じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 紅葉の一部始終を見守るギンモクセイ。この樹は農学部構内にあり、毎年この時期に花を咲かせている。紅葉・黄葉が始まることから花を開き、年によっては1月まで咲き続ける(2006年1月7日の日記に写真あり)。



12月11日(火)

【思ったこと】
_71211(火)[心理]学士教育課程のコンセプト(5)戦略的基礎教育プログラム改革(3)少人数の私塾型か、大規模なシアター型か

 講演の後半では授業形態について、少人数の私塾型か、大規模なシアター型か、という興味深いお話があった。

 少人数・私塾型というのは、日本の伝統的な大学で実施されてきた教育方法であり、教え込み型、講義型、教員完結型といった特徴をもつ。この方法の成否は、教員個人の力量に依存する部分が大きい。また、一般には、モチベーションの高い学生に対してのみ有効であると言われる。

 いっぽう、大規模なシアター型というのは、アメリカの研究大学で実施されてきた教育方法であり、グランドサーカス型、講義・討論ミックス型、分業・チーム型という特徴をもつ。このやり方では、教員個人の力量よりも組織と物量がモノを言う。学生の学歴や履修歴が多様化し、大学がエリート型からマス型に移行するにつれて、少人数・私塾型の授業効率は著しく低下。また、そうした形では、才能の芽を発掘することもできない。それよりも、マスの底上げが重要ということになる。

 グランドサーカス型の化学の授業では、演壇の教員とTAが実験を実演するという形をとるが、実験を見せるだけならハイビジョン映像のほうが遙かに迫力があるように思える。しかし、グランドサーカス型の本当の特徴は、大人数ということではなく、実演後にTAと受講生主体で行われるディスカッションにあるということであった。直前に行われた実験装置や器具を実際に手にとってディスカッションを行う必要上、e-Learning型では代用できない。




 このほか、
  • いわゆる「レクチャー」の時間は1時間、通常は50分程度に抑えるべきであること(数理的分野で学生が集中できる時間は1時間が限度)
  • 基礎教育は広い分野にわたるものであるが、それぞれの領域の教員に分担させるというだけでは解決しない。ディシプリンとしての組織的な取組が必要。
  • 入門レベルの基礎教育はきわめて重要。基礎教育の軽視、時には蔑視という傾向、また研究大学の若い教員が「教師」としての意識を失いつつあつことへの警鐘が、学士課程教育のFDの義務化という中教審答申に込められている。
といった点が大いに参考になった。このほか配付資料では「第二世代のFD」が予定されていたが、時間が限られていてお話を十分に伺うことができなかった。

 次回に続く。