じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



12月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る

クリックで全体表示。




 帰省先では認知症予防のため囲碁ソフトで遊ぶことが多い。もっとも定石を学んだことのない私のレベルでは、置き碁4子のハンディをつけてもらってもなかなか勝てない(レベル「最上級」、定石ファイルと布石ファイルを使用)。 そんななか、初めて62目差で圧勝することができた【私が黒番】。4子置きでは2022〜2023年末年始以来の圧勝であった。
 なおこの囲碁ソフトはノートパソコンにインストールしているので自宅岡山でも遊ぶことができるのだが、岡山では他にすることが多く、遊んだことは殆ど無い。



2023年12月20日(水)




【連載】笑わない数学(9)1+2+3+4+…=−1/12(3)総和法/ゼータ関数の解析接続/カシミール効果/『超弦理論』の10次元説


 昨日に続いて、1月29日にNHK総合で初回放送された、『笑わない数学 シーズン2』:

1+2+3+4+…=−1/12

についてのメモと感想。

 昨日の終わりのところで、19世紀に入ると数学者たちは、

●発散する無限級数は、和を考えることに意味はない。

と考えるようになったと述べた。

 しかし1890年代には、この考えに挑戦状をたたきつけた数学者が現れた。
 その一人がエルネスト・チャザロ(1859-1906)であり、チェザロ総和法という特殊な計算法を編み出した。ウィキペディアによればこの総和法は、
解析学におけるチェザロ総和法(チェザロそうわほう、英語: Cesaro summation)とは無限級数に「和」と呼ばれる値を結びつける総和法の一種である。無限級数が通常の意味で収束して値 A を持つならば、その級数はチェザロの意味でも総和可能であり、同じ A をチェザロ和として持つ。チェザロ和の重要性は、収束しない級数のなかにもチェザロ和が矛盾なく定義できるものがありうるという点にある。ただし、たとえば無限大に収束する正項級数などはいかなる場合も有限の値の和を持つことはない。
と説明されている。放送でも紹介されていたように、この計算法を用いると、グランディ級数の和は1/2であることを導き出すことができる。

 さらに、『アーベル総和法』や『ボレル総和法』と呼ばれる別のテクニックを使って、
  • 1−2+3−4+・・・=1/4
  • 1−2+4−8+・・・=1/3
といった18世紀の数学者と同じ結論が導かれることが分かった。
 そしてインドの魔術師と呼ばれるシュリニヴァーサ・ラマヌジャン(1887-1920)が考案した『ラマヌジャン総和法』によって、

●1+2+3+4+・・・=−1/12

が導き出されたのであった。この無限級数は解析学のテクニックを駆使することで、

1+2+3+4+・・・=−1/12+∫tdt 【tは0から∞まで】

というように、『コア』と呼ばれる「−1/12」という部分と、発散する部分とに数学的に分離できるという事実が背景にある。このうち発散する部分は『コア』よりある意味では重要ではないとされた。
 さらにラマヌジャンと同じ結論は、『ゼータ関数正規化法』という別の方法を使っても導かれることが分かった。ここでゼータ関数とは、

●1+1/2+1/3+1/4+・・・=ζ(s) 【但し成立するのはsの実部が1より大きい場合】

のことであるが、範囲外のs=−1を代入すると左辺は、「1+2+3+4+・・・」となり、また右辺はζ(−1)=−1/12が求められるという。

 以上について尾形さんは、「数学者の気持ちは分かるがちょっと理屈をこねすぎなんじゃないか? 何かいいことがあるの? 数学者の単なる自己満足なんじゃないの?」と疑問を投げかけた。これに対しては物理学の世界で、
  1. 1948年、オランダのヘンドリック・カシミール(1909-2000)が発表した論文:小さな隙間を隔てて置かれた金属板の間に働く奇妙な引力(『カシミール効果』)が働く。もしそれが正しいならばその力の大きさは「1+2+3+4+・・・=−1/12」に比例すると予想した。但しこれは1次元カシミール効果の場合であり、実際の3次元では「13+23+33+43+・・・=1/120」に比例。
  2. この奇妙な引力については1997年、スティーブ・ラモロー博士の実験によってその存在が証明された。
  3. 「1+2+3+4+・・・=−1/12」という数式を基礎にした『超弦理論』が登場:もしこの数式を用いることができるならばこの世界は10次元でできていると予言できる。



