じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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2010年版・岡山大学構内の紅葉(1) 農学部前のカイノキ

 今年もまた紅葉の季節がやってきた。第一弾は、農学部前のカイノキ(楷樹)。なお、昨年の紅葉シリーズは、2009年10月17日以降、2009年12月30日に至るまで31回にわたり連載した。

10月19日(火)

【思ったこと】
_a1019(火)日本心理学会第74回大会(26)自然環境と心理学(5)森林浴とその心理・生理的効果(2)

 昨日の日記の続き。

 昨日も述べたように「森林セラピー」、「森林セラピスト」、「セラピーロード」はいずれも「特定非営利活動法人 森林セラピーソサエティ」によって商標登録されている。これらの名前を冠した「森林セラピー基地」、「セラピーロード」は、これまでに全国で42カ所が認定されているという。ちなみに、その中で私が訪れたことがあるのは、新庄村・毛無山のみであった(2007年5月1日頃の楽天版に記載あり。)

 ではどういう形で、「森林セラピー基地」や「セラピーロード」の認定を受けることができるのか。話題提供のスライドによれば、その審査をするための実験グループは、約8人の研究者と約14人の市町村スタッフ(各調査地ごと)から構成され、生理測定班、心理測定班、物理測定班に分かれて調査・実験を行うとのことであった。またそのさいの12名の被験者(実験参加者)で、20台前半の男子学生が対象となっている。なお、その後の討論の中での回答によれば、現地での実験は、夏期の日中に行うこととし、できるだけ気象条件が同一のもとで比較されるとのことであった。

 さて、その12名の実験参加者は、前日に実験内容の説明を受け同意書にサインしたあと、2日間にわたり、「森林群」条件と「都市群」条件において、個体内比較を行う。順序の効果が出ないように、半数の6名は1日目に「森林群」、2日目に「都市群」、残りの6名は1日目に「都市群」、2日目に「森林群」というようにカウンターバランスされていた。

 1日の実験スケジュールは、歩行実験と座観実験それぞれ15分間のそれぞれの前後に、各種の生理・心理指標(HRV、,唾液中コルチゾール濃度、血圧、脈拍数、唾液中アミラーゼ活性、POMS、SD法)について測定が行われるというものであった。歩行実験の際に、都市群は街中、森林群は森林内を散策し、また、座観実験の際には、都市群は駅前など、森林群は森林内に椅子を置いてじっとすることが求められていた。

 このほか、森林浴と他の自然環境との比較、案内人散策と単独散策の比較、神経症傾向と森林環境の評価、ピクトグラムの効用、森林セラピーメニューの紹介など、短時間の中で数多くの情報が提供された。結論としては、
  • 森林浴には心理・生理的効果があることがすでに確認されている。
  • 現在は、どのような森林環境がより効果的か、個人特性と心理(生理)的効果の間にどのような関係があるかが検討されている。
  • 今後の課題として、個人の状態に応じたより効果的な森林浴を可能にすること。
などが挙げられた。

 以上の話題提供についての感想であるが、とにかく、森林に接しやすい環境を整え、多種多様なプログラムを提供していただくことはまことに結構なことであるとは思った。

 もっとも、上掲の実験参加者12人による「実験的検証」に関して言えば、
  • 実験に参加した男子学生がどのような基準で選ばれたのかは不明。もともと、森林が好きな人たちばかりではなかったのか。
  • 森林浴の心理・生理的効果については、すでに一般性のある証拠が得られているのであるから、森林セラピー基地の認定の際に、いちいち実験で確かめるまでもないような気もする。それよりも、それぞれのセラピー基地候補において、道路やトイレがちゃんと整備されているのか、高低差はどうか、どれだけ多様な植物・生物が見られるか、温度や湿度はどうか、マムシやクマなどの危険動物は居ないか、などなど、さまざまな項目について調査することのほうが有益ではないかと思う。要するにホテルやレストランにいくつ「★」をつけるかという格付け評価と同じように考えれば十分であろう。12人の男子学生をホテルに泊まらせてその前後の心理・生理指標の変化を測定したところで、必ずしもそのホテルの一般的な居心地の良さを検証したことにはならない。
  • 1回限りの森林浴ではなく、1年間に何度も何度も、持続的に森林浴を楽むことの効果、さらにはそういう行動を持続しやすくするための環境作りに取り組むことも大切。
というような疑問・感想を持たざるを得なかった。

次回に続く。