じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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§§  12月9日の岡山は7.5ミリの雨を記録したが、夕刻から晴れ間が出て、満月の翌日の丸い月が見えていた。写真は12月10日早朝に撮影したもので、月齢は17.1。いつものヴィーナス像の池のほか、前日の雨による水たまりにも月が映っていた。

3月9日(金)

【思ったこと】
_c0309(金)「質的研究の来し方と未来:ナラティヴを巡って」&「人生心理学:イメージ画と語り」(17)やまだようこ氏の最終講義(6)「人生のイメージ地図」

 昨日の日記で取り上げた、「人生のイメージ地図」の8つの基本ストーリーについていくつか補足しておきたい。

 まず、「Climbing Story (山登り)」については、「人生を山に喩え、頂上に登って降りる過程に焦点をあてている。」と書いたが、当日のスライドでは、頂上は雲に覆われており(=「未来は雲にかくれて見えない」)、ところどころに大きな段差や落とし穴があるような階段を登っていくような絵が示されていた。この場合は、始まりも終わりもない図ということになる。
 次の「Expansion Story (拡張)」では過去を中心において、同心円状に現在、さらに未来に広がるような図が示されていた。描いた人によれば、人生というのはever-expandingということであるようだが、これが経験に基づいて描かれたものなのか、単に願望を示すものであるのかはよく聞き取れなかった。

 5番目の「Choice Story (選択)」は「人生には無限に近い分岐点があり、そのどれもが違う人生を歩み、最後は死につながる。トーナメント表の一番上が出発点(誕生)で、いろいろな分岐点をたどりながら一番下のどこかにたどり着いて死を迎えるような図。 」と書いたが、一番下の到達点である「死」は、どこでも同じではなく、長生きから早死まで右肩上がりのラインに沿っていろいろな「死」が想定されているようであった。このあたりの議論で、線形で一方向に前進する「Linear-Progressive Model」、「分ける」発想があり、分類や分岐を含んだ「Tree Model」、また、個人レベルでの「始まり」と「終わり」が明示された「Individual Model」などがあるこt、さらに、発達心理学の成長モデルとの関連などについて説明があった。

 そのあとのいくつかの話題を備忘録代わりにメモしておきたい。
  • 十字架に込められた「死しても『立つ』、高みをめざす」という、キリスト教文化におけるツリーモデル
  • 曼荼羅に描かれたサイクルモデル、涅槃に描かれたBeing Storyなどとの関連
  • 進化のモデルもツリーモデル
  • 境界をはっきり定義する、分けるという発想。二元分割。
  • 生成的ライフ・サイクルモデルは、「始まり」と「終わり」がなく、「生成」、「重ね」、「世代」、「むすぶ」、「価値転換」、「物語」などから構成される。


 昨日までのところで述べたが、「あなたの人生(過去・現在・未来)をイメージして地図に描いてください。説明をつけ加えてください。」という教示には、かなり誘導的な意味合いも含まれているし、人生体験の記述なのか、人生観の表明なのか、将来設計なのか、あるいは、時間の流れに焦点をあてるのか、外部との関係性に注目するのかで、同じ人でもいろいろな図が描けるようにも思えた。また、「描く」という技法が要求されるため、イメージとして持っていることではなく、どうしてもその人の描きやすい図になってしまうという問題もある。とはいえ、「何をめざすのか?」、「何をとらえるのか?」に関して示された御自身のお考え:

  • 人びとの心理学(フォーク・サイコロジー):ふつうの人々がふだん何げなくイメージしたり語っていること、どこにでも当たり前にある平凡なこと、それを目に見えるかたちにしてとらえる。
  • 生涯発達心理学の新しい見方やモデルの提案
は、十分に結実しつつあるように思えた。

 次回に続く。