じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



05月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る

 東西通りのサツキ第3弾。新緑の緑の帯とのコントラストが美しい。

2016年05月23日(月)


【思ったこと】
160523(月)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(28)「考える」と臨床(5)認知療法の有効性をめぐる比較研究

 5月20日の続き。

 原書53頁(翻訳書75頁)以下では、認知療法の有効性をめぐるいくつかの比較研究が紹介されている。認知的モデルに基づいた治療は一部の症状において好ましい結果を示しているが(例えば社交恐怖)、逆に、抑うつの状態が重篤であるような場合には、認知的モデルよりも行動に基づく介入モデルの方が、よりポジティブな効果を示している。全体としては、
...【T】here is little empirical support for the role of cognitive change as causal in the symptomatic improvements achieved in CBT" (Longmore & Worrel, 2007).
認知行動療法によって到達される症状改善において,認知的変化が原因として果たす役割に関しては,実証的な支持はほとんどない。
というのが妥当な結論であるようだ。

 なお、いくつかの技法の有効性については、2014年度の日本心理学会シンポでも議論されたことがある。このうち、2014年9月24日の日記に記した通り、

Lambert, M. (1992) Psychotherapy Outcome Research: Implications for Integrative and Eclectic Therapists. In Handbook of Psychotherapy Integration, (Eds) Goldfried, M. & Norcross, J., Basic Books, pp. 94-129.

という論文では、その療法自体の技法・モデルによる効果ばかりでなく、人間関係や、プラシーボ効果も含まれていると主張されているが、ここで言及されている確率はかなりいい加減なものだという批判もある【こちらに詳細な指摘あり】。

このほか、「この疾患はこういうメカニズムよって起こっているので、この部分をこのように変えれば治すことができる」といった「疾患特異的」な説明がないと精神科臨床では評価されないのではないか、という厳しい指摘もあった。

 いずれにしても、ヘルスケアのコスト抑制という現実的な制約のもとでは、何が最良の療法であるかといおうよりも、一定の制約(経費、時間、回数)のもとで最善の計画を立てなければならない。仮に、毎日10時間、クライエントに寄り添うといったセラピーに顕著な効果があると検証されたとしても、現実的にそれを採用することはできない。そんなことをしたら、クライエント1人のために専属のセラピスト1人を雇用する必要があり、さらにはその2人の生活を支えるだけの生産力、つまりその2人の食費や住居費を誰かが負担しなければ、社会として成り立っていかない【同じことは、高齢者の介護についても言える】。

 次回に続く。