じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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§§ 初めての茨城大学。

日本質的心理学会第7回大会参加のため水戸市の茨城大学にやってきた。水戸市には、2005年7月に、常磐大学で日本行動分析学会の大会があった時に一度訪れたことがあった。あの時は羽田からのリムジンバス利用で、確か、大洗を経由していたように記憶しているが、今回は、東京駅八重洲口発の水戸北スマートIC経由であった。茨城大の入り口で停車するのでまことに便利。

大学構内では、イチョウのほか、トチノキや、低木の植栽(樹名未確認)の紅葉・黄葉が見事であった。岡山大構内よりも、芝地や植栽の管理が行き届いているという印象を受けた。

11月27日(土)

【思ったこと】
_a1127(土)日本質的心理学会第7回大会(1)「文化」と「発達」と質的心理学(1)

 表記の大会に参加するため水戸市の茨城大学までやってきた。

 質的心理学会の全国大会には、第1回大会第2回大会には参加しているが、その後は、日程の調整がつかなかったり遠方であったりしたためずっとご無沙汰しており、5年ぶりということになった。今回の大会開催中に、会員数が1000人を突破する見込みであり、1000人目の入会者には懇親会無料招待などの特典が与えられるとのアナウンスがあった。

 大会は2日間にわたって開催され、1日目の午前中がポスター発表、そのあと、1日目に5会場でシンポジウムが行われ、2日目には4会場で講習会、そのあと基調講演と弁当つきの総会、午後は5会場に分かれてそれぞれ2件ずつのシンポジウムが開催される日程となっている。同じ時間帯に5会場で併行開催となると会場によっては企画者以外は誰も来ないのではないかと若干気になったが、少なくとも1日目に私が参加した会場に限っては、後ろのほうまで着席者で埋まっており盛況であった。

 さて、今回の大会は、それぞれのテーマが関連しており、それらを総合的に考察する必要もあるので、個別のワークショップの開催順ではなく、印象に残ったテーマや話題提供から順不同でメモと感想を述べていくことにしたい。




 最初のテーマは「文化」と「発達」であり、これに関するワークショップは1日目の午後に開催された。

 「文化」については少し前に、

スキナー以後の心理学(20)文化と行動分析学

で私なりの考えを述べたばかりであり、現在、さらに、続編が初校段階となっている。

 その中でも引用したが、

石黒広昭・亀田達也(編)(2010). 文化と実践 心の本質的社会性を問う. 新曜社.

は、この方面の最近の動向を知る良書であると思う。但し、その本で議論されている内容は、おおむね量的研究に基づくものでああった。今回のワークショップでは、質的心理学から新たな視点が提供されることが期待された。

 印象に残った論点を備忘録がわりにメモしておくと、
  • これまでの量的心理学では、「文化」は集団主義か個人主義かというように二項対立的に扱われ、平均値の差で比較されることが多かった。
  • 「文化の受容」と言われることがあるが、もっと能動的な側面、acceptよりnegotiateという面を重視するべきである
  • 心理療法の文化特異性をどう考えるか。
  • 文化とは磁場のようなもの。有形無形のものを誘う。強弱がある。
  • 流動性、相互性
  • 「文化」は所与の概念ではなく、所定の集団の慣習や特性、共有・伝達されている個性などを把握したり表現したりする時に使っている説明概念。
  • 動的なものとしてとらえる。
 私自身は、スキナーが言う「進化した社会的環境によって維持されている特殊な随伴性」を踏襲する考えを持ち続けており、そこからは、今回の論点は
  • 「磁場」としての喩えは要するに行動随伴性のことであり、強弱は、随伴性の働きの強さに依存する、
  • 社会的な随伴性は、構成員の相互の強化、弱化の程度によって流動的である。
  • 文化の基本はオペラント行動であり当然、能動的。
というように捉えることができる。質的心理学にもいろいろな考えがあるので一概に言えないが、平均値の差ではなく個を尊重するという点では、文化心理学よりは行動分析学的な視点に近いようにも思われる。但し、行動随伴性の視点無しに議論が展開できるかどうか、疑問に思う面もある。

次回に続く。