じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 山陽自動車道を通って妻の実家のある北九州に帰省した。写真は途中で休憩した宮島SA(下り線)。山陽道や中国道では最も景色が良いSAの1つと言える。鳥居に掲げられている額には「交通安全」と記されている。


2018年12月27日(木)



【小さな話題】

関係反応と関係フレームをどう説明するか(9)機能と操作

 12月25日の続き。

 1つ前の12月24日の日記のところで、『ACT第二版』(51〜52頁)から
古めかしいけれどもより正確な行動科学の言葉で表現するなら「刺激(文脈)がないところに反応(行動)は存在しない」あるいは「反応の伴わない刺激はない」ということである。仮にベルが鳴らされてもそれが誰の耳にも入らなければ,たとえデシベル計がどれほど大きな数値を示していたとしてもそこに心理学的な意味での刺激は存在しないのである。
という部分を引用した。こうした「刺激観」は、個人の行動に影響を与える環境世界が、物理的な意味での環境世界と大きく異なっていることを示唆している。

 我々が住む環境を物理的な意味で捉えるならば、まずは太陽などから莫大な数の宇宙線を考慮に入れる必要がある。まさ昨今ではWi-Fiやら5Gやら、さまざまな人工的な電波が体内を通過している。これらは、通常は行動に影響を与えないので、心理学的な意味での刺激とは言えない。但し、私自身もしばしば影響されているが、旅行先で無料のWi-Fiを利用できるかどうかは大きな関心時である。電波そのものを感じることはできないが、スマホやタブレットを使用する段階で、Wi-Fi利用可能のエリア内にあるかどうかは行動に影響を与えているという点で立派な心理学的な刺激ということができる。

 心理学の実験では、実験者が操作する刺激と、参加者(被験者)が利用したり影響を受けたりする刺激は必ずしも同一でない点に留意する必要がある。私がよく例に挙げていたのは、漢数字の「十」と「三」の弁別である。参加者あるいは動物の被験体が「十」と「三」を弁別できるようになったからといって、漢数字全体を見ているかどうかは保証されない。文字の下の部分だけを見ると「十」は「|」、「三」は「−」のように見えるが、被験体は実際には「|」と「−」を弁別していたのかもしれないのである。

 また、色の区別の実験で、赤、青、黄を刺激として呈示したとする。しかし、被験体は色ではなく、モノクロの明暗の違いで弁別していたのかもしれない(実際、哺乳類の多くは色自体を見分けることができない。) 

 強化スケジュールの実験も同様。実験者が、指数関数や三角関数を組み合わせた数式で強化確率が変動するようなスケジュールを設定したとする。数式がどんなに複雑であっても、被験体はそれなりに反応の仕方を変えるかもしれない。実験者は確かに操作をしているのだが、そこで設定されたパラメターのすべてが被験体の行動に影響を与えているという保証は全く無いのである。

 もちろん、少なくとも研究の出発点においては、何を操作するのかは再現可能な形で記述しておく必要がある。しかし、操作段階のパラメターがそっくりそのまま独立変数になるわけではない。そういう意味では、実験者本位で設定した独立変数と、被験体の行動を記述する従属変数を関数関係で表そうとしても限界が出てくる。あくまで数式にこだわるとしても、(操作的に定義される)独立変数と従属変数の相互作用を示す項を含めなければ、行動の法則を記述することはできないだろう。

 不定期ながら次回に続く。