じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 マスカットユニオン(北福利施設)の入口で今年も七夕短冊イベントが行われている。毎年のことだが、ユニークな願い事もチラホラ。昨年の様子は、こちら


2017年7月5日(水)


【思ったこと】
170705(水)ボーム『行動主義を理解する』(45)目的と強化(7)

 7月04日に続いて、

ボーム(著)森山哲美(訳)(2016).『行動主義を理解する―行動・文化・進化―』 二瓶社.

の話題。

 「目的」の3つの意味のうち、2番目の「原因としての目的」は、「目的的行動」、「目的的機械」、「結果による選択」、「創造性」という小見出しのもとに、かなり詳しく論じられている。

 まず「目的的行動」というのは、特定の結果に向けてあらゆる手段を尽くすというような行動のセットを意味する場合に使用される。例としては、キーをさしこんでも錠前がうまく開かない時に、キーのまわし方(動かす速さ、回す回数など)をいろいろに変えてみるような場合が挙げられている。この場合、個々の行動は個別に強化されているわけではない。また、ある行動でうまくいかない場合には別のやり方を試すというように次々と切り替えが行われる。また、それらの行動セットは、最終的な強化が起こった時、つまり目標が達成された時に完了する。

 こうした「目的的行動」は、過去に一度も体験したことのないケースでも起こりうる。そのような現象は強化履歴では説明できないようにも見えるが、実際は、過去に、類似の行動が強化されている。何かを探す時の一連の行動は、過去に別のモノを探した時の諸行動の般化と考えられる。強盗に脅かされてサイフを差し出す行動は、過去に「脅しに従う」という行動が強化されていた(=嫌子消失による強化)ことの般化と考えられる。

 定められた目標が達成できないにもかかわらず継続される「目的的行動」というのもある。例としては「世界から貧困をなくすこと」、「クジラを守ること」が挙げられていた。この種の活動は、それを推進する団体、共同体などの中で社会的に強化されている可能性がある。本書には書かれていないが、最終結果は達成不可能であっても、進捗状況を点検し、達成への接近が確認できればそれ自体も強化になるはずである。あるいは、ルール支配行動として行われている場合、ルールに一致する行動をとること自体も強化因になるであろう。

 続く「目的的機械」では「目的的行動を説明するのに、内的な目的を考えても無駄である。」と論じられている。例としてはまず、暖房機器のサーモスタットが挙げられていた。暖房機のサーモスタットは、指定温度以上に上がるとスイッチを切り、指定温度以下になるとスイッチを入れることで温度調節をしてくれる。そのふるまいはあたかも、温度調節という目的にかなった目的的行動であるかのように見えるが、実際には、設定した温度に対応してスイッチの開閉をしているだけである。目的的行動をとっているのは、サーモスタット自体ではなく、サーモスタットの温度設定をしている人間の側にあると言ってよいだろう。


 次回に続く。