じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 2012年版・田んぼのパラレルワールド。

 水の張られた田んぼが鏡のようになり、後ろの風景が映ってパラレルワールドが出現しているように見えることを、「田んぼのパラレルワールド」と勝手に呼んでいる。また、毎年、この風景を掲載する時には、上下を逆さにしている。

過去の主な記録は、以下の通り。

6月9日(土)

【思ったこと】
_c0609(土)金星の太陽面通過と行動分析学(4)直接体験とは何か?

 昨日の続き。

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 今回の金星太陽面通過は、何を持って「直接体験」という実感が得られるのか、いろいろ考えを巡らすのに適した事例であった。とにかく、この現象を肉眼で直接観察することはできない。6月6日に掲載した理学部前の観察会では、反射望遠鏡を投影版に写したものと、液晶モニターに映し出された映像(右側に再掲)で観察が行われた。

 ところが、液晶モニターを見ていると、雲がかかって一瞬見えなくなる時があった。太陽がちゃんと照っているのに変だなあと思って画面をよく見ると、「(C)2012 国立天文台 岡山天体物理観察所」という文字がある(写真の右下参照)。要するに、液晶モニターの画像は、その場所にあった望遠鏡でとらえている生映像ではなくて、岡山天体物理観察所のインターネット中継を映し出しているのであった。その中継を観るだけなら、私の部屋のパソコンでもできる。わざわざ観察会会場まで足を運ばなくても、「直接体験度」はあまり変わらないようにも思える。

 もっとも、じっさいにその現象が起こっている現場に立って、太陽の光を浴びながらインターネット中継を眺めるというのは、自分の目で直接それを眺めているような臨場感があった。

 ちなみに、私自身は、こちらの写真にあるように、日食観察専用の双眼鏡(3倍)で、先日の金環日食(岡山では大規模部分日食)に引き続いて、この太陽面通過を観察した。倍率が低いので上記の液晶画面のように精細に捉えることはできなかったが、自分の手で太陽の方向に専用双眼鏡を向けて眺めるということには、かなりの能動感があった。

 行動分析学的に言えば、直接体験というのは
  1. 当該現象に関連する刺激を直接五感を通して感じること。
  2. 能動的なオペラント行動の結果として当該現象に接していること。
という条件が揃った時によりリアルに感じられるのではないかと思われる。ここで「能動的なオペラント行動」というのは、オペラント行動が発せられている状況において、いくつかの選択肢が用意されていること、また、それをしてもしなくてもよいという自己決定の機会が与えられていることを意味する。(←「行動すれば好子が出現するが、行動しなくても何も害を被らない」という好子出現の随伴性。「行動しないと何かを失う」という好子消失阻止の随伴性や、「行動しないと嫌子が出現する」という嫌子出現阻止の随伴性ではないという意味。)

 であるからして、天体望遠鏡から投影版に投影された太陽を眺める場合でも、自分で望遠鏡を操作した場合と、誰かが操作した結果を眺める場合では、直接体験度はいくぶん変わってくるはずである。

 なお、直接体験の中には、原爆体験とか震災体験のように、受身的に悲惨な状況を被ったという場合も含まれている。よって、オペラント行動が関与するという上記2.の条件は、必ずしも直接体験の必要条件にはなっていない。

 次回に続く。