じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 文学部・西側出入り口付近に咲くフランスギク(白)とディモルフォセカ。フランスギクは繁殖力きわめて旺盛のため、種が出来るまえに適宜間引きしているが、それでも毎年、空き地を埋め尽くすほどに花を咲かせている。


5月18日(水)

【ちょっと思ったこと】

大安吉日で七五三の11月15日

 某・高貴なお方の結婚式が11月15日に行われることになったそうだ。まことにおめでたいことである。

 このニュースで1つだけ気になったのは、「秋のお日柄の良い日を中心に結婚式の日取りを検討され」た結果、「大安の日」の11月15日が選ばれたという、日取り決定の根拠である。これまで偶発的な事情で日取りが延期されたいきさつもあり、お日柄の良い日を重視されるお気持ちは分かるし、基本的には当事者の主体的ご判断が第一であろうと思うが、このことであらためて、日本社会における六曜の呪縛の大きさを垣間見た思いがした。

 1998年4月5日の日記や、1999年10月27日の日記で取り上げたことがあるように、六曜は、「日に吉凶がついてまわる考えほど分からぬものはない」と鈴木大拙が書いているほか、かつては吉田兼好も、また明治天皇も否定しているほどの迷信である。科学が飛躍的に進歩を遂げた今なお、種々の竣工式、開所式、個人の結婚式などのお祝い事に大安や友引が選ばれ、その一方、葬式が友引を避けて行われるなど呪縛から逃れられないでいるのはまことに不思議である。

 日本人の多くが六曜の呪縛から逃れられない一因としては、事なかれ主義と他者への配慮、つまり
  • 日取りを決める役に回った時に、何か事故が起こった時に日取りの決め方が悪かったと批判されないため
  • 自分は全く信じないが、関係者の中にそれを気にする人が一人でも居れば、できる限りその気持ちを尊重してあげよう
という配慮が働いているのではないかと思われる。

 このほか、六曜は、土日の混雑解消に貢献している可能性がありそうだ。つまり、もし、六曜を考慮しなければ、おおかたの祝い事は、人の集まりやすい土日祝日に集中してしまう。わざわざ平日に開催すれば、そのことで仕事を休まなければならない人も出てきて不平が生まれる。しかし、「この日は大安だから」「この日は友引だから」と理由づけすれば、平日開催でも文句を言う人は減るだろう。六曜というのは、旧暦の「月」と「日」を足して6で割った余りの数に対応して決まるので、多少のばらつきはあるが、土日も平日にも平等に大安吉日が割り当てられることになる。結果的に、結婚式場や宴会場の利用が土日祝日に集中することを解消する働きがあるというのが、私の考えた第三の要因である。

 余談だが、11月15日に決まったことについて、小泉首相は18日夜、記者団に対し「うれしいニュースですね。11月15日、七五三だから、みんな喜ぶでしょう。自分の子どもの成長を喜ぶように喜んでいただけると良いですね。おめでとうございます」と述べたというが、大安吉日には触れずに七五三に関連づけたのは、やはり「一国の首相は六曜には呪縛されない」という配慮が働いたためだろうか。

 ちなみに、七五三が11月15日前後に行われるようになった由来についてネットで検索したところ大野城市 大野城歳時記というサイトに
1681年(天和元年)の11月15日に将軍徳川綱吉の子、徳松の祝いを行ったことから、江戸の町に定着してきた七五三のお祝いは、この日に行われるようになったという説もあります。それ以外にも、11月は農作業が一段落し収穫のお祭りをする時期にあたり、15日は多くの祝祭日のある満月の日であったために、この日が選ばれたともいわれています。
という説明があった。いっぽうウィキペディアでは
旧暦の15日はかつては二十八宿の鬼宿日に当たり、何事をするにも吉であるとされた。また、旧暦の11月は収獲を終えてその実りを神に感謝する月であり、その月の満月の日である15日に、氏神への収穫の感謝を兼ねて子供の成長を感謝し、加護を祈るようになった。明治改暦以降は新暦の11月15日に行われるようになった。
と解説されていた。何はともあれ、めでたいめでたい。