じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 11月2日は冬型の気圧配置となり、美しい夕日を眺めることができた。写真は、日没後に出現した短い飛行機雲。明るい彗星のように見える。


11月2日(火)

【思ったこと】
_a1102(火)日本心理学会第74回大会(39)ことばと社会:心理学的アプローチの可能性と問題点(8)日本語学習者の誤用と言語使用の文化的背景(5)

 今回の話題提供では、「事象連鎖」という認知的な視点と、Hall(1976)による文化心理学の視点に基づく説明が提案されていた。しかし、文化心理学的な説明が最も妥当かどうかは、意見の分かれるところであろう。

 昨日も述べたが、ペンを貸与するという想定場面では、どういう文脈で誰に対して申し出をするのかによって、表現形式は著しく異なってくる。高コンテクストとか低コンテクストというのは、想定場面における絶対条件ではない。おそらく、

山岸俊男(2010). 文化への制度アプローチ. [石黒広昭・亀田達也(編). 文化と実践 心の本質的社会性を問う. 第1章 新曜社. pp.15-62.]

が主張しているように、コンテクストの高低というのはけっきょくのところ、シナリオ情報量の差違であり、情報が曖昧な時にデフォルト戦略に違いが出ると考えたほうがよさそうだ。昨日も述べたが、いくら低コンテクストといえども、相手から先に「ペンが欲しい」というリクエストがあった時にわざわざ、「Do you need a pen? 」という要望質問や、「Do you want to use this?」という願望質問で聞き返す英語母語者はおるまい。またいくら高コンテクストといえども、相手が腹を空かせている状況のもとでは「何を食べたいですか?」と質問するはずだ。けっきょく、どの事象に焦点を当てるのかは、「文化」の違いではなく、デフォルト戦略の違いということになるのではないだろうか。


次回に続く。