じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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8月19日の日記で、私自身が中高時代に使っていた旺文社『国語総合辞典』に言及した。

 写真はその後、書棚の奧から見つかった実物であり昭和30年発行、昭和39年重版 650円となっている。なお旺文社のサイトでは1960年に『旺文社国語辞典』という学習辞典が刊行されたと記されている。書名は1文字異なるが外装は同一のように見える。

 この辞書は横書きであり英単語も載っている。中学の頃、国語の先生から「これは国語辞典ではない」と注意を受けたこともあるが、反抗期だったこともありそのまま使い続けた。
 ちなみにこの辞書は、中学の入学祝いに父親からのプレゼントとして貰ったものであった。父親は公立高校の国語の教諭をしていたが、なぜ『三国』ではなくこの辞書を買ってくれたのか意図は不明。

2025年08月27日(水)




【小さな話題】ケンボー先生と山田先生〜辞書に人生を捧げた二人の男〜(5)主食と副食

 8月22日の続き。8月16日にNHK-BSで再放送された表記の番組のメモと感想。

 放送では続いて、戦後間もない1952年に出版された『明国』改訂版(二版)の話題が取り上げられた。
 この二版の中で取り入れられた新たな言葉の1つに『主食』があった。

●主食 栄養の中心になるたべもの。米・むぎなどの穀物をさす。

見坊豪紀によれば、日本人で『主食』を知らない人は一人もいないはずなのに、これまで辞書には掲載されていなかったという(見坊豪紀『ことば さまざまな出会い』、改変あり)。またこの言葉は山田忠雄の助言で取り入れたものであるという。

 ここで脇道にそれるが、『主食』はネットで閲覧可能な辞書では以下のような語釈になっていた。
  • 『三国』第七版:食事の中心となる、ごはん・パンなど。主食物。(⇔副食)
  • 『新明解』第七版;食事のうちで、主としてカロリーのもとになる食べ物。米・麦などの穀物とか食パンなどを指す。⇔副食
  • 『大辞泉』:日常の食事で、主となる食べ物。米飯・パンなど。⇔副食。
  • 『日本国語大辞典』精選版:日常の食事の中心になる食物。日本では米、麦、パン、麺(めん)類などをさす。⇔副食。
  • 【岩波国語辞典』第七版:飯・パンなど、食事の中心となるもの。 ⇔副食


 上掲の語釈のなかで最も「明解」であるのはやはり『新明解』ではないかと思う。『新明解』では
  1. 主としてカロリーのもとになる
  2. 麦などの穀物とか食パンなど
というように、1.では何の役にたつ食べ物なのか?が明記されている。いっぽうそれ以外の『三国』、『大辞泉』、『日本語大辞典』、『岩波国語辞典』では「食事の中心となる」、「主となる」という語釈になっているが、中心とか主となると言われても、いちばんたくさん食べている物なのか、それだけ食べていれば安心なのか、などはサッパリ分からない。

 ところで私は小学生の頃から「主食⇔副食」という分類には疑問を持っていた。確かに「主食」が不足すると元気が出ないが、「主食」しか摂らないと栄養のバランスが崩れて数々の生活習慣病になる。また、日本料理ではいっぱんに、

@先付け →A吸い物 →B向付け(お造り) →C焼き物 →D煮物 →E揚げ物 →F蒸し物・酢の物 →Gご飯・香の物・止め椀.

という順序で料理が提供されるが、このうち@〜Fは副食に相当するものであり、最後のGのみが主食に相当しているものの殆ど付け足しになっている。ま、西洋料理でもそうだが、名物料理というのはたいがい副食を味わう料理であるように思われる。
 なお厚労省のサイトでは「主食⇔副食」という二分ではなく、「主食・主菜・副菜」の三分割になっていた。別サイトによれば、
  • 「主菜」とは、たんぱく質の供給源となる肉、魚、卵、大豆および大豆製品などを主材料とする料理です。
  • 「副菜」はビタミン、ミネラル、食物繊維の供給源となる野菜、いも、豆類(大豆を除く)、きのこ、海藻な どを主材料とする料理をいいます。
いずれにせよ、「主>副」という優先順位は想定されていないようだ。

 次回に続く。