じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 地域生協の担当者の方が、2月7日の日記で取り上げた自主回収対象品「ビーフビーフカレー辛口」の代金を持ってこられた。中味は、84円也。わずか84円の商品の回収と代金返還のために2度も来られるとはまことに御苦労なことであったが、商品の安全性についての説明は特になく、共同購入品でも店舗で受け取れます、もっと詳しく説明したいのですが何時頃お電話したらいいですか、といった、今回の騒動とは全く別の話ばかりしておられた。

 ひょっとして自主回収にかこつけた便乗勧誘ではないかという印象を受けたので、「共同購入であろうが、店舗での直接購入であろうが、コープブランドに特段の安全性が保証されていなければ、わざわざ生協を利用するメリットは無い。」というような演説をしてやった。



2月12日(火)

【思ったこと】
_80212(火)[教育]大学教育改革プログラム合同フォーラム(4)特色GP学士課程(2)全学的一斉授業公開を軸としたFD

 昨日に続き、フォーラム1日目の午後に行われた、

特色ある大学教育支援プログラム(学士課程):事例報告/パネルディスカッション

についての参加感想。

 事例報告3件のうち、1番目は私立医科大学の取組、2番目は物理学の実験教育の取組であり、どちらも間接的には参考になる内容ではあったが、分野が異なることでもあり、ここではコメントは控えさせていただく。いっぽう、3番目の

全学的一斉授業公開制度を軸とするFD活動

という取組は、一般性が高く、私の大学や部局でも直接導入が可能な内容を含んでいた。その骨子は、各セメスターの3週間の期間(オープンクラスウィーク、OCW)に専任教員全員の全授業を全教職員に公開し、意見交換やデータベース化をはかり、それをもって授業改善や教員の能力向上をめざすというものであった。

 授業公開自体は私の大学や部局でも行われているが、今回紹介のあった大学ではその仕組みや改善につなげるためのプロセスがシステム化されている点で大いに参考になった。また、この申請は、過去2回は不採択となり、その際の不採択理由を真摯に受け止め改善に改善を重ね、3度目して晴れて採択、という努力の積み重ねがあった点でも大いに参考になった。

 もっとも、全学的一斉授業公開制度が、本当に授業改善や教員の能力向上に有効であったのかという点については、いまいち心もとないところがあった。事例報告として示されたエビデンスは、
  1. 学生の授業評価アンケートで満足度や理解度の評点平均値が上昇。
  2. 学生一人あたりの出席授業数は、2002年度の8.63回であったものが2006年度には11.47回に増加。
  3. 1年生退学者数は、2002年度には44名であったものが2006年度には11名に減少。
といった3点であったと記憶しているが、もともと、対照群や対照条件を用いた実験手続ではないので、これらの数値向上が授業公開によるものか、並行して行われた別の改善努力の成果であるのか、あるいはそれらの複合的成果であるのか、確かなことは言えない。

 このほか、質疑の時間に私自身も発言させていただいたところであるが、授業評価アンケートでの「満足度」と「理解度」の「向上」は、もしかすると、学生に迎合し、達成目標レベルを易化させたために生じたという可能性もある。同じレベルを維持するなかで理解度の向上を証拠づけるためには、何らかの外部試験成績や、資格試験合格率など、別の指標で上昇があったことを示す必要があるだろう。




 ところで、私自身は、過去10年近くにわたり全学のFD関係の仕事に従事してきたため、授業改善や授業公開について、常に推進する立場をとってきた。しかし、大学の授業というのは、基本的には、学生の主体的な勉学、自学自習を前提として成り立つものである。何でもかんでも手取り足取り、学生というお客様にサービスを提供する場ではない。小中学校の先生のようなレベルまで「教えるプロ」としてのテクニックを磨かなくても、つまり、ある程度ヘタな授業であっても、学生側に学ぶ姿勢さえあれば学習目標は十分に達成できるはずだ。というか、大学生にもなって、理解不足の原因をすべて「教え方が悪い」に帰着させてしまうようでは困るし、将来独り立ちできない。

 ということもあり、個人的には、大学の授業というのは、あくまでカリキュラムの中での整合性、適合性という観点から内容第一で評価されるべきものであり、教え方の上手下手は二の次、極端な問題点が無ければそれでよいのではないかと考えている。ここでいう極端な問題点とは、例えば、
  • 規定の授業回数、あるいは開始時刻、終了時刻を守らない。
  • 本題とは関係の無い雑談や思い出話ばかり(但しノーベル賞受賞者クラスの著名な教員ともなれば、雑談や思い出話のほうがかえってタメになることもあり)。
  • 成績評価にあたって、達成度をきっちり測ろうとしない。
  • 受講生の不真面目な行動(私語、携帯使用、遅刻、中途退席など)を制止しようとしない。
というようなことである。授業公開を通じて、そういうネガティブな面が露呈した場合は速やかに改善すべきである。

 次回に続く。