じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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岡山大学構内のキノコ(7)ドウシンタケ?

 岡山では9月12日に19ミリ、15日に9ミリと、岡山としては比較的大量の雨が降り、大学構内では9月2日に続き、またまたキノコが出現した。

 このあたりによく出現するカラカサタケの仲間と異なり、表面にカサブタもイボも無い。図鑑で調べた限りでは、どうやらドウシンタケ(テングタケ科)であるようだ。大きなツバとツボが特徴。腕時計との比較写真にあるように、傘の直径は12〜15cmと大きい。色の濃いタイプもある。



9月16日(火)

【思ったこと】
_80916(火)[教育]桃太郎フォーラムXI:受けたい授業を創る:教授法改善のヒント(3)橋本メソッドとは何か?(1)

 午前中の特別講演の2番目は、橋本勝氏による、

●「橋本メソッドと学生の主体的学び−150人ゼミの有効性−」

というタイトルの話題提供であった。1番目の授業応答システム”クリッカー”による能動的学習授業と異なり、こちらのほうは、講義ではなく、グループ別のプロジェクト学習型の形態となっている。その点では、学部横断型の基礎ゼミ初年次少人数ゼミグループ型学習などと共通しているようにも思えた。但し、1つ大きく異なっているのは、受講生の適正規模として120〜150人を標榜している点である。受講生が50人を下回るとやや効果が下がるとも言明されていた。




 さて、今回の御講演でまず驚いたのは、講演者の外見上の変化であった。橋本氏は大学教育関連の学界ではかなり名前が知られているのではないかと思われるが、そのトレードマークは「おヒゲ」であり、橋本氏の御名前をご存じない方でも「あの、ヒゲをはやした人」と言えば通じることがあるくらいであった。

 ところがその橋本氏が、なっなんと、当日、ヒゲを剃って登場された。このため、かなりの人には、御本人の自己紹介があるまで、別人だと勘違いされたようである。この衝撃的なヒゲ剃りの真相はイマイチ不明である。御本人の弁によれば、「人間は変わろうと思えば変わる。もっとも、外見は変わっても本質は変わらない」ということを示す御意図があったということだが、その程度の「実験」であるなら、こういう格好(右側の写真が私)をするだけでも済むはずである。
 余談だが、以前、「橋本先生はいつもネクタイをしておられるが、ノーネクタイでヒゲを生やした格好は、どこぞの路上生活のオッサンみたいに見えますねえ」と、からかったことがあった。そのことにショックを受けてヒゲを剃られたとしたら私の責任ということになるが、どうやらその可能性は無さそうである。




 講演ではまず、「橋本に関する4つの誤解を解く」という導入があったが、これは個人情報に関わるのでここでは省略させていただく。続いて、「20世紀の橋本」が21世紀になってなぜ大転換したのかという、やはり導入的なお話があった。この部分も一部個人情報に関わりそうな気もするが、FDへの取り組みを活性化するという一般的な意義がありそうなので、以下に、少しだけ言及させていただく。

 橋本氏によれば、「20世紀の橋本」は、日本一の楽勝科目推進論者であり、学生からは絶大な「人気」があり、1コマの最大受講者(但し、非常勤講師先の大教室)は、なっなんと1600人にも及んだという。ところが、その「20世紀の橋本」が21世紀になって大転換をされた。橋本氏によれば、その理由は、
  1. 初代の全学FD委員になったこと→「そういうあんたはどうなんや」と訊かれる
  2. 学生の真面目度と成績が対応しない→真面目に出席している学生が必ずしも良い評価にならない
  3. 何かもっと楽しくできないか
という3点にあったという。もっとも、私個人としては、上に挙げられた御理由だけでは、どうも納得しがたいところがある。なぜなら、「初代の全学FD委員」なら私自身もそのメンバー6名の1人に含まれていたが、私自身は、(もちろん、それなりに努力はしているつもりだが)そんなに大転換はしていない。上記2.に関しては、もともと出席重視の成績評価をしているので、真面目に出席し、シャトルカードにきっちり解答している受講生は、成績評価が高くなる傾向があり、その種の矛盾でストレスを感じたことはなかった。ひょっとすると、3.の理由が、橋本氏と私のいちばんの違いなのかもしれない。御講演の終わりのほうで橋本氏は「授業はノルマではなく権利→楽しまなきゃ損!」と言っておられたが、うーむ、私自身は、元来せっかちな人間であり、良い意味でも悪い意味でも、「遊び心」を持つというほどの精神的余裕は出てこないなあ。




 最後(←「最後」といっても御講演導入部分についての感想の最後であり、本論はこれから)にもう1つ、「橋本メソッド」という固有名詞を冠した呼称の由来であるが、これは、ご自身が以前「橋本方式」として紹介していたものを、ある大学の有名な先生が「橋本メソッド」と言い換えて言及し、そのまま定着したことによるものであるという。

 一般論として、ある特定の方式(実施スタイル、方法など)に固有名詞を冠することには一長一短があるように思われる。

 まずメリットとしては、多くの人に「それなあに」という関心を引き起こす効果があることだ。また、ある程度確立し、普及している方式の場合には、特段の説明を付け加えなくても、何を行ったのかを相手に伝えやすいというメリットがある。

 いっぽう、デメリットとしては
  • 「○○メソッド」と、そうでない方法を区別する客観的基準が見えにくい。○○さんがやっていれば何でもそれに包含され、○○さんが「これは○○メソッドではない」と否定するだけで除外され、科学的・客観的な再現可能性、同一性、内部的整合性、外的妥当性などの検証が困難になる恐れがある。
  • 固有名詞の御本人のイメージと結びつきやすい。御本人に魅力があれば普及しやすい反面、御本人のカリスマ性と、「○○メソッド」自体が有する有効性が混同される恐れがある。
  • 著作権や商標が関わってくると、第三者が、創始者の承諾無しに「○○メソッド」を改善・工夫・発展させることが困難になる。
 じっさい、今回の1番目のご講演の「“クリッカー”による能動的学習授業」も、鈴木氏ご自身のオリジナリティがかなり含まれており、「橋本メソッド」と同じ意味で「鈴木メソッド」と呼べないことはないとは思う(←但し、「橋本メソッド」は今のところFD用語であるのに対して「鈴木メソッド(スズキ・メソード)」はすでに音楽教育のほうで定着しており、いまさらFD用語として使えないという難点がある)。但し、仮に「鈴木メソッド」と呼んでしまうと、クリッカーを使用した多種多様な授業改善の工夫を包含しきれなくなるという別の問題が出てくるだろう。


 次回に続く。