じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] ドウダンツツジ。



4月5日(木)

【思ったこと】
_10405(木)[心理]象牙の塔と現場心理学(5)南風原・市川・下山編『心理学研究法入門』(3)研究の実用的価値

 4/3の日記に引き続いて『心理学研究法入門:調査・実験から実践まで』(南風原朝和・市川伸一・下山晴彦、2001、ISBN4-13-012035-2)の中の「第1章 心理学の研究とは何か」(市川伸一氏)について感想を述べたいと思う。

 今回はその中の「研究の実用的価値」について考えてみることにしたい。市川氏はこれについて
  • 研究で得られた知見や理論を応用することによって,私たちの生活に益をもたらすならば,その研究はそれだけ意義がある。 これは研究の実用的価値と見なせる。
  • 実用性が高い研究というのは,いわゆる「応用研究」とは限らない。非常に基礎的な研究であっても,その原理がさまざまな場面で使われることによって,広い実用的価値が生まれる場合もある。
  • 研究の価値というのは,個人レベルだけで考えられるものではない。.....実用的価値とは,「そんなことを調べて何になるのか」という問いに答えうるということである。
という3点を強調しておられる。このこと自体には異論は無いのだが、問題は、
  • 「私達の生活に益をもたらすかどうか」は、どの時点で判明するのか。
  • 一部の人だけに益をもたらす場合はどうするのか。
  • 「そんなことを調べて何になるのか」という問いにはどのレベルまで答えるべきなのか。
といった点だろう。実用的価値は、最初から期待されるとは限らない。むしろ、研究者の姿勢が
  • 閉じた領域の中で、実験のための実験、論文のための論文に終わっているのか。
  • 何らかの現実的問題を念頭に置きながら、その一手段として実験的方法を遂行しようとしているのか。
のいずれに向いているのかを見極めるべきかもしれない。

 このような難しい面はあるが、やはり何らかの形で「実用的価値」に目を向けることは大切だろう。この連載のもともとのネタ本である『現場心理学の発想』(やまだようこ編, 1997)の中第4章「臨床現場と大学の狭間で」の中で下山晴彦氏は
.....大学で行われている心理学は,建前としては人間の現実を理解するための学問であるのだろうが,実際は現実を理解するのとは異なったこと,時には現実を理解するのに障害となることをしているのではないかとの危倶さえ覚えることがある。たとえば,心理学の専門雑誌で採択される際に重視される基準では,現場で役立つか否かということはほとんど考慮されていないことは,投稿した際の審査者のコメントや掲載される論文の内容をみれば一目瞭然である。[p.56]
と指摘しておられるがもっともなことだ。

 だいぶ昔の話になるが、動物を被験体として心理学の卒論研究をすることについて、

動物実験の最大の実用的価値は、その実験をすることで卒論が書けることにある。

などという冗談を聞いたことがあるが、これが冗談でなくなってしまったのでは困る。ちなみにこの「冗談」は

因子分析の最大の実用的価値は、それを用いることで修士論文が書けることにある

というふうにも

モデル構成の最大の実用的価値は、それを検討することで研究業績がふやせることにある

というふうにも書き換えることができる点に留意する必要がある。
【ちょっと思ったこと】

大リーグで活躍する日本人

 大リーグ・レッドソックスの野茂英雄投手が4日夜(日本時間5日午前)のオリオールズ戦に今季初先発しノーヒットノーランを達成したという。このほかにも、イチロー、新庄、佐々木、長谷川.....など、大リーグでの日本人の活躍には目をみはるものがある。

 この熱気に水をさすつもりは無いのだが、戦後50年以上経ってもなお、日本のプロ野球が大リーグの二軍的存在から抜け出せず、一流選手が国内での累積記録に目もくれずに渡米していく現状は少々情けない気がする。

 このことで昨年11月21日の日記に記した長谷川滋利投手のことを思い出した。長谷川投手は子供のころテレビで大リーグの試合を見た時、打席からの距離を示すために外野フェンスに書かれている「300」とか「400」といった数字をメートルであると勘違いし、大リーグの選手はとてつもなく大きなホームランを打つものだと思いこんでいたという。そんな思いこみから大リーグに夢をいだくプロ野球選手も多いのかもしれないが、長嶋や王に続く日本野球のヒーローは国内だけでは活躍できないものか、少々残念に思う。

 いっぽう、観客側はどういう考えを持っているのだろう。同じ声援を送る人々の中でもさまざまな違いがあるはずだ。思いつくままに挙げてみると.....
  1. 国籍にこだわらず、困難を克服して成果をあげる姿には心をひかれるものがある。
  2. 現状に満足せず、より高いレベルの目標をかかげ、それに向かって努力をする向上心に敬服する。
  3. 日本人が世界の大舞台で活躍することは、同じ日本人として誇りに思う。
  4. 憎たらしい米国人打者を三振に打ち取ったり、米国人投手から本塁打を打つシーンを見るとスッキリする。

 こうした違いは、大相撲での外国人力士の活躍をどう受け止めるか、あるいはオリンピックなどの国際大会における日本人選手の活躍にどういう声援を送るかという違いとも連関しているはずだ。




すももの花

 山梨県内の中央高速を走行中、白い花がたくさん咲いている果樹園があった。梨の花にしては早すぎる、桃にしては白すぎる、リンゴのはずはないし.....などと妻と話していたが、4/6夕刻のNHKニュースによれば、どうやら、すももの花だった模様。