じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真]

 梅雨入り前の快晴の朝を迎えるサツマイモ畑。一部の地域では水不足が心配されているが、岡山の場合、6月の降雨量は11日までで43.5ミリとなっていて、梅雨入り前としてはまあまあの雨量となっている(6月総雨量平年値は185.8ミリ)。これは上空の寒気により、何度か雷雨があったため。



6月11日(月)

【思ったこと】
_70611(月)[心理]人間・植物関係学会2007年大会(3)自然のもたらす心の癒し〜病跡学的視点から〜(1)

 6月2日午後に行われた基調講演の2番目は、大森健一氏(獨協医科大学名誉教授・滝澤病院) による、

●自然のもたらす心の癒し〜病跡学的視点から〜 俳人種田山頭火の場合

というテーマのお話であった(学会サイトの案内では「人から見た日本の風土」というテーマが予告されていたが、実際には山頭火を中心とした内容であった)。

 講演者の大森氏は東京医科歯科大学医学部卒業、獨協医科大学学長、獨協学園理事長、日本芸術療法学会理事長等を歴任されている。芸術療法学会については詳しいことは分からないのだが、ネット上の情報によれば、1969年に設立、2006年現在の会員数は991名、平成17年に日本芸術療法学会認定・芸術療法士制度を発足させているようだ。主な芸術療法としては、絵画療法と音楽療法が頭に浮かぶが、音楽療法に関しては2001年に日本音楽療法学会が別に作られている。園芸療法も、定義の仕方や、意義づけの内容によっては、芸術療法の一部に含まれる部分がある。

 次にタイトルにある「病跡学」だが、これまた、日本病跡学会というのができていて、大森氏も理事にお名前をつらねておられるようだ。当該学会サイトの中の、病跡学とはには
病跡学とは、宮本忠雄氏によれば「精神的に傑出した歴史的人物の精神医学的伝記やその系統的研究をさす」、福島章氏によれば「簡単にいうと、精神医学や心理学の知識をつかって、天才の個性と創造性を研究しようというもの」です。...【以下略】
という紹介記事がある。

 病跡学が我が国で始められた当初は、
  • 病跡学は精神科医の趣味、遊び
  • 現役を退くと病跡学をやりたがる
  • 臨床とは関係ない
  • 真の医学ではない
  • 絵を描いて精神病が治るなら、画家は病気にならない
というような世評があったという(発表スライドからの引用)。しかしその後、研究は着実に発展し、
  • 病跡学は転載の診断にとどまるものではない
  • 創造活動と精神障害の相互関連を示唆する
  • 精神科臨床への還元・診断、治療への示唆
  • 個別的研究から精神病理の相対的考察へ
  • 創造の秘密を鍵に学際的交流
  • 芸術療法、創造の癒しと病跡学の相互理解と相互深化
といった意義が認められるようになってきたという(発表スライドからの引用)。

 ちなみに「絵を描いて精神病が治るなら、画家は病気にならない」という揶揄は、
  • 音楽療法で病気が治るなら、音楽家は病気にならない。
  • 心理療法で病気が治るなら、心理学者は病気にならない。
  • 医学で病気が治るなら、医者は病気にならない。
というようにいくらでも置き換えが可能である。いずれも、かなり屁理屈に近い乱暴な揶揄ではあるけれど、見方を変えれば、「○○で病気が直るなら、○○の専門家は病気にならないはずだ」という論理がなぜ間違っているのか、分析する必要があるようにも思う。

 ちなみに、芸術には病気を治す力もあるが、逆に病気を重くする場合もあるという。また、私個人としては、そもそも何をもって「病気」とするのかについて、もう少し慎重な議論が必要なのでないかという気もした(2005年9月22日の日記参照)。

次回に続く。