じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 12月12日(水)早朝もよく晴れ、3日間連続で、東の空に出現した土星、金星、月、水星の共演を眺めることができた。月齢は28.0。なお、この日は、5時半頃、ぎょしゃ座から北極星方向に明るい流れ星が出現。ふたご座流星群(14日午前08時極大)の先駆けではないかと思われる。


12月11日(火)

【思ったこと】
_c1211(火)TEDで学ぶ心理学(24)Daniel Kahneman: The riddle of experience vs. memory.(5)相対比較としての幸福度

 昨日に続いて、

Daniel Kahneman (2010). The riddle of experience vs. memory.

の話題の5回目。

 プレゼンの最後の部分は、音声だけで聞き取ろうとすると分かりづらいが、要するに、我々は、どれだけ幸福か?という問いに対して直接的に答えることはできないというような趣旨であろうと思う。これに似た話題は、11月24日の日記でも取り上げたことがある。
...脳はいったい何なのか? 講演者によれば、「脳は相対的価値判断をする臓器」であるという。すなわち、以前に比べて今はどうか?(「今」より「あした」の準備をする)、人と比べて自分はどうか?といった相対比較をすることが、欲求を生み出し、新しい価値を創り出すことにつながるという。
 「記憶の自己」が幸福度を評価するというのは、要するに、過去と現在、あるいは、他の人たちと自分、というように、相対比較をすることである。カリフォルニアで生活することの幸福度を、絶対的に評価することはできないが、オハイオ州と比較して、より幸せに暮らせるかどうかは判断できる。もっとも、ここでなぜオハイオ州が引き合いに出されたのかはよく分からなかった。ウィキペディアによれば、オハイオ州は「通常の夏は暑く湿度が高い。冬は概して冷涼から寒冷である。」と記されており、確かに、カリフォルニアよりは住みにくそうであるが、オハイオ州にカーネマンが特別の関わりを持っているのかどうかはよく分からなかった。

 いずれにせよ、幸福度を絶対的に測ることは難しい。日本に置き換えてみても、例えば、昭和30年代と今の時代を客観的に比べてみると、昭和30年代のほうが不便なことが多く、公害問題もあって住みにくかったように見える。しかし、その当時の人たちにとっては、去年よりも今年、そして今年よりも来年というように常に右肩上がりの経済成長と科学技術の発展があったため、少なくとも「年々幸福になってきた」という実感はあったのではないかと思う。それに対して今の時代は、停滞、ひょっとすると右肩下がりの後退も懸念されており、「来年はもっと幸せになれる」という確信が持てないところはあるかもしれない。

 ということで、カーネマンのプレゼンについての連載はひとまず終了。「経験の自己」と「記憶の自己」をめぐる諸問題については、別途、取り上げていきたいと考えている。