じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 2月2日初回放送の『チコちゃんに叱られる!』で交通信号機のヨコ型、タテ型の話題が取り上げられた。番組スタッフが20の国・地域からの外国人に尋ねたところ、
  • タテ型:オーストラリア、オランダ、イタリア、ドイツ、ロシア、イギリス、コロンビア、ブラジル、中国、トルコ、リトアニア、ニカラグア、フィリピン、アメリカ、サウジアラビア、スペイン
  • ヨコ型:韓国、タイ、インド、台湾
となっていて8割がタテ型と回答したという。
 上記では中国はタテ型となっていたが、私の旅行経験から言えば、中国では地域によってはヨコ型のほうが多いようにも思われる。このほかモンゴルでもヨコ型を見かけたことがあった。但しA〜Cは2000年8月に撮影したものであり今ではタテ型に置き換わっている可能性もある。
  • A:カシュガル
  • B:ウルムチ。このヨコ型信号はなぜか、左から青、黄、赤となっていた。理由は不明。
  • C:北京・天安門広場
  • D:シガツェ
  • E:モンゴル・ウランバートル

 ↓の記事参照。



2024年2月3日(土)




【連載】チコちゃんに叱られる! 「フィギュアスケートのアクセル」「信号機のヨコ型、タテ型」

 2月2日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。この回は、
  1. フィギュアスケートのアクセルってなに?
  2. 日本の信号機にヨコ型が多いのはなぜ?
  3. おばあちゃんになるとフラダンスを踊り始めるのはなぜ?
という3つの話題が取り上げられた。本日はこのうちの1.と2.について考察する。

 まず1.の正解は「アクセルさん」という人名由来であると説明された。アクセル・パウルゼン(Axel Paulsen、ノルウェー出身、1855-1938)は1882年、フィギュアスケート初の国際大会に出場し1回転半のジャンプを披露し3位に入賞した。ちなみに、同選手はスピードスケートでは見事に優勝している。
 国際スケート連盟認定するジャンプは難易度の低い順から、『トーループ』、『サルコウ』、『ループ』、『フリップ』、『ルッツ』、『アクセル』の6種類があり、『アクセル』は最も基礎点・難易度が高いとされている。3回転ジャンプの基礎点は難易度の低いほうから4.2〜5.9点となっているのに対して『アクセル』は8点が与えられる。
 放送によると、右利きの場合、シングルアクセルは前向きに左向きに踏み切り回転する。フィギュアスケートのブーツの刃(ブレード)はジャンプを飛びやすくするためにギザギザになっている。このため前向きに着地するとギザギザが氷に引っかかり転びやすくなることから、必ず後ろ向きに着地する【結果的に1回転半となる】。いっぽう『アクセル』以外のジャンプでは後ろ向きに踏み切り、後ろ向きに着地するので結果的に1回転となる。
 なるほど、『アクセル』で、なぜ「○○回転」ではなく「○○回転半」というように「半」がつくのか、その理由がやっと分かった。もっとも、後ろ向きに回転している以上、1回転目で着地しても、1.1回転目で着地しても、後ろ向きに着地することには変わらないように思われる。おそらく、ここでいう「前向き」とか「後ろ向き」というのは、スケートの進行方向に対する向きであり、1回転は360°、半回転は180°というように進行方向と着地方向が揃っているために転びにくい。それ以外の中途半端な角度の斜めの着地では安定性が損なわれるためではないかと思われる。

 フィギュアスケートのジャンプの歴史は以下の通り。
  1. 1948年、アクセル誕生から66年後にディック・バトンがダブルアクセルを成功させ金メダルを獲得。
  2. トリプルアクセルは1978年、ヴァーン・テイラーが成功させた。
  3. 女子初のトリプルアクセルは1988年、伊藤みどりが成功させ日本人初の世界フィギュアスケート殿堂入りを果たした。
  4. 2022年、イリア・マリニンが世界初の4回転アクセルを成功させた。
 このほか、
  1. サルコウはウルリッヒ・サルコウ。サルコウは1901年〜1911年に2度も5連覇を果たし、引退後も国際スケート連盟の会長をつとめた。サルコウの見分け方として、踏み切る直前に足がハの字になるという特徴がある。
  2. ルッツはアロイス・ルッツ(1898-1918)。オーストリア出身。サルコウの特徴は右回りに助走し左回りに回転すること。
  3. 、イナバウアーも人の名前が由来。なおイナバウワーについては、2006年2月27日の日記で考察したことがあった。





