じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] [今日の写真] 9月18日は中秋の名月。よく晴れたので、後楽園で開催された「名月鑑賞会」に行ってきた。 後楽園のお月見には、これまでにも何度か行ったことがあるが、これほど大勢の人が来たのは私の経験では初めであった。十五夜が日曜日、しかも連休の中日に重なったことも、入場者を集めた一因になっていると思う。写真は、中央の大きな池を前景にした満月。


9月18日(日)

【思ったこと】
_50918(日)[心理]日本心理学会第69回大会(9)Well-beingを目指す社会心理学(4)社会的スキル向上とWell-being

 日本心理学会第69回大会の参加感想の9回目。

 今回は

【9月11日 午後】CP02 Well-beingを目指す社会心理学

の中の

●大坊郁夫氏の話題提供:社会的スキルの向上を目指す

について感想を述べさせていただく。




 大坊氏はまず、現代人の対人関係の特徴として、「向・非社会性」、「閉塞的な空間」、「選択的・間接的な関係」、「希薄」、「プリマルチ・ネットワーク」というようなキーワードを挙げられた。

 現代人といっても、若者、地域社会、高齢者施設など、多種多様な生き方があり、それぞれ個別に特徴づける必要もあるかと思うが、確かにそういう傾向は出てきていると思う。

 例えば、9月16日の日記
私の住むアパートの前には小さな広場があるが、そこのベンチに座って真夜中に大きな声でおしゃべりをしているカップルを見かけることがある。真夜中ということもあって、会話の内容はアパート住民には筒抜けである。みんなに聞こえてもどうして恥ずかしくないのだろうと不思議に思うほどである。
と書いた点であるが、この例では若者は完全に閉塞的な空間の中にとじこもって会話を続けていると言える。このほか、車の中から平気で吸い殻、時には空き缶、ペットボトルまで投げ捨てたり、真夜中に大音響のエンジン音を鳴らしながら走り抜ける「暴走族モドキ」も居る。こういう若者にとっては、社会的スキルの向上はぜひとも必要であろうと思う。ちなみにここでいう社会的スキルとは、対人関係を円滑に運用する能力、すなわち相互作用概念であり、双方向的に学習し、向上させることが可能である。

 大坊氏によれば、社会的スキルの要因は大きく分けて
  1. コミュニケーション
  2. 察知・推測
  3. 対人認知・状況理解
  4. 自己表現
  5. 対人関係の調整
  6. 社会そして組織にある文化規範・規則
  7. 個人属性(パーソナリティなど)
という7つに分類される。これらが含まれるチェックリストで自己点検すれば、自分にどこが足りないのかがよく分かってくる。

 そう言えば少し前に、Web日記執筆者の間でニュートラ適性・適職診断というのが流行したことがある。私の場合は、こういう結果であり、「理学系の研究者に向いている」とか「研究ひとすじに打ち込むか、こだわりの仕事で活きるタイプ」などと言われると、おおそうかっ、自分の職業は適性・適職なのかなどと思ってしまうが、ある意味で、こういう表現は、社会的スキルの一部に不足があり、「対人関係を円滑に運用する能力を必要とする職種には向いていない」ということを暗に示唆しているようにも受け取れる。同じことは、「企業にはあまり向かない芸術家タイプ」と診断された場合にも言えるのではないだろうか。もっとも、社会的スキルはちょっとしたトレーニングで大幅に改善できるものだ。仕事の都合上、対人関係を円滑に運用する能力が求められる人は、最初から「適性無し」と思い込むのではなく、積極的にそういうトレーニングに参加してほしいと思う。

 大坊氏によれば、社会的スキルには、誰にとっても必要な基本スキルと、特定の(目的的な)スキルがある。また、日本人的スキルとして
  • 察知
  • 自己抑制
  • 階層的関係の調整
  • 対人感受性
  • 曖昧さへの耐性
があるという。これらは、外国人が日本の生活に融け込もうとする場合、あるいは、比較的古い体制の組織に入って活躍しようとする場合にはぜひとも必要なスキルであろう。

 もっとも今の世の中、ホリエモンや、民主党の前原・新代表にも象徴されるように、若い世代が年配の実力者に平気で物を言うのが当たり前の時代になってきた。競争的環境のもとでは、自己抑制や階層的関係の調整は、かえって自己に不利な結果を招くこともある。「曖昧さへの耐性」も国際社会では通用しない。

 いずれにせよ、社会的スキルに関しては、誰が何のために、どういう場面で必要とするのかについて考えていく必要があると思った。

 なお、このシンポの途中から会場周辺は激しい雷雨に見舞われ、落雷のせいか、マイクが使えないというハプニングに遭遇した。9月11日の日記参照)。