じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] クサギ(臭木)の実。2004年9月29日の日記に関連記事あり。実の形は、植物園の温室などで見かけるミッキーマウスの木Ochna Serralata)に似ているように見える。


11月4日(金)

【ちょっと思ったこと】

マンション投資は儲かるか

 一昨日から「株式投信は儲かるか」、「外貨預金は儲かるか」と2日続けて「儲かるか」シリーズを連載したので、もういっちょう、マンション投資について私見を述べておこうと思う。

 マンション投資というのは「マンションを購入し、ご自身が住むのではなく、そのマンションを賃貸することにより、家賃収入を得ていくこと」を言うのだそうだ。私の研究室にかかってくるセールス電話の大半はこのことについての勧誘である。電話がかかってきても無言で受話器を放置するか、「二度と電話するなと言っているのに何でかけてくるのだ! お前らのやっていることはストーカーだ。業務妨害もいい加減にしろ!」などと怒鳴りつけて電話を切ることにしているので、説明は一度も聞いたことが無い。いずれにしても、執拗に電話をかけてくるというのは、自分たちが儲けるために何とかして金を出させようとしているためである。こっちのほうが本当に儲かる話であるなら、わざわざ勧誘などしなくても、どこかで話を聞きつけてこちらから問い合わせるというものだ。

 では、本当のところマンション投資は儲かるのだろうか。しかし、ある程度信頼できそうな大手マンション建設会社のWebサイトの説明を見ても、あまり儲かりそうには思えない。

 例えば2000万円で23区内の新築マンションを購入し、家賃10万円で貸したとする。年間120万円、といっても所得税がかかるから実際は100万円、となると元を取るには20年を要することになる。しかしこれは20年間、同じ家賃で借り手がついていた場合のことだ。Yahooの不動産サイトなどで賃貸マンションを探してみると23区内で10数万件の物件があることが分かる(←但し、同一物件を複数の不動産屋が広告している場合があるので、実際にはその何分の1程度かと思う)。要するに、そう簡単には借り手はつかないということ。また、最初から家賃10万で20年間住もうと思っている人なら、わざわざ賃貸などに頼らずに自分で購入するはず。ということは、20年間のうちに何度か借り手は交代する。その間には空室となる期間があるし、ボロボロになるにしたがって50万〜100万程度のリフォーム費用が必要になってくる。マンション会社が言うほど、そんなにウマイ話にはならないだろうと思う。

 ローンを組めば節税になるなどという宣伝もあるが、もともと節税というのはそれを上回る税金を払っているから多少得になるという意味であって、プラスの収入ではない。

 Yahooの不動産サイト(23区内)などを見ても分かるように、15年、20年と経過したワンルームマンションの家賃はせいぜい8万円程度。その中から固定資産税や修繕積立金を払っていくと月々の実質収入は5〜6万円にしかならない。これではリフォーム経費にしかならない。

 ワンルームではなく、もう少し規模の大きい2DK、3DKクラスのマンションであれば家賃収入20万円くらいは見込めるかもしれない。しかし、購入価格は3000〜5000万、リフォーム費用も100〜300万くらいかかるので割が合わないのはワンルームと同様だ。それと、これは上に述べたことと同様だが、月々家賃を20万円も払えるような高収入の人なら大概は自分でローンを組んで別のマンションを購入するはず。わざわざ借りるということは、短期間に移り住む予定があるからであって、ずっと借りてくれる可能性はきわめて低い。

 けっきょくのところ、他人に貸す目的でマンションを購入しても、宣伝されているような収入は期待薄ではないかと思う。投資額の元がとれる頃に残るのは、ボロボロの部屋と、建て替え話ぐらいのものだろう。新たに数百万円かけてリフォームしなければどうにもならないがその資金はどこにもない。建て替えをしようとすれば、新たなローンの重荷がかかる。

 ということで、マンションを購入するのはあくまで自分や家族が永住する場合に限るべきである、というのが私の信念である。他人に貸すのは、何らかの事情で遠方に引っ越しする必要が生じ、なおかつ、いずれは戻ってきてその場所に住みたいと考えている時のやむを得ない対策である。他人に貸して儲けるのではなく、せいぜい、月々の管理費、修繕積立金、固定資産税分の負担と、リフォーム経費分をまかなう程度の気持ちを持ったほうがよいのではないかと思う。