じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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2012年版・岡山大学構内でお花見(39)故人と今を繋ぐガーベラ

 冬の寒さが厳しかったせいだろうか、岡大西門・西側花壇に露地植えのガーベラが例年より3週間程度遅れて開花した(写真上)。写真下は私が鉢花で購入したものであるが、花が終わった時点で某所にこっそり地植えした。来年春にはその場所で花を咲かせてくれるはずである。

 ガーベラの花と言えば、復興ソング「花は咲く」で被災地出身やゆかりの深い出演者が1本のガーベラを握り歌う姿が印象的であるが、たくさんの種類の花の中からなぜガーベラが選ばれたのかは不明である。花言葉が「希望」「常に前進」「辛抱強さ」「神秘」となっていて復興ソングの趣旨に合致するためなのか、いかにも花らしい形をしていて視覚的な最も高いと判断されたためなのか...。

 それはそれとして、ガーベラは丈夫な多年生のため、植えっぱなしにしておいても、毎年5月下旬には、同じように美しい花を咲かせてくれるため、亡くなられた方と今生きている方を繋ぐ花としてはピッタリであるようにも思う。じっさい、1999年2月1日の日記2009年5月23日の日記(楽天版)に記したように、私個人も赤いガーベラの花を見て、亡くなった祖母や母を想うことがある。

 ※岡山大学構内の花だよりのアルバム(追記更新型)をLife-Xに公開中です。随時追加していきますので、時たま覗いていただければ光栄です

6月19日(火)

【思ったこと】
_c0619(火)マイケル・サンデル5千人の白熱教室 (3)コンサートチケットや診察予約券はお金で買えるか?

 昨日の続き。講義では続いて、「何ならばお金で買えるか」に関して、「友情」「結婚式の祝辞」「コンサートのチケット」「医師の診察券」などを例に挙げながら受講者に問いかけた。【こちらの講義録参照】。

 結婚式等の祝辞を有料(149ドル)で作成してくれるというサービスに関して、サンデル先生は、親友が本当に感動的な祝辞をしてくれたのが実は有料サイトによる作文であると分かったら失望するだろうというようなことを言っておられた。もっとも、日本の文化では、結婚式でのスピーチはかなり形式的・儀式的なものになっており、スピーチの内容よりも、とにかくちゃんと声が出ること、「別れる」「切れる」「破れる」「割れる」といった忌み言葉を使わないように気配りをすることのほうが重要視されるように想われる。ま、親友代表がいかに感動的な祝辞を述べようとしても、表現力が苦手で語彙が少なかったりすると、うまく感動を伝えることができない。そういう際に、レトリック向上目当てで有料サイトを利用するのであればそんなに悪いことではないと思う。

 限られた枚数の「コンサートのチケット」や「医師の診察予約券」の入手をめぐってダフ屋が横行することの是非であるが【こちらの記録とその続編参照】、会場の投票では、コンサートのチケットに関しては肯定派が若干多く、医師の診察予約券については大多数が「間違っている」という判断を示していた。この違いはまさにサンデル先生の思うつぼであり、じっさい、この結果を受けてサンデル先生は、
ダフ屋行為、これはもちろん自由市場の活動と捉えることができるのですが、どういう場合ならば良くて、どういう場合は良くないのか。今の議論を聞いていると、状況によって変わるようですね。

 すなわち、どういう対象物に関してのダフ屋なのかで、許せるか許せないかが変わってくるということです。例えば自分のよい生活のために、あるいは人間の暮らしの中で娯楽といえるエンターテイメントならばダフ屋行為もよいのではないか、市場経済は構わないのではないかということだと思います。

 ところが大多数の人は、医師の予約券に関しては市場主義は適切ではないという意見でした。これは絶対的に必要なもの、人間の尊厳にかかわるものは、売り買いしてはいけないのではないか、という気持ちが強くなっているからだと思うんです。つまりわれわれは、お金で買えるもの、買えないものをどこで線引きをするのか。どういうものならば許されるのか。そういう議論が必要だということではないでしょうか。
こちらの記録参照】。
というように話を進めた。

 もちろん私自身も同意見であるが、ウィキペディアの当該項目にも記されているように、ダフ屋行為の中には迷惑防止条例で禁止されていたり暴力団の資金源になることもあるので、単に、「お金で買えるか買えないか」という議論だけでなく、ダフ屋の社会的背景や適法性も考慮して判断されなければならない。

 いずれにせよ、エンターテインメントのチケットであれば、ダフ屋は別として、その一部を競りにかけて売り出してもよいとは思う。

 いっぽうの医師の診察予約券であるが、これは、サンデル先生の個人体験で得られた情報であり、講義記録では、
私が中国に行ったときのことですが、北京の病院の外で長い行列ができていました。田舎から出てきた患者が、医師の診察を受けようとして行列を作っていたんです。その人たちは夜通しまたは数日間待たなければ、医師の診察を受けられないそうです。朝9時になると受付が始まり、医師の予約券が配られます。予約券自体はそれほど高価なものではありません。ただ、限られた数の予約券しかないんです。

 そしてダフ屋が気が付きました。これがビジネスになると。ホームレスなどを雇い、行列で待ってもらって、予約券を手に入れるんです。そしてその予約券を、レディー・ガガのコンサートチケットと同じように売りつける...
というように語られていた。こういうケースが現実にどの程度あるのか分からないが、これは「お金で買えるか買えないか」の議論以前の、医療体制に関わる問題であり、まずは、田舎にも適切な診療所を造って、順番待ちを解消することが先決であろう。行列ができなくなればダフ屋も当然居なくなる。

 ところで、「医師の診察予約券をダフ屋が売る行為」に関しては、多くの受講者が大多数が「間違っている」という判断を下した。しかし、現実社会では、医療保険の対象にならない高度の医療を受ける場合には莫大なお金を払わなければならない。また、全国病院ランキングで人気度の高い病院に入院したり、名医として知られている先生の診療を受けるためにはかなりのお金がかかるという話を聞いたことがある。あくまで孫引き情報であるが、ランキング最上位の某病院は、全て個室になっており、差額ベッド代は最低でも1泊3万5000円、1ヶ月で105万円というから、よほどの大金持ちでないと入院するわけにはいかない。

 もちろん、人気病院の中には、私のところからでも通院可能な倉敷中央病院のように、「本院は、平等主義にて治療本位とす すなわち、完全なる診療と懇切なる看護とにより進歩せる医術に浴せしむることを院是とす」(患者の皆さまは、差別されることなく平等に、当院で達成可能な最良の医療を受ける権利があります。)とうたっているところもあるが、一般的には、快適な個室病室を希望したり、高度な先進医療や名医の診察を希望する場合には、「医師の診察予約券をダフ屋が売る行為」とは比べものにならない額のお金が動いているように思う。

 このほか、「欧米や中国のお金持ちに日本の病院に来てもらって、高い料金をとって稼ごう」というメディカル・ツーリズムも、高度な検査・診療をお金で買って貰うという点では、同じような発想であるようにも思う。但し、「医師の診察予約券をダフ屋が売る行為」ではダフ屋が儲かっても庶民には何の利益にもならないが、メディカル・ツーリズムがさかんになれば、日本国内の病院はその分高度な医療機器を備える財力がつきそれによって日本国民のメリットにもなるし、どこぞの政治家が主張していたように、列強の要人が日本の病院で治療を受けるようになれば、日本との友好関係を保とうとする戦略的互恵関係構築にも貢献するかもしれない。

 次回に続く。