 次の2.については、放送では、「路面電車のせい」が正解であると説明された。
 放送によれば、ヨコ型が普及した経緯は以下の通り。
  1. 日本に初めて信号機が設置されたのは東京・日比谷の交差点。当時の信号機は交差点の中央に置くタイプでアメリカ製のタテ型。
  2. 当時日本の都市交通の要は路面電車で、手信号の旗振り要員の職員の人件費が負担となっていた。そこで市電の多い京都市では、四条河原町と四条烏丸の交差点にアメリカ製のタテ型信号機を設置した。
  3. しかし、路面電車の電線の高さは約5メートルあり、信号機はそれより低い3〜4メートルの高さに立てるしかなかった。しかし縦型の信号機では路面電車が通るとドライバーや歩行者からは見えなくなってしまう。そこで電線がない道路脇にヨコ型の信号機が設置された。
  4. ヨコ型信号機は赤色が道路の中央に張り出すため見やすくなるメリットもあった。
  5. 昭和30年ごろ全国的に信号機が普及開始し、そのさい、見えやすいという理由から、日本の信号機はヨコ型が主流となった。
  6. いっぽう、欧米では日本のような見やすさ重視よりもコストや景観が重視されている。ヨコ型は柱からヨコに張り出すアームが必要でありその分コストがかかり、また景観が損ねられる。
 なお、日本でも雪の多い地域ではタテ型が主流となる。番組スタッフの調査によれば、タテ型が多い地域は、福井県以北の日本海側の富山県、新潟県、山形県、秋田県、さらに青森県日本海側、北海道全域などとなっていた。但し石川県ではヨコ型の信号機が多い。これは、石川県はそれほど積雪が多くなく、最初にヨコ型をつけたものがそのまま普及しているためであると説明された。

 ここからは私の感想・考察になるが、タテ型の信号機に興味を持ったのは学部1回生の冬に旅行した北海道であり、当時日本海縦貫で走っていた『きたぐに』の車窓からタテ型かヨコ型かを観察したことがあった。放送でも取り上げられていた通りで、北に向かう車窓から見る限りでは、石川県から富山県に入るあたりから確かにタテ型信号ばかりになることを確認したことがあった。
 海外旅行先でもタテ型、ヨコ型の違いには気づいていたが、わざわざ写真を撮るほどではないので、現時点では、たまたま写っていた信号機からどちらの向きなのかを推測するほかはない。↑の画像にもあるように、中国では少なくとも地域によってヨコ型が結構多かったように記憶している。但し、中国では車が右側通行になるため、日本とは逆順の「赤、黄、青」の横並びになっている。
 欧米の信号機がタテ型であるのは、別段、景観重視というわけでもないように思われる。また路面電車が走っている都市でもタテ型になっていることからみて、見やすさが影響しているとも考えにくい。結局のところ、もともとタテ型で普及し、その後もあえてヨコ型に変更すべき特段の事情が発生しなかったことからタテ型のまま慣習化しているのではないかと推測される。
 日本海側のタテ型信号も同様であり、今の時代であれば十分な強度のアームをつけたり融雪装置をつけることで、ヨコ型であるために雪の重みでつぶれるという自体は避けられるはずだ。しかしわざわざタテからヨコに変更するような特段の事情もないため、タテ型のまま存続しているのであろう。なお、日本海側では、雪の重みのほか、着雪で信号機が見えにくくなる可能性もある。その場合、タテ型とヨコ型のどちらが影響を受けやすいのかも調べる必要があるが、おそらく大差無いということになっているのだろう。

 次回に続く。