じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 8月21日、楽天版じぶん更新日記へのトータルアクセス数が444万4444を超えた。まずは日頃のご支援に感謝申し上げます。
 ところでこの楽天版へのアクセス数だが、毎日の新しい日記へのアクセス数はせいぜい10〜40前後であってごく内輪で閲覧されているだけにとどまっている。しかし、日記のエントリー数は合計で7314件(8月21日現在)にものぼることから、検索などにより過去日記にアクセスした数も加算されることから、1日あたりのアクセス総数は単純平均で608アクセス、最近では毎日、900〜1200アクセス前後になることが多い。本日の時点で累計アクセスが多いコンテンツは以下の通り。
  1. 12184 2015年7月1日グラジオラスを倒れないように咲かせる方法
  2. 8711 2020年6月1日#ビヨウヤナギ、 #キンシバイ、 #ヒペリクム・カリキヌム、 #ヒドコート ( #半田山植物園 )
  3. 4867 2017年7月8日岡大構内のキノコ(2)赤いキノコ、フェアリーリングなど
  4. 3333 2019年6月30日ルドベキアの帯化、ネジバナ、ハナハマセンブリほか(岡大構内、散歩道)
  5. 2792 2018年10月30日40年前の北海道・トドワラ
これ以外にも、以下のコンテンツはかなりのアクセスがあったはずだが本日のデータからは数値が確認できなかった。後日アクセス数を追記する予定。

 なお、日々のアクセス数の推移(左の画像)が示すように、普段は毎日900〜1200アクセスのところ、突発的に4000とか5000を超えるアクセスに跳ね上がることがある。しかし、特定の日付のコンテンツが「炎上」したり、超人気サイトからリンクがあったり、というような痕跡は見当たらない。おそらくどこかのロボット(検索エンジン)がデータ更新のため定期的にアクセスしているためではないかと思われる。もっともすべての日付に1回ずつアクセスした場合の合計数は上記の7314に一致するはずなので、4000〜5000にとどまる理由はよく分からない。

2025年08月22日(金)




【小さな話題】ケンボー先生と山田先生〜辞書に人生を捧げた二人の男〜(4)『明解』から『明国』へ/『明解』と『明快』の違い/英語での区別

 昨日に続いて、8月16日にNHK-BSで再放送された表記の番組のメモと感想。

 元の話題に戻るが、放送では『新明解』と『三国』の辞書編纂の方針を比較したあと、2つの辞書が同じ出版社(三省堂)から刊行されるようになった経緯が以下のように紹介された【要約・改変あり】。
  1. もともとは戦前に出版された一冊の国語辞書『明国(明解国語辞典)』を起源としていた。
  2. 『明国』を編纂したのは、後に『三国』の生みの親となる見坊豪紀(けんぼう ひでとし)と、後に『新明解』の生みの親となる山田忠雄であった。東大を卒業したばかりで良き友でもありライバルでもあった2人は、ある時点を境に決別しそれぞれの道を歩み始めた。ちなみに『新明解 第四版』の『時点』には「一月九日の時点では、その事実は判明していなかった」という用例があり、実はこの1月9日は2人にとって重要な意味を持っていた【『新明解 第七版では「△午後三時(三月末)の時点ではまだつぼみであったが、△夜九時(四月初め)の時点では開花していた」「現時点で望み得る最善の方策」「この先いつの時点で再開できるのか不明だ」という用例に置き換わっていた。】
  3. 1939年、東京にある三省堂の面接室で、東大を卒業したばかりの見坊豪紀(当時24歳)の面接が行われた。この面接は新しい国語辞書の編纂者としてふさわしいかどうかを確かめるものであった。
    • 見坊を推薦したのは金田一京助。
    • 見坊は詰め襟に角帽のスタイルで、辞書の編集方針として
      • 「引きやすい」:歴史的仮名遣いをやめ、発音どおりにする表音式
      • 「分かりやすい」:百科項目の説明は、動物図鑑や植物図鑑の丸写しはしない。
      • 「現代的」:新規項目については外来語を積極的に取り入れる。
      という3点を軸に2時間以上の演説をぶった。
    • 見坊は同級生で23歳だった山田忠雄に辞書作りの手伝いを頼んだ。原稿は見坊が一人で書き上げ山田が校閲した。山田は実質的には「見坊の助手(山田談)」の役割を担っていた。ちなみに『新明解』の「上(うえ)」の用例の中には、

      ●[三]〔形式名詞的に〕(一)…に関することを表わす。「形の上では共著になっているが」

      という辞書編纂の実態を示唆するような謎めいた用例が含まれており第七版でも残ったままになっている。

 こうして1943年に『明国』が登場。その特徴は、
  • 表音式:見出し語は歴史的仮名遣いをやめ発音通りに。
  • 外来語:戦争中にもかかわらず豊富に掲載。

これらは見坊が面接の際に示した方針通りであった。
 しかし、この辞書の刊行によって、見坊と山田の名が世に知れ渡ることは無かった。辞書の背中には「文学博士 金田一京助編」と刻まれており2人の名前はどこにもなかった。また金田一京助の息子の金田一春彦によれば、京助先生は一行も原稿は書いておらず、実態は名義貸しであった。