 ここからは私の感想・考察になるが、番組の終わりのあたりで出てきた『解析接続』や『ゼータ関数』は、高校理系卒レベルの私には殆ど理解できない内容であった。
 番組の公式サイトの中で期間限定で公開されているノートによれば、
  • ゼータ関数は、
    ζ(χ)=Πpχ/(pχ−1) 【Πの下にp】
    というように定義されているが、以下のようにも書くことができる。
    1+1/2+1/3+1/4+・・・=ζ(s) 【但し成立するのはsの実部が1より大きい場合】
  • 上記の左辺は変数sの実部が1より大きくないと発散してしまって意味を持たないが、右辺のζ(s)は1を除くすべてのsで意味を持たせることができる。そこにはリーマンが19世紀半ばに編み出した『ゼータ関数の「解析接続」という考えが存在している。
  • 「解析接続」とは、ざっくり言えば、以下のようなことである。
    ●左辺は、sが1より大きくないと意味を持たないけど、この左辺を、1を除くすべてのsについて意味を持つように、だんだんとsの範囲を(複素数の範囲で)拡大していく(接続していく)数学的な手法がある・・
  • このことは、ゼータ関数ζ(s)は、sが1より大きい場所では左辺の形で書けて、それ以外の場所、つまりsが1より小さい場所でも意味を持つようにできる「別の書き方」がある、ということ。
  • 「解析接続」は「複素関数論」の分野で登場するとても重要な考え方で、是非とも「複素関数論」を勉強していただけると良い。
  • オイラーは『解析接続』の考え方を先取りしたものだとされる。オイラーの式:
    1+χ+χ2+χ3+・・・=1/(1−χ)
    では、左辺を「解析接続」した形が右辺になる。
 続いて登場した『総和法』についてもよく分からなかった。ウィキペディアでも解説されているが、YouTubeの関連動画でも学ぶことができそうだ。

 『カシミール効果』についての『ノート』に補足説明があった。それによれば、『カシミール効果』は理論物理学では『プラナの和公式』を利用して説明される。この式を1次元カシミール効果にあてはめると、

●1+2+3+4+・・・=−1/12+∫tdt 【0〜∞まで】

となり、単位等を別にしてざっくり言えば左辺は金属板の間の空間エネルギー、積分の部分は金属板の外の空間エネルギーにあたる。よってその差である−/12が金属板に働く引力に比例する値になる【但し三次元の場合は、1/120に比例】このあたりは何となく理解できた。

 いちばん最後に出てきた『超弦理論』の10次元説についても補足説明があり、
  1. 超弦理論では、光子の質量は、
     2+(空間の次元―1)×3×(1+2+3+4+・・・)
    に比例することになる。
  2. ここで、1+2+3+4+・・・を−1/12に置き換えれば、この式は、
    2―(空間の次元―1)×1/4
  3. ここで光子の質量が0だということは分かっているので、この式がゼロになるということは、空間の次元=9となり、時間と合わせると、この宇宙は10次元の時空でできている、ということになる。
但し、1+2+3+4+・・・の積分の部分(発散する部分)を無視して置き換えてしまってよいのかどうかについては、番組スタッフでもよく分からないらしい【より物理学に即した説明があるらしい】。なお『10次元』で思い出されるのは、「10次元においては規則的な並べ方よりも密度が高くなる奇妙な並べ方が存在する(既知の格子充填よりも密度が大きい非格子充填が存在する)」という性質である。ひょっとして

●この世界は10次元の時空でできており、格子充填よりも密度が大きい非格子充填が存在することで時空に歪みが生じて、物質が誕生した。

なんていうことになると面白い。