じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



02月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る

 近隣で見かけた学生賃貸専用の不動産ショップ。「情熱と行動で あなたの声を届けます!!」というのは、学生賃貸とはあまり関係なさそうにも見える。これまで何度か、複数の地方議員の選挙事務所として使われていた名残であるが、選挙用キャッチコピーとしては、あまりにも陳腐で、具体的な政策が何も見えてこないという印象を受ける。そのぶん、不動産屋のキャッチコピーに転用できれば新鮮かもしれない。

2021年2月19日(金)



【小さな話題】「大人になっても続く? 早生まれの不利」

 昨日の日記

 2月18日の17時台に放送されたNHK「シブ5時」で表記の話題を取り上げていた。
 そもそも早生まれの人たちは、どういう点で不利になっているのだろうか。備忘録を兼ねて、紹介されたデータを以下にメモしておく。
  1. 早生まれ(1/1〜4/1生まれ)の所得は、4〜6月生まれと比べて3.9%低い【東京大学大学院・川口大司教授の調査による】
  2. プロ野球選手の生まれ月は、4〜6月が34%、7〜9月が30%、10〜12月が21%なのに対して、1〜3月生まれは15%でいちばん低い。【2018年 東京農業大学・勝亦陽一准教授による】
    ※サッカー、バスケットボール、また海外のスポーツ選手でも同じ傾向が見られる。
  3. 小学4年生の学力(算数)は、4月生まれから翌年3月生まれを横軸にすると右肩下がりに低くなっている。
    ※中学3年の数学の成績になると差はだいぶ小さくなるが、それでもなお早生まれの生徒のほうが成績が低い傾向は残る。
  4. 運動能力の生まれ月による格差は、男子は17歳ごろまで差がある【東京農業大学・勝亦陽一准教授による】
    ※女子は中学生くらいまで。
  5. 早生まれは、非認知能力(「目標に向かって頑張る力」、「人とうまく関わる力」、「感情のコントロール力」)も相対的に低い。非認知能力の高い子どものほうが、大人になって、社会的・経済的に成功する可能性が高い。
    ※「早生まれの子どもの方が非認知能力が低く、年齢が上がっても差が縮まらない」とする論文が2020年7月に発表された。【東京大学大学院の山口慎太郎教授らによる。小学4年から中学3年までを対象とした調査】
    ※山口教授によれば、この一因は大人の関わり方の問題にある。先生は成績の良い子どもに注目しがちであり、結果的に、相対的に成績の低い早生まれの子どもたちは注目されなくなり、子どもたちの側からは「先生から認められている」と感じられなくなる。
    ※それゆえ、子どもの成長は、同一学年内で比較するのではなく、過去の本人、あるいは1学年下の子どもと比較するというように、比較対象を変える視点が必要。
    ※学級委員とかスポーツのキャプテンなどは、出来る子に特定して任せるのではなく、早生まれの子どもたちにもリーダーシップ体験をさせて、非認知能力をアップする必要がある。
    ※海外の小学校では、希望すれば小学校入学を1年間遅らせることができる。先進国で導入していないのは日本くらいのもの。導入により学力差を小さくする効果があることが分かっている。
  6. 【早生まれの人が希望を持てるデータとして】プロ野球選手の中でタイトルを獲得した人の割合は、4〜6月生まれが8%、7〜9月生まれが8%、10〜12月生まれが13%、1月〜3月生まれが14%となっていて、早生まれの選手の割合が一番大きい。【東京農業大学・勝亦陽一准教授による】
  7. 【早生まれの人が希望を持てるデータとして】オリンピックの金メダリスト、ノーベル賞受賞者、芥川賞・直木賞受賞者の作家は、早生まれの割合が一番多い。
  8. 【早生まれの人が希望を持てるデータとして】ノーベル賞受賞者については早生まれが43%で一番多い。こうした理由について、東京農業大学・勝亦陽一准教授は、「トップを極めるには自分を掘り下げて分析する力が重要。早生まれは早い段階で不利な状況にあったからこそ、なぜできない?できるようになるには?と考える力を伸ばせた可能性がある」と考察している。
 以上に挙げたデータのうち、1.から5.については、多数のデータに基づいているのであれば、早生まれは不利という傾向のあることは認めざるを得ないところがある。6.〜8.については、データが少なく、もともとはランダムに分布している各種データの中から早生まれの実数が多い項目だけをつまみ食いして抜き出した可能性があり精査が必要であろう。【血液型性格判断のエセ科学で、いろいろな職種やタイトル保持者などのなかから血液型別の比率にたまたま偏りが出たものだけを取り出して後付けの解釈をするのと同じ可能性あり】。但し、ノーベル賞受賞者で早生まれが多いという傾向については、受賞者はもともと平均レベルより早い習得能力があり、早生まれであったことでそのぶん早い時期から教育を受ける機会に恵まれたことが卓越した能力を伸ばす土台になっていたという可能性はあるかもしれない。

 さて、上掲の1.〜5.の傾向であるが、殆どは、日々成長発達している子どもを1年単位で離散的に切り分けて、同じ学年の子どもに同じレベルの教育を行うという制度上の問題が影響しているように思われる。この問題については、昨年5月頃、新型コロナウイルスによる学校の休校の長期化を受けて入学の時期などを9月に変更するという議論が起こったときにも意見を述べたことがあった【2020年5月2日の日記ほか参照。このほか、日付別の出生数ランキングについての考察が、こちらにあり。】今回の番組では「海外の小学校では、希望すれば小学校入学を1年間遅らせることができる」という改善策が出たが、せっかちな世の中にあっては、「1年遅らせる」というのは、浪人させるというのと同じで、親としてはなかなか踏み切れないように思う【但し、あくまで私の主観だが、顕著な研究業績を上げている研究者の中には、大学受験時に浪人したり、学部や大学院時代に留年している人の割合が、現役で合格しストレートで大学院5年を終了した人よりも多いような印象がある。】
 私自身は、とにかく、集団画一の教育はできるだけ少なめにして、可能な限り各自の習得段階に応じた個別対応の教育を進めることが第一、しかしながら、上掲にもあるように、共同作業を行うような場合は、誰もが平等にリーダーシップ体験ができるように配慮する教育も併せて行うことが重要ではないかと考えている。