この情報は、その線への乗り換えを予定している乗客だけに有用、他の乗客にはノイズにしか聞こえない。

 4/10の日記
実用的価値というのは、その情報を利用する者にとっての有用性に近い概念。つまり、賢明な利用者が存在し、特定のニーズがあって初めて生じる価値である。また、通常は、日常生活上での有用性を意味することが多い。
と述べたが、実用的価値が利用者側のニーズに依存するという考えは、まさにこの乗り換え案内を例にすると分かりやすいのではないかと思う。

時刻表

 駅の売店や本屋で売っている時刻表は、なぜ学術書とは言えないのだろうか。バカげた設問のように思われるかもしれないが、いちど学生に質問してみたいと思っている。時刻表には意外性は無いが、確実性は絶対に必要だ。また実用性は抜群である。乗り換え案内と違って、多様なニーズに応えられる価値を持っている。

ガイドブック

 旅行のガイドブックは、
  • 旅行先で迷っている人には、漠然とした選択肢を精緻化し、不確定さを減少させる価値をもたらす。
  • オススメの名所、みやげ、レストランなどについての情報は、確実なものでなければならない。
  • 類書にない「意外性」が価値を高める。
  • 執筆者の主観的判断がある程度許される。
という特徴がある。では、特定の研究分野についての概説書、あるいはガイダンス的な入門書とどこが違うのか。単に、対象や、取り上げる個別の話題の中味が違うだけなのか?このあたりを考えてみると面白いかと思う。時間が無くなったので次回に続く。
【ちょっと思ったこと】

分類で不登校が減る?

 4/16の朝日新聞によれば、鳥取市教育委は2000年度の長期欠席の分類を再検討するように市内の小、中学校に指示。鳥取県の不登校生徒率は98年度が3.28%、99年度が3.27%と2年連続で全国トップであったが、これにより大幅に「減少」したことが15日、分かったという。

 文部科学省の『学校基本調査の手引』では、長期欠席は「不登校」、「病気」、「経済的理由」、「その他(複合的理由など)」の4つに分類することとなっているが、同教育委では、
  • カウンセリングを受けたり、自律神経失調症など具体的な病名がつけられた場合は「病気」に分類
  • 私設スクール通学者は「その他」にする
などと指導し、これにより、指導前の分類で161人(2000年10月時点)であった不登校数が指導後の分類で107人に減少、逆に、病気が6人から28人に、「その他」が3人から30人に増加した。

 同記事で、石川憲彦・静岡大教授が「科学的基準で分けられないのに、分けようとするから混乱が起こっていると思う」と述べておられた通りで、客観指標として用いるのであれば
  • 原因による分類。但し、そもそも不登校のように複合的な原因で起こりがちのものが分類できるかどうかは不明。感染症とか、交通事故のようなものなら分類可能であろうが...。
  • 操作的な基準による分類。欠席日数(文部科学省の手引では、「年間に連続または断続して30日以上欠席」)などがこれにあたり、原因は後から推測することになる。改善施策の成果をチェックする場合には、有用な客観指標の1つとなる。
のいずれかとすべきであり、不登校の場合は、まず、操作的基準により、まず全体数を把握することが先決かと思う。その上で、原因分類として、経済的理由や(はっきりしている場合は)病名を原因の内訳の1つとして把握。カウンセリングを受けた数や私設スクール通学者数などは、改善策の内訳の1指標として原因分類とは独立して集計すべきである。

 もっとも、上記の「病名」による分類だが、精神的な問題をかかえた生徒の場合には、その時々の担当医が医療モデルでとらえたがる医者かどうかによって大きく変わるし、病気であると診断したほうが安心する生徒もいればその反対の生徒もあって、必ずしも客観的基準だけで機械的に分類できるものではないらしい(99年3月17日の日記参照)。

 今回の記事は小中学生の不登校を取り上げたものであったが、最近は、大学でも長期欠席、留年、休学や退学などが問題視されている。この場合も、原因による分類はなかなか難しい。以前は、「一身上の理由」という文書だけで機械的に休学や退学が認められていた時代があったが、最近では、より具体的な理由が求められるようになっている。それでもなお、
  • アルバイトをやりすぎて留年するハメになったが、授業料納付を節約するために「経済的理由」で休学を申し出た場合
  • 反社会的宗教団体にマインドコントロールされ、ニセ募金活動や街頭での勧誘活動のために授業を受けられなくなった学生が「勉学意欲喪失」を理由に休学を申し出た場合
などは、大学側には本人が自発的に語ること以上に詮索する権利がなく、結果的に曖昧な分類のままで処理されてしまうケースが多いように思う。



ラブストーリー
 4月から中学生となった娘が、妻と一緒に「日曜劇場・ラブストーリー」という新番組を視ていた。これまで推理・サスペンスものしか興味の無かった娘にとっては、人生初の本格的恋愛ドラマ鑑賞というところか。これって毎週やるんだろうか。