 放送では言及されていないが『新明解 第七版』の『共著』の語釈には、

共著:二人以上の共同の著述。〔大家が名前を貸して新進に著述をさせる場合にも言う〕

という記述があることに気づいた。この場合の「大家」が金田一京助を示唆していることは間違いない。

 もう1つ『明国』のタイトルになった『明解』の語釈を比較してみると、
  • 【新明解 第七版】(一)(簡潔で)要領を得た解釈
  • 【三国 第七版】(名)はっきりしていて、よくわかる解釈(カイシャク)。〔書名によく使う〕
となっていた。ついでに『明快』のほうは、
  • 【新明解 第七版】】[一] −クワイ【明快】−な−に
    その人の考え方や その時の説明の仕方に、あいまいさが無く筋が一貫していると思われる様子だ。
  • 【三国 第七版】筋が通って、話の内容がはっきりしているようす

 となっている。またChatGPTに『明解』と『明快』の違いを誤用例を含めて説明してもらったところ以下のような回答をいただいた。

いい質問です。「明解」と「明快」は似ているため混同されがちですが、実際には使い分けがあります。誤用されやすい例も含めて整理しますね。

## ◆ 基本的な意味の違い
  • **明解(めいかい)**
    → 「説明・解説が明確で分かりやすいこと」 (対象は **説明・解答・文章** など知的な内容に使う)
  • **明快(めいかい)**
    → 「考えや表現がはっきりしていて小気味よく分かること」
    (対象は **態度・話しぶり・考え方** など感覚的に“すっきりした”印象に使う)


## ◆ 正しい用例
  • * 明解
    * 「この数学の解説は明解だ」
    * 「明解な答えを示す」
  • * 明快
    * 「彼の演説は明快だ」
    * 「明快な論理展開」
    * 「明快な性格」


## ◆ 誤用例(混同しやすい)
  • * ? 「彼の解説は明快だ」
     → 「解説」は知的な内容なので「明解」が正しい。
     ? 「彼の解説は明解だ」
  • * ? 「彼の性格は明解だ」
     → 性格の印象に「明解」は使えない。
     ? 「彼の性格は明快だ」
---
## ◆ニュアンスの違いまとめ
  • **明解**=“頭で理解できるほど明確”
  • **明快**=“心地よいほどハッキリしている”


?? つまり「明解」は知的理解の分かりやすさ、「明快」は感覚的なすっきり感を表す、と覚えると誤用を防げます。


 以上の要点をまとめてもらったところ以下のようになった。
  • | 用語 | 意味・ニュアンス | 使用上のポイント |
  • | ---------- | ------------------------------------------ | -------------------------- |
  • | **明快** | 筋道がはっきりしていて気持ちよく分かりやすい様子 | 会話・説明・議論など一般的な表現に広く使われる |
  • | **明解** | (簡潔な)解釈や説明が行われ、一切迷いなく理解できる | 辞書・注釈・論理的理解などに限定的に使われる傾向あり |
  • | **使い方の違い** | 「?に説明する」なら「明快に説明する」が文法的に自然。“明解に説明する”は少し不自然 | 用例の自然さも考慮して使い分けをするとよい |


**誤用例:**
  • * 「彼の解説は明快だ」→「解説」は**知的内容**なので → **正しくは「明解だ」**
  • * 「彼の性格は明解だ」→「性格」は**印象的な表現** → **正しくは「明快だ」**


 さらに、英語ではどのように区別されているのか(あるいは、されていないのか)について尋ねたところ、以下のような回答をいただいた。


いいところに着目されました ??
「明解」と「明快」は日本語ではニュアンスで分けますが、英語に直すとしばしば同じ **“clear”** に収まってしまい、訳し分けが難しいです。

##◆◆ 英語での対応語

### 明解(知的に分かりやすい)
  • **clear** explanation(明解な説明)
  • **lucid** explanation(筋が通って明快、知的に理解しやすい)
  • **explicit** answer(あいまいさのない答え)
  • **well-explained**(よく説明されている)

◆対象は **説明・解釈・回答**。
ニュアンス的には「頭で理解できるほど分かりやすい」。

例:
* The professor gave a **lucid explanation** of the theory. (教授はその理論を明解に説明した)

### 明快(印象としてすっきりしている)
  • **clear-cut** argument(明快な論理)
  • **straightforward** speech(率直で分かりやすい演説)
  • **crisp** style(きびきびして小気味よい文体)
  • **transparent** attitude(態度に曖昧さがない)

◆対象は **考え方・態度・論理・性格**。
ニュアンス的には「心地よくすっきりと分かる」。

例:
* She gave a **straightforward answer** without hesitation. (彼女はためらいなく明快な答えをした)

##◆◆ 違いを一言でまとめると
  • **明解=lucid / clear explanation**
     → 頭で理解できる“分かりやすさ”
  • **明快=clear-cut / straightforward**
     → 印象としての“すっきり感”
---
## ◆◆ 注意点
* 英語では両方とも **clear** で済ませられることが多いですが、ニュアンスを大事にするなら:
  • 学術的・知的な文脈 → **lucid / explicit**
  • 会話や性格・態度の文脈 → **straightforward / clear-cut / crisp**

つまり、日本語では「明解・明快」と漢字で分けますが、英語では一語で済む場合が多く、文脈に応じて「どんな種類のclearなのか」を補って表現するのがコツです。



 次回に続く。