じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真] 金網越しに農場の空き地と半田山方面を眺める。あまり目立たないが地面には一面にナズナの花が咲いている。


3月6日(月)

【ちょっと思ったこと】

スルツカヤ選手が転んだ時

 各種報道によれば、小坂文部科学大臣は、先週、トリノオリンピックの金メダリスト・荒川静香選手が報告に訪れた際、ロシアのスルツカヤ選手が転倒したのを「喜んだ」などと述べたことについて、配慮を欠いた発言だったとして、陳謝するコメントを発表したという。

 この件については、文部科学大臣からのメッセージ小坂大臣御本人のオフィシャルサイトでも公式にお詫び表明がなされている。オフィシャルサイトによれば、
日本選手が素晴らしい健闘をする中で惜しくも後で競技する外国選手に抜かれて入賞を逸した話が話題となり、明け方のテレビを見ながら荒川選手の素晴らしい演技に何としても金メダルになって欲しいとの想いから、「言ってはいけないことと思いながらも、ついロシアの選手が転んだ時には、思わず”これで金だ”と叫んで喜んでしまいました」と発言してしまいました。
というのが真意であり、
自分の置かれた立場と荒川選手の実力での金メダル獲得を傷つける発言であり、スルツカヤ選手の健闘を称える発言をすべきであったことも反省し、配慮に欠けた発言を深く反省いたします。また、荒川静香選手並びにスルツカヤ選手に心からお詫び申し上げます。
というのがお詫びの趣旨であったようだ。

 そう言えば、3月7日朝の某番組でも某男性アナが、「私も、スルツカヤ選手が転んだ時には、やったぁー! と思わずガッツポーズをとりました」などと告白していた。日本人として日本選手にメダルをとってもらいたいという気持ちがあるのは私も同じだが、トリノ五輪の感動ってそんな性質のものだったのだろうか。

 スルツカヤ選手が転倒した場面は私も生中継で観ていたけれど、「あれれ」と驚いたものの「やったぁー」という気持ちは全く起こらなかった。こんなところで、別段、優等生的な発言をしようというつもりはない。少なくとも私は、心底、そういう気持ちにはならなかった。もともと、「自分は自分、他人は他人」、他の人がどういう場面でどういう気持ちを持とうとそれを咎める気はないけれど、なんだか情けなくなるなあ。




 荒川選手については2月27日の日記で考えを述べたことがあるが、金メダル獲得の決め手は演技後半で1.1倍、最高8.0がねらえる「3サルコウ+2トウループ+2ループ」を成功させたことにあった、というのが私の考え。またあのような緊張場面で、高得点技の直前に得点には結びつかないイナバウアー(正確には、イナバウアー+上体そらし、3月1日の楽天日記参照)を取り入れたことが、自分らしさを失わなず演技の成功に繋がったのではないだろうかと思っている。その結果が、金メダルになるか銀メダルになるかは相対評価だから自分だけでどうなるというものではない。しかしとにかく、絶対評価する目を持たなければ真の感動は得られないはずだ。

 ところで、荒川選手と言えば、3月4日には東京・有明コロシアムで「シアター・オン・アイス」、さらに6日には、思い出の地の長野で「長野メモリアル・オン・アイス」に出演されているが、報道記事を見ると、
  • 【3月4日】エキシビション用のプログラムを用いた荒川は、片手のビールマンスピンやレイバックスピン、今や代名詞ともなったイナバウアーらの技を織り交ぜた演技を披露し、約9800人の観衆から大きな拍手を浴びた。(毎日新聞)
  • 【3月6日】約7100人を前に代名詞となったイナバウアーを披露、鈴なりの立ち見も出た観客席からはため息が漏れた。(共同通信)
というように、「3サルコウ+2トウループ+2ループ」の技ではなく、技術点対象から除外されているイナバウアー(正確には、イナバウアー+上体そらし)に最大の注目が集まったというのは皮肉なことだ。やはり、観客を魅了するフィギュアスケートの本質は、高得点を狙うための曲芸ジャンプではなく、芸術的な美しさの追求にあるのだろう。