じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] ビロードモウズイカ。ハーブの一種としても知られる(→「マリン茶」「マレイン茶」)。2003年6月12日の日記など、毎年一度は写真を掲載している。今回は4株同時開花が特徴。


6月8日(水)

【ちょっと思ったこと】

サッカーな日のプロ野球の観客動員数

 ワールドカップのアジア最終予選で日本が北朝鮮に2-0で勝利し、3大会連続の出場を決めた。9日朝のテレビニュースや新聞は、このことをトップ項目で伝えている。8日夜は民放やNHK-BSで中継が行われ、かなりの視聴率をあげたものと思われる。

 さてこの日は、各所でプロ野球交流戦が行われていた。サッカーの試合が注目されるとプロ野球の観客動員数が減少するのかどうか調べてみたところ
  1. 大阪ドーム(オリックスvs阪神) 24294人
  2. 千葉(ロッテvs巨人) 20021人
  3. 広島(広島vsソフトバンク) 15115人
  4. フルスタ宮城(楽天vs中日) 10322人
  5. インボイス西武(西武vsヤクルト) 10315人
  6. 横浜(横浜vs日本ハム) 8803人
 となっており、観客数3万人を超えた球場は1つもなかった。但し、観客数1万人未満というのも横浜球場のみであり、平日としてはまずますの動員になっているようにも見える。サッカーの試合が行われた水曜日と行われなかった木曜日の動員数を比較すれば、影響がはっきりしてくるものと思う。

 余談だが、プロ野球・巨人は7日、決算取締役会を開き、渡辺恒雄・前オーナー(79)が球団会長就任する人事を内定したという。渡辺氏は「巨人軍は今歴史的な危機を迎えています。広く全国のファンの意見を聞いて現場に伝え、グループ各社の強力な支援態勢を確立するため、巨人軍の経営に復帰することにしました」などとするコメントを発表したという。確かに、このところの巨人はセリーグの最下位低迷のほか人気もイマイチであり、巨人戦中継番組の視聴率が落ちているほか、上記の動員数一覧でも、「巨人がやってくる」だけでは必ずしも観客が増えないことがうかがえる。

 ではどうすればよいか。いっそのこと、新会長自らが球場に出向いて試合開始前に「ファンの意見を聞く会」とか「偉大な指導者の御健康を祝う会」といったイベントを開催すれば、少しは観客動員数を増やすことができるのではないだろうか。←観客大幅減に繋がるおそれもあるが。


【思ったこと】
_50608(水)[心理]人と植物の関係を考える(6)園芸療法の効果検証実験

 人間・植物関係学会鶴岡大会参加報告の続き。今回は2日目に行われた口頭発表についての感想。但し、2日目の発表は2会場に分かれており、また私自身は月曜日の授業に間に合うように早めに帰路についたため、すべての発表を拝聴することはできなかった。ここでは全般的な感想を述べるにとどめたい。

 さて、私が拝聴した発表の中では、園芸療法の有効性について検証をめざす研究が多かった。基本的な方法としては、
  • 「園芸療法」を実施した集団と実施しなかった集団の平均値を比較し、統計的に有意な差を得ることで有効性を示す。(個体間比較)
  • ある集団に「園芸療法」を実施し、実施する前と比べて統計的に有意な変化を得ることで有効性を示す。(個体内比較)
という2つのタイプがあった。また、ここでいう「有効性」の量的検証には、QOL(WHOのQOL26)、自尊感情尺度、うつ評価尺度(GDS-15)、自我状態(エゴグラム得点)、認知・精神的機能(HDSR、DBD、NMSなど)、身体・生理的変化(唾液中のIgA、骨塩量など)、社会的機能(SDRSなど)の各種尺度や指標が用いられた。

 このような実験的検証の試みは、政治家、厚労省の役人、高齢者施設の経営者を納得させるための客観的根拠としては有用であろうと思う。なぜなら「園芸が好きな人が多いから補助金をください」と言うよりは「園芸療法にはこれだけの有効性がありますので補助をお願いします」と要求したほうが遙かに説得力が出てくるからである。

 しかし、いくら正確に測定し、正しい統計的検定を行って有意差が示されたとしても、そのことをもって「園芸療法には医療効果が認められる」というような一般的結論を出すことは困難。そのような有効性検証に研究資金と人的エネルギーを注ぐよりはむしろ、より多くの対象者(高齢者、障害者。健常な子どもたちや成人も含めるべき)が持続的に園芸活動に関与できるような環境整備や技法的な改善に取り組んだほうが生産的ではないかと、私は思っている。

 というのは、そもそも「園芸療法に有効性があるかどうか」という議論は、「園芸療法」というものが明確かつ再現可能な形で定義されてこそ意味をもつからである。いくら、尺度得点や生理的指標で有意差が確認されたからといって、それが「園芸療法」の何による効果なのかが同定できなければ、科学研究としてはあまり意味をなさない。

 ある薬が有効かどうかというような議論、その薬は、量的にも質的にもきわめて明確に「定義」されている。だからこそ、臨床実験を1回実施しただけでも、有効性を検証することができるのである。これに対して「園芸療法」の場合には、作業形態(どういう植物を対象とするのか、集団か個人か、屋外か室内か、期間はどのくらいか)もマチマチであるし、「育てる」行為以外に「押し花」などの加工作業を含めて「園芸療法」としている発表者もあった。

 また、仮に、研究者個人において「園芸療法」とそうでないものの違いが明確に定義されていたからといって、それだけでは実験研究の要因操作を明確に行ったことにはゼンゼンならない。例えば「草花の苗から開花まで育てる行為を含む」ことを園芸療法の必要条件に入れ、その条件のもとで実施された「園芸療法」が有効であったとしても、育てたことが有効であったという可能性のほか、
  • 集団で共同作業をしたことに原因があった
  • 屋外で活動したことに原因があった
  • 体を動かしたことに原因があった
  • 植物が発散する「青葉アルコール」や「青葉アルデヒド」が効果をもたらした
というように、「育てた」こと以外が真の原因である場合もあるし、それらの複合が初めて効果をもたらす場合もある。

 けっきょくのところ、この種の実験的手法で検証を試みる限りにおいては、

●「何かをした」ことが有効であった

ということは検証可能であるが、

●何が効果をもたらしたのか

を確認することは原理的にも、現実的にも難しい。

 であるならば、むしろ、「園芸活動は悪いことではありません。何かよいこがあるかもしれません」という前提のもとで、高齢者や障害者が園芸活動に参加しやすい条件を整備し、かつ実践活動の中で改善を重ねていく。その「有効性」なるものは、例えば、そういう活動を導入している施設入所者の健康保持率が他所よりも有意に高いとか、それを楽しみにしている自発的参加者が多いという事実に基づいて判定されればそれでよいのでは? と思ってみたりする。

 もちろんその場合も、自己流ではいけない。松尾(2000)が述べているように療法とは

●その道の専門家が,対象者のどこをどう改善するかを理解したうえで,その目的にあったプログラムをつくり,これを検証しながらよりよい方策を探る手続きである

ということを忘れてはならない。そういう意味での園芸療法士の資格化はぜひとも必要であると思う。


次回に続く。