じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 12月4日早朝の散歩時に見た月夜の大学構内。月齢は17.1。今月は12月3日の08時36分に赤緯が最北、また12月4日の23時18分に最近となるので、実質的に、最も北に偏った、最も大きな月を眺めたことになる。
 



12月3日(木)

【ちょっと思ったこと】

国谷裕子さんによるマイケル・ムーア監督へのロングインタビュー

 12月3日のNHKクローズアップ現代は、反骨の映画監督 マイケル・ムーアと題するロングインタビューであった。英語によるインタビューだったので、副音声で生の声を拝聴した。

 まず感銘を受けたのは、国谷裕子キャスターの流ちょうな英語である。これまでにも外国の要人へ英語によるインタビューをされていたことはあったが、今回のように長時間に及ぶ内容は初めてであった。8カ月ほど前に同じクローズアップ現代で

どこまで必要 日本人の“英語力”

という話題が取り上げられた時は(こちら感想あり)、鳥飼玖美子さんをゲストにもっぱら聴き手にまわっておられたが、ひょっとして、鳥飼さん以上に英会話が達者なのではないかと思われるほどであった。ブラウン大学のご卒業ということなので英語がお得意であることは当然かもしれないが、外国の大学に留学経験があっても、英語スピーチがそれほど得意でない人は、いっぱいおられるので、やはりスゴイとしか言いようがない。

 本題のムーア監督のインタビューであるが、後半のところで「政治家やマスメディアが過剰に不安を煽ることで、社会がコントロールされやすくなっている」というようなことに言及された。これは、格差問題とならんで、ムーア監督がこだわり続けてきたテーマであるという。

 ここで言われている「不安」は、恐怖(←番組では「fear」)から、心配事一般、さらに、もはや抵抗する気力さえ奪うような絶望状態までを含むものと思われる。確かに世間では、不安を煽り立てる風潮が強い。少し前に、麻生前首相のもとで安心社会実現会議なるものが設置されたことがあったが、これも要するに、不安強調と同梱であると言わざるを得ない。

 不安を煽るというのは、要するに阻止の随伴性によって世論をコントロールしようということである。このことについては、もう11年も前にこちらで指摘したことがあった。

 もっとも、不安を煽り立てるというのは、必ずしも権力側だけが使う説得方略というわけではない。「核戦争の脅威」とか「軍国主義復活の恐れ」を掲げて平和運動を推進しようというのも、地球温暖化の脅威を強調し環境対策を推進していこうというのも同様のロジックであると言える。11年前にも述べたように、阻止の随伴性による説得というのは人を動かしやすい。また、必ずしも明確な証拠を必要としない。なぜなら阻止の随伴性に基づいて行動すれば、当初想定されていた脅威は出現しないで済む。しかし、それは単に何も起こらずに済んだというだけのことであって、行動の成果であったのか、それとも、じつは最初から脅威などなかったのかを検証することは困難であるからだ。

 結局のところ、平穏な社会では、多くの人々は目先の利益ばかり求めて個人主義的に振る舞い、大規模な変化を望まなくなる。そういう状態を何とかして変えようとする時には、阻止の随伴性型の説得戦略しか功を奏しないと言えないこともないように思う。