じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa


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[今日の写真] 文学部西側のマツバギクが見頃になってきた。いろいろな色があるが、同じ場所に植えているにも関わらず、咲く順番が決まっているのが面白い。5月13日頃には、写真右のような黄色と小さめの花(近縁種)が咲いていた。その後、白が咲き、それらの花が終わった頃に、今度は写真左のような赤系統が満開となる[5/26撮影]。さらに、最も一般的な桃色系の花が咲きそろうようになる。なお、桃色系だけは花期が長く、秋にも咲き、繁殖の力が強い。 [今日の写真]



5月26日(金)

【思ったこと】
_00526(金)[一般]「神から頂いたから大切」という論理、「大切に思えばこそ壊す」という論理

 昨日の日記のこの欄で「「相次ぐ凶悪犯罪」を政争の具にしてはならない」と述べたが、26夕刻に行われた森首相の「神の国」発言釈明会見では案の定、この問題が発言の正当化のために使われていた。5/27の朝日新聞記事からその部分を引用すれば
 私が一番申し上げたかったのは、少年が相次いで人の命を軽視するような事件を引き起こしている中で、人の命の大切さへの理解や宗教的な情操を深める教育が大切であるということだった。
 懇談会の席で「人の命はお父さんやお母さんから頂いたものには間違いない。しかし、もっと端的に言えば、神さまから頂いたものであり、頂いた命は自分の命としても大切にしなければならないし、同様に、人様の命をあやめてはいけない。そのことを基本にしなければならない」ということを強く申し上げた。
となっている。森首相の「真意」とはこのことを指すようだ。

 昨日の日記でも指摘したが、宗教における「命の大切さ」は宗派、あるいは民族といった内集団のみで成り立つ傾向が強い。宗教を信じる者のあいだでは命を大切にした良好な互助関係が確保できるかもしれないけれど、特定宗教が政治勢力と一体となって影響力を強めていく時には、価値観の異なる者への排除や弾圧が起こりやすくなるものだ。

 5/15の日記で町内会の組長をやっていることを書いた。町内会の行事の中には「水神祭」や「だんじり祭り」など宗教行事を模した子供向けの企画も含まれている。個人的には宗教色は全く無いように思えるのだけれども、それでも、「うちは宗派が違うから」という理由で協力を断り子どもを参加させない家庭もある。地域レベルで宗教的な情操を深める活動を活発化していくためには、こうした多様な価値観をどう尊重するかということが重要な課題になると思う。

 命というものを「神さまから頂いたもの」であるから大事にしなければならないという視点が、自殺や殺人の防止になるのかどうかについても、もっと深く考えていく必要がある。

 「頂いたものだから大切に」というのは、「これは亡くなったお祖父様から頂いたものだから大切にとっておきなさい」というようなもので、見方によっては床の間に飾る骨董品だ。私はむしろ、頂いたものであろうと、粗大ゴミ置き場から拾ってきたものであろうと、それをどう活用できるかというところに本当の大切さがあるように思う。そういう意味では、自分の可能性の素晴らしさを知らずに自分の命の大切さを自覚することはできない。「自分は何の役にも立たないはみ出し者だが、命そのものは頂いたものだからそう簡単に捨てるわけにはいかない」というのではあまりにも空しい。相手の命の場合も同様で、ただ「頂き物だから」という骨董品感覚ではダメ。相手がいま現在存在していることの価値を認めあうことが何よりも大切である。

 もう1つ、以上述べたこととは視点が大幅に変わることを承知で書くが、少年の場合には、「人の命が大切なものだと考えたからこそ、それを奪おうとした」というタイプの犯罪があることも忘れてはなるまい。

 公園の花壇を例にとれば、草花の大切さを知らずに踏み荒らす少年も居れば、その草花がみんなに親しまれていることを知った上で敢えて嫌がらせのためにそれを抜き取るという行為にはしる少年も居る。後者の少年の行為は草花の大切さを教えるだけでは防止できない。

 自分の存在が認められず、何か大きなことをして注目を集めたいと考えている少年の場合は、何であれ、世間が大切だと考えている存在を壊すことに目を向けるようになる。国宝級の建物を放火しようとしたり、ネット上でクラッキング行為に走るのは、すべてそれらが「大切だからこそ壊す」という発想に基づくものと言ってもよい。そういう意味では、ただ単に「○○は大切だ」と教えるだけでは不十分。「存在の大切さ」ではなく「存在を活かすことの大切さ」が自然に理解されるような環境づくりを目ざさなければならないと思う。
【ちょっと思ったこと】
【今日の畑仕事】

水撒き。タマネギ、ブロッコリー収穫。ニンジンと小松菜の種まき。トマト苗追加植え付け。キウイのネット張り。
【スクラップブック】

  • 米国の犯罪者更生私設「アミティ」を取材し、ドキュメンタリー番組を制作した坂上香さんの「心の傷と向き合うために−−加害と被害を自分に引き寄せて」が5/28の13時〜16時、岡山市福泊の富山公民館で開かれる。坂上さんは「『人間は変わりうる』という可能性を切り捨てないでほしい。罪を犯した人がどういう環境に生きてきて、何をどうしたら現在に至ったのかを検証しないまま、いくら『被害者の気持ちを考えろ』を叫んでも、自分の痛みさえ抑圧してきた人間に可能なはずはない」と話しているという。参加費は大人1000円。問い合わせはCAP岡山の市場さん(086-277-7522)。[5/27朝日新聞岡山版]。