じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] 緋衣草。花屋さんのラベルについていた愛称であり、正式な種名は分からないが、サルビアの一種であることは確か。赤やピンクの色があり、いったん植えると種または宿根によりよく増える。



10月8日(日)

【ちょっと思ったこと】

最後の給油

 この日記に何度か書いているように、我が家にはライトエースが2台ある。1台は2年前に買ったノア、もう1台は11年半前に買った「スペースカジュアル」。このうちの古いほうの車は、もともと新車購入時に下取りに出す予定であったのだが、その当時妻が使用していた中古の軽自動車のほうが故障が多くおまけに天井のカバーが剥がれて落ちそうになるなど使用に耐えず、そちらを先に廃車にしたために、不本意ながら普通車2台所有という、贅沢かつムダな状態が2年あまり続くことになった。

 この古いほうの車、エンジン自体はまだまだ丈夫だが、さすがに12年近くたつと、各所に老化が目立つ。このほか、自動車税の負担、安全面での不安(エアバッグやABSはもちろんついていない)もあり、私がケガで入院していて車に乗れない時期が続いたのをきっかけに、軽自動車購入と引き替えに廃車に出すことを決めた。

 この車、近々東京に出張する時に岡山空港までの往復に使用、その後で軽自動車の販売業者に引き渡す予定となっている。そういえば、ヘールボップ彗星が近づいた時は、この車に望遠鏡やカメラを積んで空港近くの山まで毎日のように通ったものだ。日曜日の朝、この車に5リットルだけ最後の給油を行う。長年愛用してきただけに、出荷前の牛に最後の牧草を与えるような寂しい気持ちになった。
【思ったこと】
_01008(日)[心理]ボランティア通貨

 10/5の朝日新聞によれば、京都府は7日から「ボランティア通貨」を発行するという。通貨が発行されるのは3年前から府が整備を進めてきた「丹後リゾート公園」の「地球デザインスクール」事業。例えば公園づくりを1時間手伝うと25ハミー(公園のある宮津市波見(はみ)地区にちなんだ愛称)というように、空き缶を再利用したトイレや木製階段づくりにボランティアで携わった場合に貰うことができ、それらはパソコン内の通帳に記録され、100ハミーたまれば1泊2000年の公園内宿泊施設が利用できるほか、公園の窯で作った炭やパンと交換したり、パソコンの使い方を教わった時のお礼にも利用できるという。

 ボランティア活動に従事することに対して通貨を与えることには一部から「ボランティア精神に反する」との異論が出るかもしれないが、私は大いに結構なことだと思う。もともと、通貨というのは、自らの労働によって手に入れたり作り出したりしたものを交換する際の利便性を増すために発明されたものである。貨幣が物々交換の代替機能を果たしているだけであれば、人々は今ほどお金に執着することは無かったであろう。その交換可能範囲が、マネーゲーム、不労所得、賄賂、罰金など、労働の価値と対応しないところまで拡大されてしまったために、ボランティア活動を報酬で雇われる労働と区別する必要が出てきたとも言える。

 そこで、もう一度通貨の交換可能範囲を考え直してみる。ボランティア活動の成果をタンジブル(tangible)なものに置き換えた上で、個々の行動に伴う内在的な結果に助け合いや交流といった「交換可能」な価値を与えてみたらどうだろうというのが、ボランティア通貨という新しい概念を生み出したのであろう。

 目に見えにくい価値をタンジブル(tangible)なものに置き換えるという発想は、ほんらいは行動分析的な考え方であると思うのだが(いわゆる「トークンエコノミー」はその一つ)、最近では、経済関係者、環境学者、福祉学者の間でもこれを活用しようという動きが高まっているようだ。

 先日広島の「園芸療法講演会」に参加した時、受付のところに
──経済文化講演会──『新しい社会的価値観による投資と収益──芸術・環境・教育・銀行』 という講演会の案内資料があるのが目にとまった。そこでは、「芸術・環境・教育のための銀行」について
この銀行はお金のために人が存在するのではなく、人々のために、貨幣は循環すべきであるという理念に基づき、その融資先は、環境配慮型生産、有機農業、教育、芸術、医療・福祉、男女共同参画社会、第三世界のフェア・トレード、コミュニティ、住宅環境改善など、社会的なテーマのプロジェクトに向けられています。
という紹介が記されていた。そして、「新しい社会的価値観による投資と収益に関する「智慧の銀行」をめざして「シンクバンク研究所」を設立する」という。

 この「智慧の銀行」自体は、新しい「通貨」の発行を目ざすものではなさそうだが、旧来の貨幣の交換価値を見直すという点では、上記の「ボランティア通貨」と同じ発想に基づくものであると言えよう。

 「通貨」には以上述べた「交換価値」に加えて「貯める」ということの意義もある。「貯める」というと不正蓄財のようなものを連想してしまいがちであるが、本質は、刹那的な価値、短時間で消失してしまう価値をより長い時間的スケールのなかで見直し、累積されることにもっと大きな意義を見出していこうという発想にある。
【スクラップブック】