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じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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【2025年10月】オーストラリア南西部・フラワーハンティング(6)山火事の跡
パース到着後は専用車でウェーブロックに向かった。途中何度か目に入ったのは山火事の跡であり、樹木の幹が黒焦げになっていた。
 山火事の原因は自然発火によるとされているが、焼畑や山焼きのように意図的に燃やす場合もあるようだ。また山火事に遭わないと繁殖できない植物もある。

2025年12月7日(日)



【連載】チコちゃんに叱られる! 電車の音は「ガタンゴトン」か?/外国語では?

 昨日に続いて12月5日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。この日は、
  1. なぜ大人になると苦い物が好きになる?
  2. なぜ電車の音は「ガタンゴトン」?
  3. 泥仕合ってなに?
  4. 【ひだまりの縁側で…】しかるとおこるはどっちがやさしいイメージ?
という4つの話題が取り上げられた。本日はこのうちの2.について考察する。

 2.の「電車の音」とは、電車や気動車、貨物列車が線路の上を走る時の音であり、しばしば擬声語として「ガタンゴトン」と表現される。三省堂国語辞典第七版では、
がたんごとん:重量のあるものが短い間隔(カンカク)で連続的にぶつかる音。
「貨物列車が━と走っていく」
という語釈・用例が掲げられている。もっとも放送では「電車の音は「ガタンゴトン」じゃない「ガタンガタン」だ」が正解であると説明された。要するに、2つの連続音は同じ音であり、音響学的には「ガタン」のあとに「ゴトン」という別の音が続いているわけではないという話。音響分析のスペシャリスト、鈴木創さん(日本音響研究所)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。なお電車の音に関しては2018年6月29日初回放送の中で、

電車に乗っていると眠くなるのはなぜ?

という疑問が取り上げられたことがあった。

  1. 電車の音が「ガタンゴトン」というように聞こえているのは錯覚。
  2. 「ガタンゴトン」はレールとレールの間の隙間が原因で発生する。隙間は、温度が上昇してレールが伸びた時に、レールが歪んだり割れたりする危険を防いでいる。
  3. 一般的な電車は1車両に台車が2つ、車輪が8つある。同じ構造・重さの車輪がレールに接触するので「ガタンガタン」というように同じ音が2回ずつ生じるはず。
  4. 「ガタンゴトン」の波形を画像化すると、「ガタン」も「ゴトン」も殆ど同じ波形になっていることが分かる。
    • 「ガタン」と「ゴトン」の波形を入れ替えて音声化してみると「ガタンゴトン」と「ゴトンガタン」はいずれも「ガタンゴトン」というように聞こえた。
  5. 「ガタンゴトン」というように聞こえるのはゲシュタルト心理学の『近接の法則』が働いているため。
    • 『近接の法則』とは「近いものをひとまとめに処理する」という仕組み。
    • 例えば6つの同じ大きさの円が2つずつ近接していると、「6つの円」ではなく「2つずつの円が3つのグループになっている」と認識される。
    • 『近接の法則』とは距離が近いものを関連づけて処理してしまうという心理学の法則。
    • 電車の「ガタンゴトン」は1両目の後ろの台車と2両目の台車が近い位置にあるため、2つの音を1つのグループとして認識。
    • 「ガタンガタン」あるいは「ゴトンゴトン」という2つの音のうち最初の音のほうが刺激的で新鮮であるため強い音「ガタン」と聞こえる。1番目の音に慣れてしまうことで2番目の音は弱い音として錯覚され「ゴトン」と聞こえる。
    • ゆっくり走る電車では2つの音が離れているので「ガタン、ガタン」と聞こえる可能性がある。例えばゆっくり走る世田谷線は「近接の法則」が働かず「ガタン、ガタン」というように実際の音のまま認識される。
    • このように、電車の音は走る速度、レールの状態、車両の重さによってさまざま。放送では、
      • 重い貨物列車:普通の旅客車両より短いため、カタ、カタ、カタ、カタというように聞こえる【←長谷川の聞き取り】。
      • 名鉄築港線と名古屋臨海鉄道が90°で交差する「ダイヤモンドクロッシング」:線路が重なり合い隙間の数が多いため音の数が多く、ダダダダ、あるいはゴトゴトゴトのように聞こえる【←長谷川の聞き取り】
      • 【補足説明】電車の音が「ガタンゴトン」と聞こえる音の間隔には個体差があり、速い電車でも「ガタンガタン」と聞こえる人もいる。また乗車している場合は位置で音の響き方や大きさが異なる。


