じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真] ケヤキの間に姿を見せるようになった明けの明星。マイナス4.3等級の明るさ。なお、今年の金星は、これから先10月中旬頃までずっと、明けの明星となる。



1月22日(日)

【思ったこと】
_60122(日)[心理]医療・看護と福祉のための質的研究セミナー(7)観察法の重要性

 1月15日午後に大阪府立大中百舌鳥キャンパスで行われた

医療・看護と福祉のための質的研究セミナー「あなたにもできる質的研究:着想から投稿までのノウハウを教えます」

の参加感想の7回目。

 今回からは
●シンポジウム 医療と福祉における質的研究の実際
話題提供 高齢者と"場"の研究−Grounded Theoryを用いた場合     (竹崎久美子氏・高知女子大学看護学部)
文化としての“健康観"の探究―エスノグファーの目から見た高齢者にとっての健康(大森純子氏・聖路加看護大学)
高機能広汎性発達障害当事者の手記から読み取れる障害認知−独立型社会福祉士が当事者の視点をもつために(今泉佳代子氏・いまいずみ社会福祉士事務所)
コーディネーター 操華子(聖ルカ・ライフサイエンス研究所)
について感想を述べさせていただくことにしたい。なお、今泉氏は当日の緊急のご事情により欠席され、田垣氏が代理発表をされた。

 まず、竹崎氏は質的研究の歴史やGrouded Theoryについて、わかりやすい解説をされた。そして、
  • 個人の中で起こる心情や思い行う研究ばかりでなく、場と個人がどのように相互作用しているのかを知ることも大切
  • インタビューで「本人がそういった」こと自体は信頼性のあるデータとなるが、日常的な営みは必ずしも意識化(→要するに、言語化して報告すること)されないことが多い。
  • 参加観察を行えば、それらを把握できる。但し、正確に場面が切り取れるか、起こったことを正確に記述できているかは、裏付けが難しい。
として、特に参加観察のポイントについて伝授していただいた。

 感想の1回目でも述べたように、私自身は、質的研究はどうもインタビューに頼りすぎているのではないかなあと、参加観察、もしくは、観察と言語報告を的確にリンクさせる必要があるのではないかなあと、思いつつあるところだ。

 ところで、行動分析でも行動観察は研究方法として基本中の基本であり、仮に実験的方法を導入する場合でもまず、ベースラインとしての行動観察は欠かせない。但し、この場合には、最初から、オペラント、強化刺激、弁別刺激といった観察の枠組みが決まっている。要するに行動分析でいうとことの観察というのは、
  • オペラント行動の単位を明確にし、その頻度を測定する
  • その行動が何によって強化されているのかを明らかにする
  • その行動の手がかりとしてどのような弁別刺激が関与しているのか明らかにする
といったことを基本としている。この枠組み無しに漠然と事態の推移を記録しても、生産的な情報は得られない。今回のセミナーで紹介された観察法では、これに代わるどのような観察・分析の枠組みがあるのかがポイントであったと思うが、私自身にはまだ十分には理解できていない。

 配付資料の終わりのほうで竹崎氏は、
実践学である看護学がめざすべきは、やはり実践の改善、より質の高いサービスの提供であり、今は介入研究が注目を集めている。
と記しておられた。こうなると、行動分析の視点とどうしても融合せざるをえないのではないか。但しその場合にも、「当事者の視点で現象を理解する」ことが大切であるというのが今回のご発表の趣旨であると理解した。

 次回に続く。