じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



03月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る
 本部棟前のハクモクレン。開花時の様子が2002年3月19日の日記にある。今年は開花が遅れそう。


3月3日(月)

【思ったこと】
_80303(月)[教育]大学教育改革プログラム合同フォーラム(17)現代GP環境教育(1)「持続可能な社会につながる」とはどういうことか(1)

 合同フォーラム2日目の16時から17時半に

現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP):環境教育関連

という分科会が開催された。




 ここで少々脱線するが、この分科会の参加委員(第4部会副部会)の安井氏のお名前は、市民のための環境学ガイドを拝読していた関係で以前から存じ上げていた。このサイトを拝読するきっかけは、私自身がいだいていた「マイナスイオン」効果への疑問であり、こちらこちらこちらのコンテンツを大いに参考にさせていただいたことがあった。このほか、「環境問題のウソ」のウソも大いに勉強になる。今回、このような場で、安井先生のお話を直接拝聴できる機会を得たのはまことにラッキーであった。

 安井氏の各種コンテンツは、われわれ素人が当たり前のように思い込んでいる事柄について、確かな知識と十分なエビデンスに基づいて、クリティカルな視点から再考を迫るものが多い。しかも、私のような素人でも直感的に理解できるような分かりやすい例えが満載されている。上掲のコンテンツに関しては
  • マイナスイオンは商業用語。正式名称は"空気負イオン"。
  • 少な過ぎて生体への効果はゼロ。プールに目薬1滴より薄い。
といった具合である。今回の分科会の冒頭でも、通常の儀礼的挨拶の内容を超えた、まことに興味深いお話を拝聴することができた。




 さて、安井氏はまず、現代GPの狙いが
  • 社会的要請の強い政策課題に対応
  • 教育プロジェクトである
という点にあり、社会に情報提供を行い、次の時代を担う優れた人材の養成をめざすものであると指摘された。そして、この分科会「持続可能な社会につながる環境教育の推進」なるものが、単なる自然保護中心の従来型環境教育とは異なること、自然保護だけでは十分でないという社会的要請、政策課題を反映したものであることを強調された。

 この視点はまことに的を射たものであると思うが、反面、「自然保護」や「自然との共生」に力点を置いた一部の申請を低く評価し、不採択という残念な結果をもたらしてしまった可能性もあったようで、終了間際の質疑の際にもそのことに言及したご発言があった。




 でもって、とにもかくにも「持続可能な社会につながる」とはどういうことか、が次の議論となる。重要なことは
  • 「持続可能(Sustainability)」は「継続可能(Continuable)」ではないこと
  • 「持続可能」は専門用語だが、その定義は人によって様々であること
  • とはいえ、20世紀後半以後の人間活動が、「非持続可能型」であることについては共通理解が得られている
といった点である(パワーポイント配付資料からの引用。一部表現を改変)。

 ちなみに、「持続可能な社会」というと3R(リデュース、リユース、リサイクル)や温室効果ガス削減問題がすぐ頭に浮かぶが、2000年に行われたミレニアムサミットでは、「貧困・飢餓の克服」、「初等教育」、「性の平等・女性の活力」、「乳幼児死亡率改善」、「妊婦の健康」、「HIVエイズ」など種々の「ミレニアム開発目標」の項目の1つとして、「地球環境」や「開発のためのパートナーシップ」が含まれていたにすぎない、ということであった。

 確かに、先進国の大都市の住民にとっては、「貧困・飢餓の克服」や「初等教育」などと言われてもピントこないところがある。地球環境問題は確かに重要だが、それだけでは地球規模での「持続可能な社会」は実現できないという点は心得ておくべきであろう。


 次回に続く。