じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 12月6日の岡山は最低気温が1.1度まで下がり、私の住んでいるエリアでは初霜となった。写真は、農学部イチョウ並木の落葉にかかる霜。


12月6日(木)

【思ったこと】
_71206(木)[心理]徴兵制を導入すれば若者は規律正しくなるか?(7)社会を敵に回さず、楽しみ方を身につけさせることも大切

●徴兵制を実施し、一定期間、訓練や規則正しいルールにのっとった生活を強制すれば、若者は規律正しく行動するようになり、「モラルハザード、規範意識の欠落、希薄化」を改善することができるか?

という問題を考える連載の7回目。

 最終回として

4.少数の「ならず者」にどう対応するかという議論

について考えてみることにしたい。

 さて、もともとこの連載は、宮崎県の東国原知事が「ある時期、規律を重んじる機関で教育することは重要だと思っている」と語ったことからの連想で始まった。また同知事の御真意は「社会のモラルハザード、規範意識の欠落、希薄化はどういうところで補うのか。学校教育が補えない中で、心身を鍛錬する場が必要ではないかと言いたかった」であったという(11月30日の日記参照)。

 ここで問題となるのは、「規範意識の欠落」や「希薄化」のエビデンスがどこにあるかということである。例えば、駅前の放置自転車のような問題行動は、かなりの比率の人たち(但し若者とは限らない)の問題行動と言える。そのいっぽう、ゴミ収集指定日以外の日にゴミ袋を置く人とか、コンビニで買ったおにぎりの包装紙を道ばたに平気でポイ捨てするというような人たち(←これらも決して、若者が犯人であるとは限らない)は、住民のなかのごく少数の「ならず者」に限られている。また、2006年7月31日や、同年8月3日、さらに続編の同年8月4日に書いたように、
  • 高速道路の料金所を料金を払わずに突破する車。
  • 図書館では本の無断持ち出しや切り抜きが相次ぐ。
などというのはもはやモラルの低下というような問題ではなくて、犯罪行為として扱うべきである。さらに、最近起こった凶悪犯罪の例を挙げて「モラルが低下した」などと言う人もおられるが、凶悪犯罪は一般市民のモラルが低下することで多発するような性質のものではない。1万人のうち9999人が高いモラルを持っていても、残りの1人が何らかの事情で凶悪な犯罪を起こすということはありうる。モラル向上というような手段ではそれを防ぐことは困難であろう。

 少数の「ならず者」にどう対処するのかは、ケースによって事情が異なり、万能な方策というのは考えにくい。殺人など凶悪犯罪を起こしてしまった場合は、死刑によって罪を償ってもらうこともありうると私は考える。そのいっぽう、「ならず者」スレスレの人たちを暖かく受け入れ、支援するということも大切であろう。なぜなら、反社会的行動は多くの場合、

●社会は自分を守ってくれない→社会は自分の敵である→自分を守るためには手段を選ばずに敵と戦っていかなければならない(=犯罪とは、敵と戦う行為である)

というようにエスカレートした結果であることが多いからだ。

 そう言えば、少し前のダイバージョナルセラピーの講演会で、オーストラリアでは刑務所でもダイバージョナルセラピーを行うという話を聞いたことがあった。ダイバージョナルセラピーと言えば、目的を持った遊びや、レクリエーションを導入する全人型セラピーとして知られており、刑務所をそんな楽しい場にしてしまってよいのかと不思議に思ってしまう。しかし、一部の犯罪者は、世の中でのちゃんとした遊び方、楽しみ方を知らないがゆえに、非行や犯罪に走ってしまった可能性がある。刑務所に居るうちにそういうスキルを身につけておけば、再犯を防止することができる、という考え方は納得できるものである。「規則を守らないと罰を受ける」ということを強制的に教え込まれた人よりも、「世の中を楽しく生きるにはどうすればよいか」を身につけた人のほうが、結果的に、モラルは楽しい環境を守るために必要であると実感し、それを実践することになるはずだ。