じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



5月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る
[今日の写真] ロウバイの実。1月上旬に咲いているところは何度も見ているが、こういう実がなるということは初めて知った。


5月4日(木)

【思ったこと】
_60504(木)[一般]健康補助食品は癌に効くか

 5月4日づけ朝日新聞(西部本社)の一面トップに

「がんに効く」に見解 根拠の有無示す 厚労省研究班

という見出しの記事があった。がん患者の中には、通常の医療とは別に、キノコなどの健康補助食品に効果を期待する動きが広がり、インターネット上でも噂や情報が氾濫しているという。厚労省研究班が3000人のがん患者を対象に行った調査では、約45%が補完代替医療を試み、その96%がキノコ類やサメ軟骨などを使っていた。今回調査の対象となったのは、特に使用頻度の高い5つの食品であった。
  • アガリクス
  • プロポリス
  • AHCC
  • サメ軟骨
  • メシマコブ
今回まとめられた一般向け手引きによれば、「がんの縮小や延命効果など、多くの患者が期待する直接的な治療効果を証明する報告はほとんどなかった」という結論になっているという。




 記事で伝えられている内容は、私にとってはほぼ予想どおりであった。そもそも、何らかの治療効果が確認できるような食品であるならば、研究者や製薬会社が目をつけないはずがない。「がんを治す薬」として正式に開発・販売したほうが、よっぽど儲かるはずである。また、もしそういう効果が本当にあるのなら、健康食品会社がわざわざ誇大な宣伝をしたり、ニセの体験談をでっち上げなくても、疫学データとして客観的数字に表れてくるはず。先物取引やマンション販売でもそうだが、執拗に宣伝・勧誘するというのは、本当は儲からないからそうせざるを得ないのである。効果が顕著に表れる話というのは、宣伝しなくても人が集まってくるものである。




 それはそれとして、この種の健康食品を求めることには、他にもいろいろな問題がある。

 まず第一に、以前にもこの日記に書いたことがあるが、例えば「ナオル茸(←架空の名前)」というキノコには、がんを治す効果がありますと宣伝された時、たいていの人は、「ナオル茸」に本当にそういう効果があるのかという部分にだけ注意が向いてしまう。しかし、その販売会社が扱っている「ナオル茸」がホンモノなのか、それとも、椎茸やエノキタケを加工しただけの偽物なのかということはあまり疑わない。こういう食品は、普通の野菜や果物と違って希少であるため、購入者はそれを見ただけではホンモノかを判断することができない(2005年7月19日の日記参照)。また流通の仕組みから言って、公的な検査機関が品質や安全性を保証するようなものでもない。

 第二に、補完代替医療効果の有無というだけを言うならば、種々の宗教的行為、例えば、御祓いや加持祈祷のような行為の有効性も、同じレベルで検証比較されなければならない。しかし、マインドコントロールや悪徳商法にあたらない限りは、本人が良かれと思って何かを求める行為を妨げることはできない。「ナオル茸(←架空の名前)は癌を治します」などと言って、架空のデータや体験談をでっち上げれば当然詐欺になるが、「ナオル茸」教という宗教団体を設立して、毎日それを食べるということをお祈りの一環に含めた場合は、取り締まりの対象にはなりにくいように思う。

 そして、これはあくまでご本人の気持ち次第ということになるが、現代の医学では治療は難しいという末期的な段階に至った時は、生きることばかりに執着せず、残された期間をいかに美しく生きるかということに気持ちを切り替えることも大切ではないかと思う。現実にそういう状況になってみないと私自身どうするか予想がつかないが、とにかく、人間は、いずれ必ず死ぬものだ。平均寿命程度プラスマイナス10歳前後まで生きながらえることができた場合は、そこから先はもはや「生」には執着しなくてもよいのではないかというのが私の個人的な考えだ。50歳代あるいはそれより若い時期にがん宣告を受けた時には、なかなか理屈通りには覚悟できないかもしれないが。