 ここからは私の感想・考察を述べる。
 まず、私自身の聞こえ方であるが、子どもの頃に記憶に残っている電車の音としては中央線の立川―高尾のあたりで聞こえていた「タタタタタッ、タタタタタッ」という音であった。東京―立川間ではそのようには聞こえなかった。また今でもそのような聞こえ方をするのかどうかは分からない。
 一般的な電車の音は私の場合は「ガタンゴトン」ではなく「ガタガタ、ガタガタ」もしくは「ゴトゴト、ゴトゴト」というように聞こえる。
 放送では「「ガタンゴトン」は1両目の後ろの台車と2両目の台車が近い位置にあるため、2つの音を1つのグループとして認識」されることによって錯覚されるというが、であるならば、少なくとも3両以上が連結されていないの「ガタンゴトン」の繰り返しとしては聞こえないのではないか? すなわち2両編成であれば、聞こえる音は、

●1両目の前の台車→1両目の後ろの台車と2両目の前の台車→2両目の後ろの台車
となるため、「ガタ、ガタンゴトン、ガタ」というように聞こえるはずだ。放送で紹介された世田谷線は世田谷区若林で生まれ育った私にとってはお馴染みの電車であるが、現在は2両編成で運行しているはずだ。となると、ゆっくり走っても速く走っても「ガタンゴトン」の繰り返しとしては聞こえないように思う。

いっぽう私にとって現在いちばん身近に利用しているのは津山線であるが、津山線は時間帯により1両~4両となっている。上記の「1両目の後ろの台車と2両目の前の台車」がもたらす「ガタンゴトン」は1両編成では原理的に発生せず、2両編成では「ガタ、ガタンゴトン、ガタ」となり、3両編成以上で初めて「ガタンゴトン」の連続音になると予想される。朝の時間帯であれば1~4両それぞれが1回以上運転されるので機会があれば比較したいと思う。
追記]12月7日の午後、津山線の線路沿いで観察したところ、2両編成が通過する時の音は「ゴトッ、ゴットン、ゴトッ」に近かった。

 最後に、英語、中国語、フランス語、ロシア語で「ガタンゴトン」に相当する擬音語がどのように表されているかChatGPTに尋ねてみた。いただいた回答は以下の通り。




各言語で「電車が線路の上を走る音(レール継ぎ目を通過する時のリズム音)」をどう擬音語で表すかをまとめます。
※日本語の「ガタンゴトン」に相当する表現です。

## ■ 英語(English)
  • **clackety-clack**
  • **clickety-clack**
  • **click-clack**
  • **clatter**
最も有名なのは **clackety-clack / clickety-clack** で、まさに日本語の「ガタンゴトン」と同じく、レールの継ぎ目を走るときの規則的な音を指します。

## ■ 中国語(Mandarin Chinese)
中国語では、日本語ほど擬音語が定型化していませんが、代表的なものは次の通りです。
  • **哐当哐当(kuāngdāng kuāngdāng)**
  • **嘎达嘎达(gādá gādá)**
特に「**哐当哐当**」が、日本語の「ガタンゴトン」に最も近いニュアンスで使われます。

## ■ フランス語(Français)
フランス語も擬音語が少なめですが、鉄道の走行音としてよく使われるのは:
  • **tchou-tchou**(主に汽車の走行全般・子ども向け)
  • **clac-clac**
  • **tac-tac**

実際のレール継ぎ目音に近いのは **clac-clac / tac-tac** です。

## ■ ロシア語(Русский)
ロシア語では、擬音語が比較的豊かで、レールの継ぎ目を走る音は:
  • **ту-дух ту-дух(tu-DUKH tu-DUKH)**
  • * **тук-тук(tuk-tuk)**
  • **тук-та-тук-та(tuk-ta-tuk-ta)**

特に **ту-дух ту-дух** が列車走行音としてよく知られています。

## ◆ まとめ
| 言語 | 擬音語(代表) | 備考 |
| ----- | ------------------------------- | --------------- |
| 英語 | clackety-clack / clickety-clack | 最も一般的な鉄道音 |
| 中国語 | 哐当哐当 / 嘎达嘎达 | 日本語のガタンゴトンに最も近い |
| フランス語 | clac-clac / tac-tac | 実音に近い擬音語 |
| ロシア語 | ту-дух ту-дух / тук-тук | ロシア語の定番の列車音 |




放送で説明されたように、日本語の「ガタンゴトン」は、1番目の音が「ガタン」、2番目の音が「ゴトン」というように1番目と2番目が違う音として聞こえているように表記されている。これに対して上掲のいずれの言語でも同じ音が2回連続しているように表記されている。なぜ日本語だけが「ガタン」と「ゴトン」という違う音として表記されているのだろうか?
このことについてChatGPTに質問したところ以下のような回答をいただいた。今回の放送内容とは異なる見解も一部含まれているようだ。




