じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 近隣で見かけた麦畑と鯉のぼり。岡山では、自宅から車で10分ほど郊外に出ると、まだまだこういう田園風景が見られる。

2020年5月02日(土)



【小さな話題】9月入学論議と、早生まれ遅生まれ

 各種報道によれば、新型コロナウイルスによる学校の休校の長期化を受けて入学の時期などを9月に変更するよう求める声が出ていることについて、政府は変更した場合の具体的な影響や課題の洗い出しを進めているという。
 政府は、仮に「9月入学」に変更した場合には社会全体に影響が及ぶと予想されることから、まずは論点整理から始める方針で、各省庁に対し変更に伴う影響や課題を調べるよう指示した。具体的には、
  • 就職時期の後ろ倒しによる企業への影響
  • 国や自治体の会計年度とずれが生じること
  • 司法試験や各種の資格試験の時期の見直し
などが検討されており、GW明けには結果がまとめられることになるという【出典はこちら】。

 いっぽう、同じ日のニュース【出典はこちら】によると、全国の保護者などでつくる日本PTA全国協議会は文部科学省に対して、9月入学は慎重に検討するよう求める要望書を提出した。この中では、突然の9月入学の議論の高まりは子どもたちに不安を与え、保護者にとっても戸惑いが生じているとしたうえで、今は、子どもたちの心と体のケアや、感染防止対策をして、学校を再開させるため、予算と時間を費やすことが必要だと指摘。さらに、始業の時期を9月に遅らせることで学校の負担や家庭の経済的な影響が増すことなどが強く懸念されるとして、慎重に検討すべきとしているという。

 9月入学とは少しずれるが、岡大では何年か前から、秋季入学が実施されている。10月1日からの秋季入学ができるのはグローバル・ディスカバリー・プログラムなど一部のコースに限られている。また3月下旬ばかりでなく、9月の下旬にも卒業式(学位記等授与式)が行われており、4月入学者で単位不足のため3月末に卒業できなかった学生も、前期(1学期と2学期)のうちに単位を揃え、卒論を提出すれば4年半で卒業することができる仕組になっている(※ こちら参照。但し、私が定年退職の頃にいろいろと制度が変わっているので、現状についての正確な情報は分からない)。

 9月入学か10月入学かという多少のずれはあるが、秋季入学という制度自体は、10年ほど前にも東大で検討されており、当時はそのまま全国の大学が秋入学に全面移行を目ざすのではないかという雰囲気が感じられたが、結局見送りになった。当時、どういう障壁のために見送りになったのか、この際もういちど検討する必要があるだろう。




 さて、私自身にとっての素朴な疑問は、4月入学が9月入学に変更された場合、いったい、何月何日から何月何日までに生まれた子どもが、小学校や中学・高校に入学するのかということである。

 日本の小学校の場合は、
義務教育制度によって、住民基本台帳に基づき、満6歳の誕生日以後の最初の4月1日に(「以後」なので4月1日生まれの者も含まれる。)、半ば自動的に入学(就学)する形を取ることがほとんどである。
とされている。つまり今年の場合は、2013年の4月2日から2014年の4月1日までに生まれた子どもが、原則として2020年4月1日に小学校に入学することになっているはずだ。【4月1日生まれが1つ上の学年になる理由は2019年3月24日から3月27日までの日記で考察】

 今回、もし9月入学(9月1日入学?)が決まった場合でも、上記の年齢区分はそのままで、2013年の4月2日から2014年の4月1日までに生まれた子どもがそっくりそのまま9月1日に入学することになるとは思う。しかし、4月1日とか4月2日といった日付はあくまで4月1日入学を前提とした上での年齢区分である。いずれは、9月1日までに生まれた子どもが1つ上の学年、9月2日以降生まれの子どもがその下の次の学年になるのが道理というものである。といっても、いままで同じ学年であった子どもたちが、ある年から、9月1日を境にして突然、別々の学年に分けられてしまうというのは人道的にも問題があり、おそらく永久にできないだろう。

 ま、年齢だけで一律に入学を定める場合は、どの日付で分けたにしても、早生まれのメリット、デメリット(あるいは、遅生まれのメリット、デメリット)という問題は残る。但し、入学時の年齢(月数)は、
  • 現行制度の場合:満6歳0カ月(4月1日生まれ)〜満6歳11カ月(4月2日生まれ)
  • そっくりそのまま9月入学に移行した場合:満6歳6カ月(4月1日生まれ)〜満7歳5カ月(4月2日生まれ)
となって、今なら6歳のうちに小学校入学できた子どもの約半数が7歳を過ぎて小学校に入学というように、義務教育の開始が半年も遅れてしまうという問題がある。6〜7歳と言えば発達成長まっさかりの時期であり、教育内容も現行より進んだ内容にしなければなるまい。
 同じことは幼稚園の入園年齢についても言えるし、従来小学校で教えていた一部を半年程度、幼稚園の教育に前倒しする必要があるようにも思える。

 とにかく、現行の初等教育のレベルが適正であるとするなら、9月入学は、満6歳0カ月(9月1日生まれ)〜満6歳11カ月(9月2日生まれ)を対象とすべきであるのだが、上にも述べたように、いままで同じ学年に所属した子どもたちを、ある年から突然別々の学年に分けてしまうというのは到底できそうにもない。

 より進歩的な方法は、学年そのものを撤廃し、それぞれの子どもの到達レベルに合わせて教育を行うこと、学年別ではなく1〜6年の縦割りのクラスをつくりその中で共同作業を学ぶこと、といった抜本的な改革にあると思うのだが、これまた難しい。但し、昨今のIT化の流れの中では、到達レベルに合わせて個別の学習機会を増やすことは現実に実現しているとも言える。