じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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2010年版・岡山大学構内の紅葉(6)農学部収穫祭目前のカイノキ

 色づき始めた10月19日から2週間あまりが過ぎ、紅葉まっさかりとなっている。写真下は、農学部の建物内からの明かりで結果的にライトアップされている様子。

 なお、このカイノキの前では11月6日(土)・7日(日)に収穫祭が行われる。公式案内は、こちら

11月5日(金)

【思ったこと】
_a1105(金)日本心理学会第74回大会(41)ことばと社会:心理学的アプローチの可能性と問題点(10)心の理解とコミュニケーション 認知語用論と発達心理学(2)

 話題提供の後半では、子どもの発達に関する興味深い研究がいくつか紹介された。

 最初に取り上げられたのは、「サリーとアン課題」という通称で知られている標準的誤信念課題である。この課題についてはネット上でウィキペディアのほか各種の画像や解説が提供されている。ここでは柳瀬先生の論文から、該当部分を引用させていただく。
誤信念課題の一つは「サリーとアン課題」('Sally-Anne' task)である。被験者は、サリーとアンという登場人物を紹介される。サリーとアンは、共にボールをかごの中に入れるのだが、その後、サリーが部屋から出てしまった時に、案はボールを別の箱に入れてしまう。しばらくしてサリーが部屋に戻ってくるのだが、その時にサリーはどこでボールを見つけようとするか、というのがこの課題の問いである。もちろん成人は、「アンは『サリーはボールがまだかごの中にあるという誤った信念をもっている』ということを知っている」ということを理解しているので、サリーはかごの中にボールがあるだろうと思っており、まずかごの中を見ようとするということを正しく推測する。しかし、三、四歳以下の幼児は、「自分が知っていることは、他人も知っているはずだ」という「自己中心性」ゆえに、サリーもボールは別の箱の中にあると思っていると考える(「だって、ボールは箱の中にあるじゃない」といったことであろう)。だが、通常、幼児は、三、四歳を過ぎると、次第に、他人には自分と違う心があり、他人はその心でもって思考し・行動するということを学び始め、他人の思考や行動をだんだんと正しく読み取れるようになる(しかし成人とて、常に完璧に他人の心を読み取っているのではないことは周知のことである)。このように成人は、通常、心の理論に基づき、生活を送る。
また、こちらの英文の中に、分かりやすい画像があるので併せて参照されたい。

 さて、上掲の柳瀬先生の解説にもあったように、3〜4歳以下の幼児は、この課題を正しく答えることができない。また一般的には「「自分が知っていることは、他人も知っているはずだ」という「自己中心性」」により解釈されているようだ。

 今回の話題提供者はこれに対して、この課題では、子どもに対して、言葉で質問し言葉で答えてもらうという方法をとっていると指摘した。このような質問方法では、言語を介した複雑な推論が必要となるが、これは5歳以前の子どもには困難だと考えられているという。であるからして、3〜4歳以下の幼児が正解できないのは、「他者の心の理解」ができないからではなくて、それができていても言葉を通して説明することができないため正解を出せないという可能性があると論じた。

次回に続く。