 日本語だけが「ガタン」「ゴトン」と**2つの異なる音として表記するのには、言語的・聴覚的・文化的な複数の理由**が重なっています。
結論から言うと、**日本語は擬音語の構造が特に豊かで、音の変化やリズムを細かく描き分ける文化があるため**です。

以下、分かりやすく解説します。

  1. 日本語の擬音語は「音の変化」を表すのが得意

    日本語の擬音語は世界でも特異的に豊富で、**2つの音が少し違う場合、その差異を積極的に擬音に反映**させます。

    ### 例
    • ドキ **ドキ**(一定の鼓動)
    • ドキ **ッ**(一拍強い鼓動)
    • ザーザー vs ゴーゴー(雨の強さ)
    • チリン **チリン** vs チャリン **チャリン**(鈴の音の違い)

    日本語話者は、「1回目の衝撃音」と「2回目の連続する衝撃音」が微妙に違うとき、それを別のモーラ(拍)で書き分ける傾向があります。

    **ガタン → 衝撃が強めで硬い
    ゴトン → 次の衝撃が少し丸い・軽い**

    という感覚的な違いをそのまま文字化しているのです。
  2. レールの継ぎ目音が “同じ音が2回” ではない
    実際の鉄道音を物理的に見ると、**車輪が継ぎ目を通過する時、前輪と後輪の音は同じではありません。**
    • 車輪の位置(前・後)
    • 車両の構造
    • 車軸の重さ配分
    • レールのわずかな変位

    これらにより、**1回目(前輪)と2回目(後輪)で音の高さ・響き・強さが微妙に違います。**
    日本語はその差を「ガタン(強)」「ゴトン(弱)」と描き分けたと考えられます。
    多くの外国語では、**「規則的な連続音」全体を1種類の擬音で表す文化のため、差を表記に反映しない**のです。

  3. 英語・中国語・フランス語・ロシア語は「拍のリズム」を重視
    日本語のような“音の質の違い”ではなく、**規則的な往復運動を 1 音 × 反復で表す**ことが多いです。

    ### 例
    • 英語:clackety-clack(同じ音の反復が基本)
    • 中国語:哐当哐当(前後でほぼ同じ)
    • ロシア語:ту-дух ту-дух(繰り返し)
    • フランス語:clac-clac(繰り返し構造)

    どれも「タン・タン」「ダン・ダン」といった**等拍性(同じ音の繰り返し)**で表現する傾向があります。

  4. 日本語の「擬音語文化」の強さ
    日本語はマンガ・アニメの発展もあり、擬音語を**非常に繊細に、意味を込めて作る文化**があります。
    • 擬音が名詞化・副詞化しやすい
    • 音の色・質感を細かく表現
    • 1文字単位の母音・子音の違いに意味を感じる

    こうした文化が、“ガタン”と“ゴトン”を別々の音にした大きな要因です。
  5. >■ まとめ
    なぜ日本語だけが「ガタン」「ゴトン」と違う音として表記するのか?
    • 日本語の擬音語は音の質の違いを描き分ける文化がある
    • 電車の継ぎ目音は実際に前輪・後輪で少し音が違う
    • 他言語は規則的なリズム(同音反復)を重視する傾向がある
    • 日本語はマンガなどで擬音語を繊細に発達させてきた

    ——これらが重なって、日本語だけが「ガタン」「ゴトン」と表記するのです。




 以上から総合的に考察すると、まず、

電車の音が「ガタンゴトン」というように聞こえているのは錯覚

という解説には若干の疑義がある。確かに物理的には同一の音、大きさの刺激を異なるように知覚するのはすべて錯覚であると定義すれば錯覚の一種であるが、そうなると外界の物理的刺激をどう知覚するのかはすべて錯覚ということになってしまう。そうなると色の混色も錯覚【波長の異なる2種類の光が同時に提示されると特定の色に見える】、暗い景色がモノクロに見えるのも錯覚【実際は桿体への切り替え】、ウェーバーの法則も錯覚ということになってしまう。

 いずれにせよ、言語表現としては、電車が走る時の音というのは物理的な音ではなく、我々が聞こえている音のことである。2人が音の聞こえ方について会話をする際には、あくまで2人にとってどう聞こえているのかが重要となる。そういう意味では1番目を「ガタン」、2番目を「ゴトン」というように異なる擬音語で表すことは理に適っている。外国人も1番目と2番目は異なる音として聞こえているが、上掲のChatGPTの解説にあるように、別の理由で同じ擬音語として表現しているだけであり、外国人は錯覚していないというわけではない。


 次回に続く。