じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 シリウスの下で輝く「岡山タワー」。11月12日以来2週間にわたってパープルカラーにライトアップされてきたが、この日をもって終了。写真は25日の21時55分頃、22時消灯の直前に撮影したものであるが、ちょうど真上にシリウスが光っていた。

ひろしまドリミネーションに比べると、かなり地味だが趣のある光景であった。

11月26日(土)

【思ったこと】
_b1126(土)日本質的心理学会第8回大会(1)人付き合いを好まない高齢者のQOLの理論化
日本質的心理学会第8回大会安田女子大学で開催された。

 岡山から広島までは新幹線で最短34分という近さにあるが、今回の会場は、広島駅から可部線、アストラムライン乗り換えが必要であり、プラス30分ほどの時間を要した。もっとも、東広島にある広島大や、路面電車で広島市内を移動するよりは楽であった。「アストラム」の「アス」は「安佐」に由来するのかと思っていたが、ネットで検索したところ「明日」から名付けられたとのことであった。

 大会初日は土曜日であったが、アストラムラインは、見渡したところでは男性は数人程度で、98%くらいが女子学生で占められており、間違って女性専用車両に乗ってしまったような雰囲気であった。それらの女子学生はみな、安田女子大の最寄り駅である「安東(やすひがし)」で下車して、大学に向かっていた。もっとも大半は、学会とは関係の無い目的で登校しておられた模様。

 この日の午前中は、ポスター発表のみであった。今回は、私自身も院生との連名発表があったので、在籍責任時間帯はその場にとどまっていた。テーマは、

人付き合いを好まない高齢者のQOLの理論化(1). ――人付き合いを好まない高 齢者は改善すべき存在か?

となっており、発表要旨は以下の通りとなっている。
人付き合いを好まない高齢者は、集団への参加を是とする場合においてネガティブに評価されることがある。本研究では、こうした視点に問題を投げかけ、その実際を探索することを調査目的とした。香川県内の医療施設に依頼して、施設入居者の中から“人付き合いを避ける傾向にある”高齢者 2 名(男性 78 歳、女性 73 歳)を紹介してもらい、この 2 名を対象に半構造化面接を行った。男性に関する施設側の評価は、「いつもひとりでテレビを見ていて、誰とも会話しない」であったが、男性は他者との会話は楽しいと感じていて、自ら会話に参加することにも抵抗感を持っていない。ただし、野球のテレビ中継が始まると、一人それに見入ってしまうことがある。女性に関しては「集団で何かをすることはせず、自室にいることが多い」という評価が付与されていたが、気の合う人とは積極的におしゃべりを楽しみ、社交的なところもあると自分では思っている。しかし、一方的にしゃべり続ける人と話をすると腹が立って心臓も痛み出すので、自室で休むことが多くなる。痛みさえなければおしゃべりに行きたいとは思っている。今回の調査結果から、人付き合いを好まないように見える事例の中には、自らの趣味の世界にふけることのほうが優先されている、あるいは身体的な制約によって人付き合いが叶わないに過ぎない場合があることが示唆された。なお、面接に際しては医療施設側の監督の下で行った。
 このWeb日記でもダイバージョナルセラピー関連の話題としてたびたび取り上げているように、高齢者福祉施設や病院では、入居者・入院者のQOL向上の一環として種々の集団イベント(セラピー)が計画され、かなりの成果を上げている。しかし、それはあくまで参加者の中での有効性であって、種々の理由で参加を拒否したり、そういう種類のイベントを好まない方もおられる。そうした「少数派」に焦点をあてるのがこの連番研究の目的である。

 なおポスターをご覧いただいた方々から、
  • 病院スタッフの中で「あの人は人付き合いを好まない」という偏見が生まれている可能性はないか
  • 病院スタッフによるQOL評価と、ご本人のQOLとは別ではないか
といった質問をいただいた。

 ちなみに、調査地の病院では近年、ダイバージョナルセラピーの視点から「A、P、I、E」を実践しておられるので、心配されたような偏見は無く、また、個性を尊重されているように思う。もっとも、人的資源が限られていることから、集団イベントに参加されない方に個別対応を行う時間はなかなかとれないという可能性もある。

次回に続く。