じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] ほうき草。秋になり色づきがよくなってきた。手前はチョウセンアサガオ。



10月12日(木)

【思ったこと】
_01012(木)[一般]コインを入れずにケータイをピッピッピッとやってコーラを買うのがITの本質だったのか

 岡山県内の家庭に無料配布されている某生活情報誌(10/13付)に、竹中平蔵・慶応大総合政策学部教授の講演録が掲載されていた。岡山県内の市民向け公開講座でIT革命について語られた内容を要約したものだが、その中で「ITの本質」として挙げられた例がまことに興味深い。

 それによれば竹中氏はフィンランドの空港で、携帯電話を使って自販機からコーラを買う人を目撃されたという。
  • そのフィンランド人は、自販機の前の数字を見ながら携帯をピッピッピッとやって、コインを入れずにコーラを出した。
  • 要するにコーラを販売する会社に電話をかけて機械の番号を打ち込んだのである。
  • コーラの会社は、その自販機にコーラ1本をストーンッと落とす命令を発する。
  • コーラの代金は電話料金と一緒に銀行から引き落とされる。
竹中氏によれば、このプロセスがまさにIT革命の本質なのだという。なぜなら、コインでコーラを買うためには
  • まず銀行からお札を出すという取引が必要。
  • このお札をコインに両替するという取引が必要。
  • 最後にそのコインを機械の中にちゃんと入れるという取引が必要。
 携帯電話があれば、その3つの取引はピッピッピッ一発で完了してしまう。これにより取引コストが限りになくゼロに近づくということがIT革命の本質だというのが氏の主張なのだが、さて、これはホンマに便利な世の中に近づくのだろうか。

 10/8の日記でちょっと触れたように、そもそもお金というのは、自らの労働によって手に入れたり作り出したりしたものを交換する際の利便性を増すために発明されたものである。例えば空港の隣に農産物の直売店があったとする(←岡山空港だったら、すぐ隣に桃畑があるぞ)。そこの農家の人が従来通りの方法でコーラを飲みたいと思ったら、売り上げの中からコインを出してきて空港の自販機に入れるだけで済む。ところが竹中氏の事例どおりに事を運ぼうとすれば、まず、桃を売った代金は銀行に預けられなければならない。同時に、携帯電話の契約、自動引き落としの契約をしなければならない。その上でケータイを持参して空港まで出向き、わざわざ自販機の番号を入力、さらに暗証番号などを入力して初めてコーラを飲むことができる。こっちのほうが遙かに煩雑な取引になるのではなかろうか。

 いま述べたことは揚げ足取りかもしれないが、それはそれとして、ケータイをピッピッピッとやってコーラを買うプロセスに全く人間が現れてこないことにも不安を感じざるを得ない。同じコーラでも、売店のおばちゃんに「ありがとうございました。よく冷えてるよ」といって手渡されるコーラのほうがずっと心がこもっている。理想的には、取れたての果物をその場でジューサーで搾ってコップに注いでもらったほうが、さらに美味しい。そんなにまでして取引コストをゼロに近づける必要があるのだろうか。

 これはITというより機械文明一般への批判になるのだろうが、私が子どもの頃には、今とは比べ物にならないほど多様なふれあいの機会があった。例えば、街角のたばこ屋さんは伝言板や連絡係をつとめてくれたし、朝一番にはアサリ売りのおじさんや牛乳配達が来た。バスに乗れば車掌さんの明るい声が聞こえる。渋谷のガード下には靴磨き屋さんやバナナの叩き売り、電車の改札口ではカチカチと切符を切る音など。もちろん銀行のキャッシュカードのように待たされずに済む便利さもあるけれど、人とのふれあいあってこその町だ。必要以上に無人化を進めるべきではない。

 このほか、同じ講演録にあった「経済の基礎にあるのは『高ければ買わない、安ければ買う』“常識”"」、「アメリカの高い経済成長の3分の2は『IT革命』によって生み出された』というキャッチフレーズにも、それぞれ疑問を感じざるを得ない。
  • 物を買うのは安いからではなく、それを使うことで行動機会が増えるから買うというのが基本。
  • この3年あまりの間にアメリカ経済は確かに発展したが、そろそろカゲリが見えているのではないか。中東情勢の緊迫化も一因ではあるが、ITバブル崩壊の兆候もあるのでは?
 念のため言っておくが私はIT革命主義者ではない。9/29の日記にも書いたように、IT革命で人間がどう変わるかを危惧するよりも、それを通じてどういう行動を増やしていくのか、そのために我々一人一人がどのように主体的に関わっていくのかを科学的に検討していく必要があるというのが私の基本姿勢だ。10/12のニュースによれば、なんでもIT関連の講座新設にあたっては特段の配慮がなされるということだが、技術ばかりの研究ではダメだ。それを使う人間の行動を同時に研究していくことが是非とも必要。
【ちょっと思ったこと】

タイプアート

 みのもんたさんの「今日は何の日」によれば10月12日は、渡辺良子さん(54歳)が初めてタイプアートの個展を開いた日だそうだ。タイプアートというのは、四肢の不自由な渡辺さんが独自に高めた技法。いくつかの色リボンを使い、「◎」(←実際は「○」の中心に「・」)という記号に、平仮名の「の」を重ね打ちすることなどにより濃淡を表現する。第一作のチューリップ以後、京都の建物や歌手の三条さんなどさまざまな作品を完成。平成7年9月には画集も出版されたとか。文字数や色の限られた昔ながらのタイプライターを使うことで、かえって印象画的な明るい作品ができたのが幸い。パソコンで使える描画ソフトではこれだけのものは作れないだろう。
【スクラップブック】